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ポストクッキー時代における個人情報との向き合い方とは?

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宣伝会議は3月30日、インキュデータの特別協賛を得て「データマーケティングカンファレンス~ポストクッキー時代におけるデータ活用の要点~」をオンライン配信にて開催。「3rd Partyクッキー」の世界的な規制の動きが強まり、企業の喫緊の対応が求められるなか、「なぜ1st PartyDataの重要性が増しているのか?」などの問いに対し、先進的な取り組みを行っている企業の担当者が事例をもとにパネルディスカッションを行った。

顧客と真摯に向き合い個人情報を預けてもらえる企業に

インキュデータは「データとテクノロジーの力でビジネスを変革していく」という企業理念を掲げ、2019年に設立。データビジネスソリューションの開発・提供をしてきた。これまでもソフトバンク、博報堂グループ、トレジャーデータの3社が培った知見や技術力を結集して、新たな価値を創造し、企業のDXを支援している。

昨今、インキュデータに対する相談として増えているのが「3rd Partyクッキー」の利用。世界的な規制の動きが強まり、ポストクッキー時代に向けたマーケティングのあり方に関心を持つ企業が多いことから、今回のセミナー開催に至った。

第1部では「ポストクッキー時代におけるデータマーケティングの本質」と題してDINOS CORPORATIONの石川森生氏が登壇、3rd Partyクッキーの利用規制が強まるなか、同社がどのような考えで施策を行っているのか説明した。

第1部

DINOS CORPORATIONの石川森生氏。「ポストクッキー時代におけるデータマーケティングの本質」と題し、同社の施策事例をもとに解説した。

1971年に創業した同社は、今年3月に社名をDINOS CORPORATIONに変更。フジテレビのグループ会社として、総合通信販売事業、リテンションマーケティング事業、フラワーネット事業、催事・店舗事業を展開している。

石川氏は「個人情報に対する向き合い方や姿勢が新たに問われている。これまではリターゲティング広告を中心に、新規のお客さまの獲得効率を上げてきたが、この方法が使えなくなるリスクが高まってきた。しかし、これを機会に新規顧客の獲得に注力するのではなく、既存顧客との関係を維持していくリテンションを行う方が、お客さまとの関係を構築でき、安定したビジネスを展開することができるのでは」と述べる。

実際、DINOS CORPORATIONの売上の大半は既存のお客さまからもたらされているという。そこで同社は新規獲得よりも、これまで半世紀にわたり行ってきたリテンション施策がより重要だと受け止めており、今後もその方針で取り組むつもりだ。

既存顧客を対象としたリテンション施策では、より粒度の高い顧客情報を保有している方が成果も高まる。つまりは、顧客からデータを預けてもよいと思ってもらえる関係性づくりが肝になってくるのだ。

「お客さまが自分の情報を預けてもよいと選択しなければ、コミュニケーションは成り立たない。お客さまの目線に立った時に、どのような企業であれば重要な個人情報を渡してもいいと思ってもらえるか、真摯に受け止め、考えなくてはいけない。お客さまの期待に応えられるような価値を還元するにはどうしたらいいのか、という視点で見ていく必要がある」と結んだ。

データの使い道をフィードバック 企業と顧客はWin-Winな関係で

第2部では「UCC上島珈琲に聞く、1st party data取得・活用と顧客体験設計の関係」と題し、UCC上島珈琲の染谷清史氏が、同社のD2Cの取り組みである「My COFFEE STYLE」の事例をもとに、顧客情報を直接取得し活用する際に企業がおさえておくべきポイントと今後の展望について語った。

第2部

UCCでデジタルマーケティングに従事する染谷清史氏。顧客情報を直接、取得し活用する際に企業がおさえておくべきポイントを解説した。

1933年に創業したUCC上島珈琲(以下、UCC)は、直営農園で苗木を育てることから、生産国での農事調査、品質保証、原料調達、マーケティング、研究開発、製造から販売、さらには文化の創出に至るまで、一貫したコーヒー事業を展開している。

2019年3月にはECと店舗を通じて、個々の嗜好に合わせたコーヒーを提案するO2Oプラットフォームサービス「My COFFEE STYLE」を開発、提供を開始した。同サービスではスタッフがコーヒー選びをサポートする店舗「COFFEE STYLEUCC」と、同ECサイトを中心として、好みに合ったコーヒーが毎月届くサブスクリプション「My COFFEEお届け便」や、コーヒーを知るためのWebマガジンを提供している。染谷氏は「店頭に並ぶ銘柄が増加した一方、『自分が好きな味、求めている味がよくわからない』という声を聞く。自分の味覚傾向を知り、嗜好品としてのコーヒーに納得感を持って選び、コーヒーの世界をさらに楽しむきっかけにしてほしい」と開発の背景を語る。

データ活用の観点で特徴的なのは「My COFFEEマップ」。LINE「COFFEE STYLEUCC」アカウントと友達になるとすぐに利用でき、「My COFFEE お届け便」やECで購入したコーヒーを飲んで、コーヒーの感想を記録していくと、自分の嗜好性が可視化できるシステムだ。コーヒーの選び方に、ひとつの軸を提供するツールになっている。これによってお客さまは自分の嗜好性がわかるだけでなく、メーカー側にとっても顧客のデモグラフィック属性や、嗜好に関わるデータが取得できる。データの取得と活用には、お客さまへのUX向上などフィードバックに繋がることが非常に重要だ。「今後もぶれることなく『お客さまが楽しんで選べる』施策を行っていきたい」と述べた。

データの先には“人”がいる 慎重に取り扱う意識を忘れない

第3部ではまず、2020年に施行された改正個人情報保護法について、TMI総合法律事務所弁護士の大井哲也氏が説明した後、DataSignの太田祐一氏、TMI総合法律事務所弁護士の大井哲也氏、インキュデータの立花進一郎氏が「個人情報保護法とデータ活用のあり方」について、パネルディスカッションを行った。

第3部

TMI総合法律事務所弁護士の大井哲也氏、DataSignの太田祐一氏、インキュデータの立花進一郎氏が登壇。「個人情報保護法とデータ活用のあり方」について、パネルディスカッションを行った。

後半のパネルディスカッションでは、個人情報保護法の改正を受けて、「どのような環境構築や工夫をするべきか」についてパネルディスカッションが行われ、大井氏は「どういうシステム環境が構築されているのか、部門を超えて網羅的に可視化しておく」必要性を唱えた。また太田氏は「マーケティング・プロモーションの部門だけで体制を組んでしまうと、利益優先になりがち。データを活用のシステムが倫理的にどうなのか、第3者委員会に検証してもらいつつ体制を構築する必要がある」と自身の考えを述べた。

最後に立花氏は「担当者が会社のデータすべてを網羅することは難しい。従業員全体に、データの先には個人という“人”がいて、慎重に取り扱わなくてはいけないという、データに関する意識付けを目指す文化の醸成が重要」と結んだ。


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インキュデータ マーケティング担当

MAIL:dbc_marketing@incudata.co.jp