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フォントの重要さ、リモートが浮き彫りに プレゼンの機会損失にも

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リモートワークが普及し、オンライン会議ツールを用いて打ち合わせをしたり、プレゼンテーションをしたりする機会も増えた。資料も出力したものを配るのではなく、事前にデータで配ったり、会議ツール上で投影したりするようにもなった。そのとき、どれくらいフォントに気を配っているだろうか? リモートワーク時代とフォントについて考えてみたい。

オンライン会議での思わぬ機会損失

リモートワークの浸透によって、打ち合わせやプレゼンテーションの資料を、オンライン会議ツールで投影したり、事前にデータで送付したり、ということが増えた。場合によってはスマートフォンやタブレット端末といった比較的小さな画面で目にすることもあるだろう。

「クライアントへの提案時ひとつとっても、プレゼンテーション資料の見せ方次第で機会損失になり得ます」と指摘するのは、アマナでアートディレクターを務める長澤豪氏だ。

アマナ アートディレクター
長澤豪氏

2002年からフリーランスのデザイン業務のほか、海の家の運営や、ロンドンバスので日本縦断、イベント開催、Webメディア運営など多彩な分野で活動。ウォーターデザインを経て、2010年からアマナグループに所属、UX開発の経験をベースに、サービスロゴ、UI設計、イベントプロモーション、企業ブランディングなど幅広く活動を展開。

 

「モニターごしの資料の表示は、必ずしもこちらの意図通りになっているとは限りません。読みづらくなってしまうのは論外ですし、企画のトーンに合っていないというのも、とてももったいないと感じます。改めてフォントの役割、どうしてこの字形に落ち着いているのか、ということを考え直す機会になっているのではないでしょうか」(長澤氏)

【資料DL】読みやすさや印象が変わる ビジネス文書のフォント選び

クライアントへの提案はもちろん、最近ではオンラインでのワークショップ開催が増えているというアマナのクリエイティブサイエンティスト山根尭氏もこう話す。

「オンラインだと、エモーショナルな部分を伝えることがなかなかできないと思います。そのときに、フォントも含め広義のビジュアルの力がとても重要になります。昨今企業で行われることが増えたワークショップでも、ビジュアルが議論を円滑にしてくれることは少なくありません。当社では、ビジネスパーソンのクリエイティビティを高めるプログラム『amana Creative Camp』を提供していますが、プレゼン資料や議論を進める際の効果的なビジュアルの使い方について学ぶ内容は需要が高いと感じています。それは、ただ写真や絵を使えばよいということではなく、言葉にしづらいものを可視化して、周りの人と認識を共にすることに役立つような用い方を学びたい、ということです。フォントもその要素のひとつだと思います」(山根氏)

アマナ クリエイティブサイエンティスト
山根尭氏

クリエイティブを用いて、企業のビジネス価値を高める取り組みに従事。写真や動画やデザインを活用し、ビジョンの発見・発信をおこなうなど、クリエイティブのエッセンスをビジネスに取り入れるための取り組みを実施している。B to B企業を中心に幅広い業種の企業を担当。

 

東京都産業労働局の月次調査によると、10月7日発表の9月度の結果では、東京都内企業のリモートワーク実施率は63.9%。8月からは1.1ポイント減少したものの、4月半ば以降から6割以上をキープしている。宣言のない期間でも5割以上。オフラインとオンラインと、それぞれ適切なタイミングで使い分けていく、ということになりそうだ。

仮にオフラインで対面することが揺り戻しで増えたとしても、同じ資料に対して「これは画面で共有されるもの」「これはプリントして配るもの」と、いちいちフォーマットを変えたり、フォントを変えたりというのでは生産性が落ちてしまう。

「画面で読みやすいフォントを用いて、どちらでも同じくビジュアルイメージを伝えたり、可読性を担保したり、ということは定着しうるのではないでしょうか。いちがいに言えることではありませんが、先ほど山根が話したように、フォントが持つ表情などから伝わるものはあると思います。エモーショナルな点をより伝わりやすくする、ということでもフォント選びは重要になってくるはずです」(長澤氏)

読みやすさと個性のバランス

では、フォントはどのように選べばよいのだろうか。長澤氏は「奇をてらわないことが基本」と話す。

「使うフォントを絞るということです。ひとつのドキュメントに用いるフォントは、使う場所もフォントも絞り込むことを徹底することから始めると、体裁が整います。どう絞り込むかというと、メッセージに合わせたフォントを選ぶということです。極端な例ですが、マジメな内容のステートメント(企業の宣言文)に『寄席文字』(寄席の題名や芸名を表す際に用いられるフォント)が使われていると混乱を招きそうですよね」(長澤氏)

資料はシンプルさが大事、と山根氏も口をそろえる。

「オフラインの打ち合わせや提案では、ある種のパフォーマンス、身振り手振りといった演出も使えます。しかし、オンラインだとそれは通用しないばかりか、逆効果に働くこともあろうかと思います。資料にも無駄な装飾を入れたり、セリフを入れたり、わかりにくい図式を用いてみたり、というのは、やはりオンラインの画面上だと見づらい。削る、引き算するというのは勇気がいることですが、実はそのほうがメッセージはよく伝わるのではないかと思います」(山根氏)

【資料DL】読みやすさや印象が変わる ビジネス文書のフォント選び

ダイナフォント「金剛黒体」

シンプルさを保ち、メッセージがよりよく伝わるように――そこで長澤氏に、ビジネスシーンに適したダイナフォント年間ライセンス「DynaSmart T」に収録されているダイナフォントのゴシック体「金剛黒体」を1週間、使ってもらった。長澤氏は「今回、『金剛黒体』を実際に使わせていただいて、繊細さを損うことなく可読性を高めている。細やかさや透明感のようなトーンのときは、非常によいのではないかと思いました」と話す。

長澤氏が着目するのは、「誰にとっても読みやすい」ことと「個性やオリジナリティの表現」のバランスだ。

「いまダイバーシティ(多様性)の推進という時代の流れがあって、フォントが持つアクセシビリティも重要になっていますよね。できるだけ多くの方にとって読みやすくする、ということはますます進むと思います。一方、そうすると個性、オリジナリティを出しづらくなるという側面もあります。ディスプレーに特化したフォントというのは視認性を高めるために、どちらかというとぼってりとした印象のものが多くありましたが、先ほどお話ししたように、繊細な印象が適しているメッセージにおいては、『金剛黒体』はよいのではないかと思います」(長澤氏)

本稿のOGP用の画像にも「金剛黒体」を用いている

「金剛黒体」をはじめ、ダイナフォントとしてフォントを開発・販売するダイナコムウェアの日下部誉朗氏によると、ダイナフォントには基本書体として「金剛黒体」以外のゴシック体や明朝体を、ユニバーサルデザイン書体なども含めて豊富に揃えているという。同じゴシック体・明朝体なのに、なぜ何パターンも必要なのか、といえば、まさに長澤氏が指摘するように、適した場面がそれぞれ異なるためだ。

フォントで襟を正す

では一方で、デザイン性が非常に高いフォントの場合はどうか。対極的な例として、ダイナフォント全書体が使える年間ライセンス「DynaSmart V」に収録されている「金花体」も1週間使用してもらった。長澤氏の使用実感はこうだ。

「金花体」はぱっと見で華やかな印象を持つフォント。結婚式の招待状や、招待客を出迎える「ウエルカムボード」に用いるなど、いわゆる慶事に使えそうなデザインとなっている。

ダイナフォント「金花体」

「月並みな表現ですが、カリグラフィデザインを生かした和文のフォントに驚きました。これをベースにロゴを考えてみたりとか、タイポグラフィを考えてみたりとか、そういったところでも使えそうという印象でした」(長澤氏)

「金剛黒体」と「金花体」を通じて、改めて見えてきたのは、可読性とデザイン性というフォントの持つ両側面だ。

「機能だけでも装飾だけでもダメで、場面に応じて選んでいくのが重要。資料におけるフォント選びや配置というのは、『襟を正す』という行為に近いのかもしれません。話を聞いてもらうときにはそれなりの礼儀があると思いますし、紙でも画面でも、めちゃくちゃになっていると、相手の聞く気、読む気をそいでしまいます。逆に適切に選べば、伝えたいことをよりいっそう伝えやすくしてくれるのが書体ではないかと思います」(長澤氏)

【資料DL】読みやすさや印象が変わる ビジネス文書のフォント選び

ダイナコムウェアの日下部誉朗氏(写真左)と松井大貴氏(同右)

 



お問い合わせ
ダイナコムウェア株式会社
〒101-0051
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