最近よく聞く「パーパス」って何ですか? Vol.4 インタビュー篇 ブルーボトルコーヒージャパン ジェネラルマネージャー 伊藤諒氏

share

パーパスドリブンな事業展開で、コーヒーを通じて発信していきたいこと

聞き手:エスエムオー代表取締役/ブランディングコンサルタント
齊藤三希子

近年、広告界を中心に注目され、ムーブメントになりつつある「パーパス」。「何のために存在するのか」という、企業経営における本質であるにもかかわらず、その本来の意味を理解しきれず、どのように活用していけばよいのか、答えを出しかねている企業が少なくありません。
“おいしいコーヒーをより多くの人に届ける”をミッションとしているブルーボトルコーヒー。洗練された空間、美味しい一杯のコーヒーで顧客体験をデザインする背景にはどのようなストーリーがあるのでしょうか。代表の伊藤諒氏に『パーパス・ブランディング』著者 である齊藤三希子さんがお話をうかがいました。 

「僕らの大事にしていること」を言語化するときが来た

齊藤:ブルーボトルさんは、パーパスフルに志高く事業展開なさっているので、インタビューのご縁をいただけて大変嬉しく思います。まず、伊藤さんがブルーボトルに入社されたきっかけを教えてください。

伊藤:社会人の最初のキャリアは商社にいて、会社の派遣でアメリカにMBA留学をさせてもらいました。当時、自分のライフワークの大きなキーワードとして「スポーツビジネス」「ダイバーシティ」があって、この2つを念頭に2年間過ごそうと思っていました。

齊藤:その2つを軸とされたのは?

伊藤:自分の生い立ちになりますが、父親の仕事の関係でエジプト、スイス、アメリカ、日本に住んだ経験から、人種や文化、考え方も違っていても友達になれるじゃん、という想いがありました。
でも、世の中を見ると紛争がある。高校のときは、生徒のほとんどが有色人種の公立学校に留学して、アジア人は自分1人で、コミュニティに入るのに苦労したんです。その時、バスケットボールを通じてその壁を取り払いました。その原体験から、チームを作って、ゴールを定めて、メンバーの間の壁を取り払いながら、新しい価値を一緒に生むことをやっていきたいと思うようになりました。

就職活動を始めるときに、そうやって多様なメンバーを繋いでいくのを一番自由にできることこそビジネスかなと思って。でもどんなビジネスがいいのかはわからないから、まずは全部やっている総合商社にいこうかなと(笑)。そこでは、金属資源のビジネスを主にやらせてもらって、スケールが大きくて非常にやりがいがありました。ただ、自分のやりたいライフワークとのマッチが難しく、もっとパッションを持てるフィールドにいきたいと思うようになりました。その中でスポーツを通じて、いろんな人を本質でつないでいくカルチャーを広げていくことを考えるようになり、MBA留学中はスポーツ関係のキャリアばかりを模索していました。

齊藤:その頃に、現地でブルーボトルコーヒーと出会ったのですか?

伊藤:ブルーボトルのとの出会いは、一本の電話でした。MBA留学中のある日、すでにブルーボトルで働いていた友だちから電話をもらったんです。「あと2週間で、日本で最初のブルーボトルをオープンするんだけど、ロゴ入りのカップが日本の税関で止まってしまって困っている。商社だったらどうするかわかる?」と聞かれて、いろいろ伝えました。カップは無事オープンに間に合って、それを機に2015年の2月頃から卒業の5月まで、面白そうだなって思ってインターンをしたのが、最初のきっかけです。

 
齊藤:その時、どんな印象を持ちましたか?

伊藤:当時は会社も小さかったし、日本に出店したばかり、アメリカもサンフランシスコとニューヨーク、ロサンゼルスに出ているくらいの規模でした。でもパッションを持ったメンバーが集まっていて、手作り感満載。オークランドの海沿いにあるレンガ造りのオフィスに出勤していました。最初は緊張してチノパンにジャケットで通勤していたのですが、後からデニムとTシャツでもいいんだということに気付いて(笑)。アメリカのスタートアップってこういう感じなんだと、当時思いましたね。

僕が引き込まれたのは、さまざまなバックグラウンドを持ったメンバーが、それぞれの強みを活かしているブルーボトルのカルチャーです。ファウンダーのジェームス・フリーマンはもともと音楽家で、コーヒーにとてもパッションがあり、ブルーボトルをはじめました。周囲のメンバーはブルーボトルのビジネスをスケールする人、デザインを考える人など、さまざまな方面にパッションをもっている人たちでした。口に出すわけではないんですけど、お互いのいいところを引き出して、新しいものを作るのに時間とエネルギーを使う。そういうカルチャーに衝撃を受けたのを覚えています。自分の軸である「ダイバーシティ」という考えが共鳴して、スポーツじゃなくてもこういう形があるんだと思いました。

齊藤:その後、しばらく商社に戻られたんですね?

伊藤:はい、商社に戻って、違う部署に移りました。新しい分野で多くの学びはあったんですが、もうインターンの時点で心は動いていて、ブルーボトルで働きたいと思っていました。けれど「社費で留学に行かせてもらったし」など色々なことが頭をめぐり、単純にビビってたというのもあって、転職には踏み切れなかった。それでも、自分の人生を選択して、自ら積み上げていく感じがアメリカの時より薄れていくことに、不安、恐怖も芽生えて、10ヶ月くらい散々悩み…。その間もブルーボトルが声をかけ続けてくれていたこともあり、帰国して1年弱で移り、今6年目です。

齊藤:それぞれのメンバーが持つパッションを引き出すカルチャーは、入社後のこの5年で、より強く感じるところはありますか?

伊藤:根底の部分としては、今でもあります。
ただ会社が大きくなるにつれ、スタッフ皆が創業者であるジェームスを知っているタイトな感じから、カフェに行って素敵だったから働きたいという人も多くなってきました。必ずしも皆が日本のDay1(始まりの空気感)を知っているわけではない中で、チームや新しい形を作っていくというのがチャレンジではありますね。全員がイキイキと働けることを目指しているけれど、まだ道半ばです。日本でブルーボトルのカルチャーや大事にしていることを発信し始めたのは結構最近で、会社として言語化したのも数年前からです。その前はなんとなく共有している空気感みたいなものがあったのですが、メンバーが増えるにつれ、「僕らの大事にしていること」を言語化するタイミングがきました。

チームが大きくなるにつれて「あの人はブルーボトルっぽいね」とか、「ぽくないね」っていうのは危険で、ともすれば排他的になるし、新しい風が入らなくなってしまうと思います。だからこそ言語化して、これは外せないというものを共有して、それ以外の部分はオープンマインドで受け入れていこうと試行錯誤しています。新型コロナの影響もあり、状況が変化する中で、アジアもアメリカとともにどんどん進化しないといけない。アメリカでやっていることを、どう日本でローカライズしていくと本質的に伝わるか。さらに連携を取ってブランドを運営することを目指しています。

齊藤:本質的な部分を押さえていれば、ローカルなところは任されているのでしょうか?

伊藤:ブルーボトルは、そのあたりがフラットです。本社から大方針が出てそれに従うという形ではなく、対話を通して、それぞれの地域で得られる学びや新しいやり方をシェアして相乗効果を生んでいかないことには、多国展開していく意味がないと考えています。ブランド・ビーコンと社内では呼んでいるんですけど、日本マーケットはブルーボトル全体の中で、ブランドの発信源という位置づけになっています。新しい体験づくりや、コラボレーションプロジェクトなどを、日本から発信することも多いですね。

齊藤:ミッションに「美味しいコーヒーをより多くの人に届ける」とありますが、それに込められた意味を教えてください。

伊藤:言語化してその言葉を作ったときに、美味しいということ、鮮度に応対すること、サステナブル、ホスピタリティー…など、ヒューマンタッチがしっかりあるようなキーワードの数々が出ました。それらを原点として持ちつつ、美味しさという体験をより多くの人に広げていく、というのが僕らの大きなチャレンジでした。
ブルーボトルの大きなテーマとして、「一つのクオリティにこだわると、スケールと両立しない」という定説にクエスチョンを投げかけることが常にあると思います。

インスタントコーヒーや缶コーヒーなどの商品開発において、例えば缶コーヒーはアルミの味がしたり、甘すぎてあまり美味しくないよね、という固定観念に対して、本当にそうなのか?と。これだけ技術も進んでいるなかで、過去にはできなかったかもしれないけど、今だったら本当に美味しいものが作れるんじゃないか?と、問いを投げかけていく。ブランドのアプローチとして、これを貫き続けることで、クオリティを薄めずにスケールできるはずだと考えています。

齊藤:ブルーボトルは、味はもちろん、空間やデザインも優れていますよね。

伊藤:素材、人、空間の3つを大事にしています。美味しい体験は素材の質や鮮度からも来るし、スタッフがすごく親切に接客してくれると体験って変わるじゃないですか。より美味しく感じてまた来ようと思う美味しい時間になるという感覚ですかね。また、1店舗ずつその土地や建物に合った優れたデザインで美味しい空間を作っていくというアプローチには、フォーマット化されたものでない一つひとつのストーリーを大切にして、より多くの人に届けるという意味も込められています。

その土地や建物に合った優れたデザインで美味しい空間を作っていくというブルーボトルコーヒーの店舗。上から、清澄白河フラッグシップカフェ、京都カフェ(撮影/Yohei Sasakura)、梅田茶屋町カフェ(撮影/見学友宙)。

齊藤:ちなみに、おいしいコーヒーの定義って何でしょう?

伊藤: フレッシュであることは必須かなと思っています。ジェームスは創業期に、コーヒー豆はフルーツの種なのになぜ鮮度が大切にされていないんだろう?コーヒーにも、旬や飲み頃みたいなのがあるはずだと考えて、そこを突き詰めていったという背景があります。それに加えて、感じる美味しさは人によって違うから、それを素材、人、空間をもって作っていこうと。

自分たちは「これがおいしいコーヒーだ」って定義することをあまりしていません。ジェームスがもともと音楽家なので、メニューでもピアノの鍵盤に例えるんですけど、どっしりした重みのある低音の深煎りものから、高音を奏でるような華やかなフルーティーの浅煎りのものまで、幅広く取り揃えて、お客様がそれぞれに美味しいと感じる音色を選んでもらえるようにしています。

その上で、カフェでは、いらっしゃるお客さまにどうおすすめした方がいいのか、どういう会話をしていこうかっていうのを、大事にしていますね。

自分の意志で選ぶという行為をもっと広げていきたい

齊藤:3つの要素の上に、バリエーションを用意することで、みなさんのお好みのものをきちんと提供できるということですね。

ミッションは創業当時から変わらずに使われているのでしょうか?

伊藤:年を重ねるにつれ何度か言葉は変わっているんですが、根底の部分は変わっていないかなと。今は、新しいメンバーが加わる中で、どう浸透させるかということは継続的に取り組んでいます。

齊藤:ブルーボトルのミッションやカルチャーに共感して入っているスタッフが多いように見えるので、浸透はしやすいのではないでしょうか?

伊藤:共感して入っている人は多いけれど全員ではないし、最近のテーマとしては、ミッションやカルチャーを自分の言葉で「伝えられる」メンバーをいかに多く作るか、ですね。ジェームスが語ったり、長くいるメンバーが語ることで伝わるのはもちろんなのですが、チームが大きくなっていく中で、たいまつの火を灯せる人が増えていかないといけないなと思います。例えば、カフェの店長全員と月一回は直接議論する場を作っているのですが、なぜこの商品を出すのか?なぜこの企画をやっているのか?そもそもなぜここに出店するのか?ということを直接伝えて、少しでも疑問があれば聞いてもらい、腹落ちしてもらう。これを通じて要となるメンバーが自分の言葉で、自分のチームに伝えられる状態になっていきたいと思っています。

齊藤:なぜやるのか、みたいなことですね。「なぜ」は重要なポイントだったりしますか?

伊藤:ちゃんと「なぜ」なのかを言えることは常に一番大切にしている指針です。これ出したら絶対売れるなということよりも、僕たちがなぜこれをやるんだろう、何を発信したいんだっけ、それってちゃんと美味しい体験に繋がっているのかな、というところを大事にしています。

それから、ブランドのパーパスにも繋がると思うんですけど、「なぜ」だったり、ストーリーだったり、アクションにつながる背景を一つひとつ伝えられる状態を担保することを意識しています。仮に、ビジネス上やらなきゃならないことも、それも含めてオープンに言ったほうがいいなと。ここは、しんどいかもしれないけどこういう未来を創るために踏ん張りどころだ、とかも含めて伝えないと、自分がチームメンバーなら、ついていけないと思います。ブランドとして語りやすいことはすごく語ってくるけれど、そうじゃないところはフワっと終わるようなコミュニケーションだと、どこかに疑念が生まれてしまう。そうすると、全力でコミットし続けることがどうしても難しく感じてしまうので、そういうことがないように、なるべく透明性を持つことは大事にしています。

齊藤:透明性は重要ですね。事業をやっているといいことも悪いこともあって、そこできちんと事実を世の中に伝えていく企業って強いなと思います。

さきほど「素材、人、空間」という3つの要素がありましたが、ブランドを維持する上でこだわっているポイントはありますか?

伊藤:個人的な解釈ではあるんですけど、人のアクションが変わるときって、心が動いたときだなと。「理由はないけど好き」っていう気持ちには勝てないなと思っていて。僕はバスケが大好きなんですが、スポーツの試合に行くとき、いくらかかるかなとかそういう感覚はあまりなくて、好きだから行く。そういうポイントは人それぞれにあるなと。

じゃあ僕らが提供する体験で少しでも心を動かしてもらえたとしたら、さらに僕らのことを理解してくれて、コミュニティを広げていくことができたなら、ビジネスがそこに自然と成り立って、長期的に意味ある形での成長に繋がっていくと思っています。

そのため、常に心を揺り動かすような、エモーショナルな体験を作ろうというところからスタートしたいと思います。その順番を間違えると、今ならこれがお得ですよという価格ゲームに入ってしまって、やりたい本質が伝わらないし、心は動かない。

そうならないためには、まず心底「やりたい」と思えることは何なのかを考えて、次にビジネスでどうやったら実現できる?ここを工夫したらいいんじゃない?とそういう順番で考えるというのはすごく大事にしています。

齊藤:なかなかそれはわかっていてもできないし、わかっていないところも多い。ブルーボトルの強さですね。

伊藤:ビジネスではなくてクリエイティブ視点から全てをスタートしていますね。これは、僕自身、ロジカルよりな人間として生きてきて(笑)、ブルーボトルに入ってすごく変わった部分だと自分でも思います。クリエイティブとかデザインとかすごく魅力的だなと感じるようになって、じゃあ今度は僕が得意な領域をどう工夫できるかな?と思うようになりました。
ブルーボトルではさまざまな分野の職人さんや、技術、知見を持っている方々とコラボさせていただいて、それらをどう世の中に出せるかな?どうやったらもっと手に取りやすい形でいろんな人に魅力的に響くだろう?ということを考えるようになりました。

齊藤:そのあたりは創業メンバーのバックグラウンドから来る影響が大きいのでしょうか?

伊藤:2010年くらいから多店舗展開したんですけど、そのときパートナーとして入ったブライアン、彼の影響も大きかったんじゃないかなと思います。2009年頃、創業者のジェームスに「ビジネスパートナーとして組もう」という話が多くあったそうです。そのたびにスタッフルームを通って行く奥の部屋で話をするのですが、そこに着くまでの間に食器を洗ったり掃除をしてくれているスタッフに、その人がどういう対応をするかをジェームスは見ていたそうです。多くはスタッフを無視して部屋に入って「僕のビジネスプランは…」という感じだったのですが、ブライアンだけは一人ひとりに挨拶して自己紹介をして話をしたのを見ていて、この人なら、と思ったらしいです。ビジネスの成長は大事だけど、そこの根底には人がいるし、血の通った関係を築きつづけることにブルーボトルの原点があると思います。コーヒーショップってその町の人との繋がりでできるものだし、日本もそういうところは大切にし続けていきたいなと思いますね。

齊藤:そうですよね。当たり前ではありますが、やはり人ありきですよね。我々も今とてもその話で感動したんですけど、伊藤さんが最近感動されたことはありますか?

伊藤:最近、登山にはまりまして。
この間、渋谷のパタゴニアで「Worn Wear」という古着を扱うPOPUPに行った時には感動しましたね。ずっとパタゴニアを愛しているユーザーの方のインタビュー、一つひとつのレイアウトや展示に意図を感じて。生産者が自社製品の古着を扱うってあまりないじゃないですか。回収して作り直すというサイクル、着続けるということ、それが究極に地球にとって良いということを発信していました。かつ、どんなに気に入っても最終的に2点しか買えないようになっていて、それって結構すごいことだなと。「売らない」という選択は勇気がいることだなと。でも逆に、僕としてはブランドへのアタッチメントがすごく強くなったし、全部パタゴニアにしちゃおうかなみたいな(笑)。それくらいインパクトのある体験でしたね。

齊藤:パタゴニアはパーパスドリブン企業としても有名ですが、この古着のポップアップはSMO周りでも話題です。

伊藤:ブルーボトルでも、そこまでトータリティのある店舗体験が提供できてコーヒーはここで飲むしかない、と思ってもらえたらビジネスとしても強いし、僕らが大事にしている考え方が世の中に広がっていく、B2Cをやっているところはそういう力がすばらしくあると思うんです。改めて自分たちで発信することのインパクトの大きさと大切さを感じました。

齊藤:ミッションの言葉は、チームで日本語に訳されたんでしょうか?

伊藤:チーム何人かで、アメリカで策定したものを「日本語にしたらどうなるだろう?」、ここが一番難しいけど肝だよねと話しながら作っていきました。本質、意図と行間の意味合いをどうブレンドさせるかが大事なので、日本語ならどうするべきなのかというのを、ブランド統括担当とか、僕や、広報も入りながら、意見を出し合って最終的なところに落とし込みましたね。

海外ブランドのローカライズは、例えば韓国、香港、日本、それぞれのコンテクストに合わせると結構変わってしまいます。それをストレートにアメリカのワードがこれだから!とどんとやると、まったく響かなかったりします。そこもどう訳していくかは、チームを作っていく上ですごく大事にしていきたいと思っています。

齊藤:私たちも海外企業のパーパス文言のローカライズの仕事があったりしますが、思うより難しい作業ですよね。

 
伊藤:ジェームスは詩人でもあるので、彼の英語を訳すのが難しい。引用とかもあって、それをどういう風にストーリーとして伝えられるかっていうところはすごく考えさせられます。それがブランドのミッションとか、チームに大事なものとして響くかというのがあるので、終わらない課題ですね(笑)。

齊藤:私たちSMOは、本物のブランドを未来に残す、をパーパスにしているのですが、ブルーボトルが未来に残していきたい「本物」はどんな形でしょうか?

伊藤:何かに対して好奇心があることはすごく大事だなと思っています。「美味しい」を実現しようと思ったら、好奇心があれば、従来のやり方も新しいやり方も探求できる。新しいメンバーが入ってきた時に、排他的にならずに聞いてみたり、取り入れたり。変わらないものはキープしたうえで、変わり続けるのは大切だなと。

あとは、一つひとつに対して意図があるということ。なぜこの素材を扱っているのか、なぜここに出店したのか、なぜここにこの色を使ったのか?という一つひとつの選択に意図がさりげなく感じられるというのは大事だなと思っています。僕自身、ここにきて5年半くらいで、選ぶという行為に対する考えが変わりました。なんでこの服を着ているのかとか、選択することってすごく大切だなと。選択すること、そこからインスピレーションを得ること、究極的に言うと、僕らが体験を通じて発信したいことはそこなのかなと。自分の意志で選ぶという行為自体をもっと広めていければなと思います。その行為や考え方をライフスタイルの中に入れておく、というのが、僕らがコーヒーを通じて発信したいことのひとつかなと思っています。

齊藤:最後に、伊藤さんが若い頃思い描いていた、「繋ぐ」ということはできていらっしゃいますか?

伊藤:終わりがないというのは最近改めて思っていて、一個一個の積み重ねですが、韓国の立ち上げを進めて少しずつ繋がっていっているなと思います。中国への展開も検討している中で、本当の意味でグローバル展開していくブランドとして、僕らは何を一番優先させてやっていくのか、という戦略に繋げないといけない。

日本やアジアで展開していることは、改めてもっと発信していかないといけないし、もっとコミュニケーションを取らないといけない。もっとアメリカのビジネスを理解して、各エリアでの挑戦や学びを繋いで、チームとして成長していかないといけないなと思います。やることたくさんで、大変だけど、やりたいことのど真ん中にいるなと感じています。

齊藤:それは何よりです。ますますのご活躍を期待しています。

ブルーボトルコーヒーでは、日本市場に合わせたローカル施策として、コーヒーに合う和菓子も協力企業のコラボレーションを通して開発している。コーヒーに合う優しい甘さを楽しむことができる「ブルーボトルコーヒー カステラ」は、「文明堂」とコラボレート。

 

伊藤諒(いとう・りょう)
Blue Bottle Coffee Japan合同会社
ジェネラルマネージャー

1982年東京都生まれ。大手総合商社に入社後、資源分野での物流/投資業務、経理業務を経験し、米国カリフォルニア大学バークレー校へMBA取得のため留学。留学期間中に米国ブルーボトルコーヒーにて日本事業立ち上げサポートのインターンとして勤務後、2016年5月にブルーボトルコーヒージャパンに入社。事業本部長として製造/物流/店舗開発等を担当した後、2018年から韓国/香港の市場開拓及び事業立ち上げも兼任。2020年8月より現職。

 

『パーパス・ブランディング』
齊藤三希子 (著) 
ISBN: 978-4883355204

Follow Us