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ROTH BART BARONが書き下ろした新曲をつくばみらい市市民が合唱、市民の気持ちに働きかけるシティプロモーションの取り組み

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茨城県つくばみらい市は、3月31日にシティプロモーション施策の映像「MIRAIを歌う」合唱篇を特設サイトとYouTubeで公開した。

映像の舞台は、つくばみらい市の住宅地。「I LIVE IN TSUKUBAMIRAI.」と書いたプラカードを持った家族の姿から始まる。カメラが横にスライドしていくと、さまざまな人たちが登場する。家族、小さな子どもを抱く母親、犬を連れた人、カップルなど、それぞれが歌いながら思い思いのポーズを取る。そして彼らが歌っているのは、ロックバンド ROTH BART BARON(ロット・バルト・バロン)の『MIRAI』だ。

この曲は、同バンドの三船 雅也氏がつくばみらい市のシティプロモーションのために書き下ろしたもの。今回、ROTH BART BARONのメンバーと共に地元の伊奈高等学校吹奏楽部が演奏し、200人と8匹の市民がこの曲を歌ったのだ。

キャプション MIRAIを歌う」合唱篇

つくばみらい市は、移住・定住促進のため「100年間、愛される地元をつくる」という目標を掲げ、「I LIVE IN TSUKUBAMIRAI.」というスローガンの元、2017年にシティプロモーションを開始した。このプロモーションのクリエイティブディレクターを務めているのが、DRAWING AND MANUAL菱川勢一氏だ。

「つくばみらい市は、小学校から高校卒業までの多感な青年期を過ごした、自分にとって第二の故郷。私の現在の仕事や美術大学で教鞭をとっていることなどを評価いただき、3年前に市役所から依頼を受けて、大手広告会社から引き継ぐ形でシティプロモーションを担当することになりました」

菱川勢一氏

それ以前のプロモーションにおける反省点を活かし、菱川氏は新しい取り組みの軸に「市民が体感できる自分たちの街の良さの実感」を置いた。そうして生まれたキャッチフレーズが「I LIVE IN TSUKUBAMIRAI.」だ。

同時に提案したのが、市民が登場する「100人の市民によるポスター」である。シティプロモーションの一環であるが、これは対外向けではなく、市役所、ひいてはつくばみらい市が、市民とあらためて向きあうべく進めた企画だ。

市民が登場したポスター「I LIVE IN TSUKUBAMIRAI.」

「市民の皆さんに『わたしはつくばみらいに住んでいます』と掲げていただくことによって、街のプロモーションは市役所だけの仕事ではない。市民みんなで街の未来を考えていくのが大切なことだと、政策を通して理解を広げていこうと考えました」(菱川氏)

そのためポスターは市外ではなく、主に市内各所への掲示を提案。1年かけて、市役所、駅、コンビニ店頭、定食屋など、市内のさまざまな場所に掲示された。

またポスターの映像版という形で、2022年にはインタビュー映像も制作。つくばみらい市への移住者や工場や研究所を設置している上場企業の担当者に、この地域に対する想いを語ってもらった。

つくばみらい市 移住定住プロモーション映像「だから私は、ここで暮らす」

コロナ禍の2020年5月には、『未来新聞』と題したタブロイドマガジンを創刊。子育てやおすすめの本や映画、市内企業探訪などのコラムで構成した『未来新聞』は、市の広報誌とともに季刊で各家に届けている。

季刊で発行する「未来新聞」

また、同年6月には「これからどんな街をつくっていこうか」と市民にかけ声をかけるような気持ちで市がメッセージする「モチベーションムービー」も制作している。

“I LIVE IN TSUKUBAMIRAI.” つくばみらい市 モチベーションムービー

そして満を持して進めたのが、今回の「市民がみんなで歌を歌う」という企画である。

準備をする中で、菱川氏が思いを馳せたのが、1989年に旧ソ連の統治下にあったバルト三国で起こった「人間の鎖」だ。およそ600Kmにわたり、エストニア、ラトビア、リトアニアの200万人の人々が手を結び、連帯と独立への意志を歌い続けた。菱川氏は、この出来事を、今回の企画に重ねながら想いを込めて進めたという。

「住む場所というのは、その人の人生そのものです。そこの営みが“夢”や“将来の可能性”や“幸せ”をつくります。同時におとなりや同郷というひとのつながりもお金で手に入れることができない財産です。その大切な人たちと、ひとつの思い出をつくりながら、ひとつの歌を歌うことのなんと素晴らしいことか」(菱川氏)

そして、どのアーティストに歌を依頼するかを検討した際に、迷うことなくROTH BART BARONを推薦した。

「三船くんの数々の作品から感じる人間への眼差しや優しさは今回の企画に必要な未来への気持ちを正直に表現していただけると期待し、見事に答えていただきました。また、それだけではなく音楽の制作にはROTHの音楽にはなくてはならないミュージシャンを従え、市内の高校生の吹奏楽部と一緒につくるといった粋な計らいも進めてくれて、思った通りの心の通ったミュージシャン達だと作っている最中から感動していました」(菱川氏)

それに応えるように、市役所の担当者たちが撮影場所になる住宅地の家々一軒一軒に企画を説明し、事故なく楽しく撮影ができるよう入念な準備を整えた。

ROTH BART BARON 三船雅也氏

「みんなで歌う姿を映像として残して、子どもたちが将来見返してくれたら。今はわからなくても歌詞に込められた言葉が心に響いたら。私たち企画制作する側を含めて純粋に“未来“の誰かに向けてつくった映像です」(菱川氏)

「街の音楽を作る、これは僕の人生で初めてのことでした。しかしふと考えてみると、いつも僕は現実に生きる人々から、暮らしから何かを受け取り、まだ見たことのない想像のこれから生きるであろう架空の街の音楽をいつも作り続けていました」と、ROTH BART BARON 三船雅也氏。

つくばみらい市からの依頼について、三船氏は次のように話す。

「つくばみらい市のオファーをいただいたとき、僕はどのような音楽がこの街で鳴っていればいいんだろうか考えていました、そして僕たちを取り巻くこの”暮らし”って何なんだろうかってぐるぐる考えました。何かこの街で流れる音楽には、学校で教えられる音楽とは全然違う、もっと自由で体全身いっぱいに使って、震えるような、血がどくどく波打つような力強い歌が欲しいと思いました。

街に足りないのは歌なんだと思います。
遠い過去から民族は大移動を続けて暮らしを作り、あるものは定住し、またあるものは渡鳥のように流れてゆく。僕が生きる今ではどこを歩いても大体の場所に人間は存在し、暮らしが存在します、何気なく踏み込んだどこかの街が誰かの故郷であり、帰る場所です。

どこに暮らしていたっていいんです。そこで、ここで生きることを選んだ人たちの歌、それを僕はもっとたくさん歌っていたいし、聞いていたいのです。

この歌をつくばみらい市の皆さんと一緒に作れたことを本当にうれしく思います。みんなのエナジーが、喜びが、音がたくさん封じ込められた唯一無二の歌です。いつかこの音楽を目一杯大きな音で街のみんなと演奏できるミライを想像しながら」

2017年からのつくばみらい市のシティプロモーション活動の反響や成果をたずねると、「市民の皆さんから次号のタブロイドを心待ちにする声が寄せられたり、インタビュー映像を快く引き受けてくれたり、今回の映像のメイキング映像で楽しそうだったり、ということで数字ではない方法で制作サイドと市役所で成果を共有しています」という。

 
YouTubeで公開されている「MIRAIを歌う」合唱篇のメイキング映像にも、シティプロモーション活動の成果と言える声があふれている。

つくばみらい市 シティプロモーション「MIRAIを歌う」 / Behind The Scenesより

「プロモーションというものをマーケティングなどの側面から分析すれば今回の映像も、キャッチコピーも、ポスターも幼稚なもので広告のセオリーから外れた手法なのかもしれません。しかし、私たちが立てた目標は数字に表しにくい“市民の気持ち”への活動です。成果というのはどのように測ればよいかという課題を抱えながら、もう少しこのキャンペーンは続けていけたらとCDという立場で考えています」と、菱川氏は話している。

つくばみらい市のこれまでの活動は、特設サイトで見ることができる。


MUSIC TEAM

Producer / Writer / Vocals / Guitar / Electronics
三船雅也 (ROTH BART BARON)
Piano / Mellotron / Chorus
西池達也 (BEAR BASE)
Guitar
岡田拓郎
Bass
マーティ ホロベック
Drums / Percussions / Chorus
工藤明
Trumpet / Brass Arrangement / Chorus
竹内悠馬
Trombone
大田垣正信, 須賀裕之
Flute / Clarinet
山口宗真
Horn
庄司知世
Brass Band
茨城県立伊奈高等学校 吹奏楽部
Recording & Mix Engineer
前田洋佑 (FREEDOM STUDIO INFINITY)
Conductor
中谷公祐 (DRAWING AND MANUAL)
Productionr
BEAR BASE

 

MOVIE TEAM

企画制作
DRAWING AND MANUAL+glow’s inc
CD
菱川勢一
Director / Editor
石井壮太郎
Producer / Planner
中谷公祐
Director of Photography
岩田拓磨
1st Assistant Camera
山内俊介
2nd Assistant Camera
須藤翔
Key Grip / Gimbal Operator
中村雄太
Key Grip Assistant
北原智貴
Making Camera / Edito
多田海, 松原 晃平
Line Producer
早川賢司
Production Manager
塩谷美澪, 宮地薫
Production Assistant
下田祐三, 村大樹, 長澤杏菜、河村和也, 村山あかり
Sound Recording & Mix
野原啓太
Sound Assistant
小椋健太
Vehicle
石川雅敏
Public Address
今井柊希
Aerial Ladder Truck Operato
飛沢電工
Security
日本建設警備