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HubSpot Japanカントリーマネージャーに廣田達樹氏が就任、新たなローカライゼーション戦略を語る

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2021年7月に、事業開始から5周年を迎えたHubSpot Japanのカントリーマネージャーに9月28日、廣田達樹氏が就任した。廣田氏はこれまでGoogle、VMware、ヒューレット・パッカードなどのテクノロジー業界で26年にわたり、営業、営業戦略、マーケティングに携わってきたキャリアを持つ。
 
HubSpot Japanは2006年に米・ボストンで創業した、SaaS企業のHubSpot, Inc.の非英語圏で初となるオフィスとして開設。6年目を迎え、より日本企業のビジネス慣習や社内オペレーションに合わせた提案をしていきたいとの考えから、今回のカントリーマネージャーの就任に至った。HubSpot, Inc.が米国外の市場において、カントリーマネージャーを置くのは日本が初めてのことだという。廣田達樹氏、シニアマーケティングディレクターの伊佐裕也氏に今後の日本市場での戦略を聞いた。

――廣田さんがHubSpot Japanに入社を決めた理由とは。

廣田:私は大学卒業後、旅行会社に入り、当時は団体旅行の営業を担当していましたが、ITの世界に興味を持ち、その後はDELL、HP、Google、VMwareとテクノロジー企業でキャリアを重ねてきました。直近では、シンガポールに拠点を置く、BPOサービスを提供する企業に所属。これまでの仕事を通じて営業、営業戦略を中心にマーケティング、そしてオペレーションの部分も経験してきました。HubSpotへの入社を決めたのは、HubSpotが提供する「統合型CRMプラットフォーム」は、マーケティング、営業、カスタマーサービス、オペレーションとあらゆる部門に関わるソリューションであり、まさに自分自身のこれまでの経験が生きると考えたからです。

――日本市場に進出して5年。上陸当時は比較的、マーケティング寄りの発信が、現在はセールス寄りの発信が多いように感じています。今後、日本市場においてどのようなメッセージを発信していこうとお考えですか。

廣田:当社が提供する統合型CRMプラットフォームは、顧客データ100万件までは無料で利用が可能な「HubSpot CRM」を核に、マーケティング、セールス、カスタマーサービス、CMSの機能を内包したものです。
上陸当時は、中でも「Marketing Hub」の導入企業が多かったことから、日本においてはマーケティング領域の発信が多かったと思います。それが昨今は、日本でもインサイドセールス部門を立ち上げる企業が増えるなど、セールス領域の注目が高まっていることから、コロナ禍で変革が必要とされているセールス部門の発信が増えてきました。
しかしマーケティング寄りかセールス寄りか、という議論ではなく、私はHubSpotを「最高の顧客体験を提供するCRMプラットフォーム」と定義しています。CRMにより一元化されたデータベースをもとにマーケティング、セールス、カスタマーサービスと顧客接点を持つすべての部門が、統合した体験を提供するために貢献するのが当社の役割だと考えています。そこで、今後も「『統合型CRMプラットフォーム』としてのHubSpot」として打ち出していきたいと考えています。
また私たち、HubSpot Japanでも一貫した顧客体験の実現を目指しています。米国本社では、ヤミニ・ランガンが最高顧客責任者(CCO)に就任し、マーケティング、営業、カスタマーサービスチームを率いていて成功を収めました。ここでの成果が評価され、2021年9月に共同創業者から経営を手渡される形で最高経営責任者(CEO)に就任しています。日本でもこれと同様の体制を実現したいと考えています。

伊佐:提供するソリューションの打ち出し方には変化はあっても、HubSpotの創業当時から変わらないのは「インバウンドマーケティング」の思想です。「相手から価値を受け取る前にまずは売り手が価値を提供する」。このインバウンドの思想は、マサチューセッツ工科大学の大学院で同期だったブライアン・ハリガンとダーメッシュ・シャアが2006年にHubSpotを設立した当時から大事にしてきた考え方です。
インターネットの登場以降、急速に変わり始めた消費者の購買行動に着眼し、売り手と買い手の間に、これまでのマーケティングの延長線ではない新しい関係性が必要とされている。そうした課題意識があって、顧客を追いかけまわすのではなく、相手から価値を受け取る前にまずは売り手が価値を提供する「インバウンド」の概念が生まれました。

価値を受け取る前に、まずは売り手が先に価値を提供する。そのことによって関係性をつくり、買い手も売り手もともに成長していく。この思想を実行するには、マーケティングだけでは難しく、営業やそれをサポートするオペレーション、さらにカスタマーサービスも含めた体制づくりが必要です。現代においてインバウンドの思想を体現したのが、統合型CRMプラットフォームです。

――コロナ禍で顧客との接点も非対面にシフトしています。この環境で、HubSpotの戦略に変化はありますか。

廣田:コロナ禍が発生して以降、あらゆる産業の企業が変革の必要性に迫られています。この環境においても、成功している企業に共通するのが「デジタル」、「顧客視点」、「信頼」です。
生活者の変化に合わせたデジタルトランスフォーメーションを実現させ、さらにその変革の基点に顧客視点がある。加えて、いま企業活動に透明性が求められる中で、「信頼」を寄せられる企業であるかも重要な要素です。HubSpotが2020年4月に米国で実施した調査では、「63%の消費者が信頼できない企業からモノは買いたくない」と回答しています。
私たちも「デジタル」「顧客視点」「信頼」の3点から企業を支援していきたいと考えています。

――上陸当時は、比較的中小規模の企業でも導入がしやすいソリューションと言われていました。現在の状況はどうでしょうか。

廣田:確かに上陸直後は、中小規模の企業での導入が多かったと聞いています。大都市圏の企業で、ITリテラシーの高いユーザーが多かった印象です。しかし、最近は地方含めてトラディショナルな製造業での導入事例も増えています。
また、スタートアップ企業だけでなく、従業員規模の大きな企業も増えています。特定インダストリーにフォーカスする戦略はとらないですが、企業規模としては従業員2000名以下程度の企業体への提案に注力していきたい考えです。

――以前、HubSpotを導入し、マーケティング経験のなかったメンバーでマーケティングを企画・実施し、最終的には専任のマーケティング部門が発足されるに至った企業のケースを聞きました。「コンサル部隊がWebサービスをローンチ 初めてマーケティングが必要になった時、経験なしの担当者はどう動いた?」

廣田:ユーザー企業の方々にはある程度、学んでいただくことも必要ですが、ソリューションのコンセプトを理解できると、ユーザビリティが高いツールなので、マーケティング未経験の方でも、導入・利用を通じてインバウンドマーケティングの思想を実行できるようになるのではないかと思います。

――現時点で計画している日本市場での新たな展開についてお聞かせください。

廣田:私たちのインバウンドの思想を日本において体現するためには、私たちが提供する「統合型CRMプラットフォーム」だけでは解決できない問題もでてきます。これまでもソリューション導入を支援いただく、販売パートナーの方々との関係はありましたが、今後は当社のソリューションと連携できる、テクノロジーパートナーも増やしていきたい。すでにSansan、freeeとの連携をしていますが、日本のビジネス環境に合ったインテグレーションパートナーを今後も増やしていく計画です。

伊佐:あと、廣田と話しているのが、米国で英語にて提供されているEラーニングコンテンツである「HubSpot Academy」を日本でも提供していこうという戦略です。無料で受講できるコンテンツなのですが、これまでは日本語に翻訳されたものが少なかった。今回、アカデミー担当も採用したので、日本の皆さんにもより活用いただきたいと考えています。
またユーザーコミュニティ支援にも注力していく考えです。コミュニティへの支援を通じて、ユーザー企業の皆さまが、それぞれの会社に合ったHubSpotの使い方に気づけるきっかけをつくれればと考えています。

――コロナ禍が起きて以降、日本のマーケターが欧米のカンファレンスなどに参加をして、最先端の潮流を体感する機会がなくなりました。この環境でHubSpot Japanとして、日本のマーケターに世界の潮流をどのように伝えていきたいと考えますか。

廣田:米国をはじめとする世界の潮流は、私たちHubSpot Japanが日本の方々にお伝えしていきたい情報です。しかし、海外で起きている変化がそのまま環境の異なる日本で同様のことが起きるとは限りません。世界の最先端の動きは紹介しつつ、それを日本に取り入れるならどうすればいいか、を考えていただくヒントも合わせて提供していきたいと考えています。

伊佐:例えば、米国では営業従事者の半数がインサイドセールスにかかわっていると言われています。一方で日本の場合、最新の調査(2020年12月HubSpot Japan調査)でもインサイドセールスの導入率は36.4%でした。この数値だけ見れば、日本は遅れているという議論になりがちです。しかし、はたしてそうした受け止め方だけでよいのでしょうか。
先日、米国本社のチームとのミーティングの中で、米国ではオンラインでの営業で買い手はビデオをオフにするケースが多いという話を聞きました。日本では、ビデオをオフにするのは相手に対する失礼、と思ってオンにしますよね。
米国は電話での営業が広がっていた中で、オンライン商談へと移行したのでビデオをオフにするのが普通。一方で日本の場合、対面での営業がオンライン商談に移行したので、オンにしないと相手に失礼になると考えるのでしょう。このように、その地域の商習慣まで踏まえないと、必ずしも世界で起きていることが日本で同様に起きるとは言えないのです。その違いも踏まえて日本の皆さんに情報を発信していきたいと考えています。

――今後の日本市場での戦略についてお聞かせください。

廣田:HubSpotでは米国とそれ以外のインターナショナル市場という区分けをしているのですが、インターナショナル市場の売上全体に占める割合は46%。その46%の中でも注力しているマーケットが日本です。今回、世界で初めてカントリーマネージャーの職が日本に置かれたことに、その姿勢が表れていると思います。
これまでは米国本社が開発したサービスを主体に、日本市場に合わせたローカライゼーションを進めてきましたが今後は、日本企業のビジネス上のオペレーションの要素を踏まえた機能開発の提案を本国にしていく計画です。より、日本企業の方々に使いやすいソリューションとなるため、本国と日本のユーザーの橋渡しとして、今回のポジションが設置されたので、より日本のビジネスの実情に合わせた提案をしていきたいと思います。
 

HubSpot Japan カントリーマネージャー 廣田達樹氏

テクノロジー企業で26年間に渡り幅広い事業規模の顧客を対象とした営業、パートナー営業、事業開発の経験を持つ。Googleでは日本、韓国、東南アジア市場のビジネス開発コンサルタントチームを統括し、6,000社以上に及ぶ企業のデジタルトランスフォーメーションを支援。また同社のアジア太平洋地域における新規顧客獲得プログラムの構築を担当し、営業オペレーションの効率化に貢献した。Google入社以前はVMware、HP、Dellなどの大手テクノロジー企業において営業、戦略、オペレーション部門のリーダーとして、eコマース、インサイドセールス、新規事業提携や新規営業組織の立ち上げに従事。2021年9月よりカントリーマネージャーとしてHubSpot日本法人の代表を務める。