・創業108年の老舗出版社を「卒業」、10年目のスタートアップに「ジョイン」した
・50代半ばで出版社からベンチャーに転職した「ガソリンおじさん」の提供価値
・メディアから企業広報に転じて3カ月「取材される側」となり思うこと
・「編集者のスキルは事業会社で活きるのか?」という、問いへの答え
・スタートアップに飛び込んだ私は、60歳までに「100万人に1人」になれるか
「カンパニー」の語源が持つ宗教性
新入社員を迎える季節になると、うんちく好きの上司が披露しがちなクリシェ(もはや目新しさが失われた常套句)がある。
companyというのはラテン語の「companio」に由来していて、comは「共に」、 panは「panis(パン)」を意味する、というもの。つまり「共にパンを食べる仲間」が語源である。ということで、「日本語にも『同じ釜の飯を食う』という言い方があるように、会社って要するに家族みたいなもんだ。……さて、早速、昼飯でも食いに行くか」と、一般的なうんちく上司であれば、こんな話をするだろう。
しかし、世のうんちくおじさんの中でも割と厄介な部類に入るであろう私の場合、これでは終わらない。4月、TBMの新卒社員向け研修では、こう付け加えた。
じゃ、この「パン」って何だかわかりますか? 西洋のキリスト教社会では、パンといえば礼拝やミサの聖餐(パンとぶどう酒)であって、「共にパンを食べる仲間」というのは同じ信仰を持つ同志を指します。つまり、たまたま居合わせて一緒に飯を食って仲良くなった程度の関係ではない。進みたい未来や理念を同じくし、そこに忠誠を誓い合う仲を意味するわけです。だから、企業理念が曖昧な企業は社員を繋ぎ止められないし、社員にとっても企業理念に共感できない会社に勤めることは不幸なことなんですね――。
もっともらしく語っているが、語源辞典などで確かな裏をとったわけではない。ただ、私は西洋人でこそないが、まるで敬虔ではないにせよ一応クリスチャンなので、「パン」と聞けば、そう連想するのは事実だ。一方、2月に入社したばかりの新参者が、4月入社の新卒社員に何を偉そうに先輩面してるんだというツッコミもありそうだが、それは許してほしい。