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「わかり合うことを諦めない」 劇作家・根本宗子の対話への思い

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劇団、月刊「根本宗子」を主宰する劇作家・演出家の根本宗子氏。4月に初の長編小説を出版し、新たな表現の新境地を開拓した根本氏が思う、人と人とのコミュニケーションのあり方について、広告に対する考えも交えながら聞いた。

※本記事は月刊『宣伝会議』2022年7月号より抜粋したものです。
 

根本宗子氏

劇作家・演出家。月刊「根本宗子」主宰。1989年東京都生まれ。2016年『夏果て幸せの果て』で初めて岸田國士戯曲賞の最終候補に選出。2022年3月、『20歳の花』が第25回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門で新人賞受賞。2022年4月に初の著書となる小説『今、出来る、精一杯。』(小学館)を刊行。2023年1月には、脚本と演出を手掛ける高畑充希さん主演の舞台『宝飾時計』を上演予定。

 

約10年の時を経て小説に 12人の男女の群像劇

中学生時代から演劇の魅力に引き込まれ、高校卒業後に専門学校で学んだのち、19歳で劇団、月刊「根本宗子」を旗揚げした、劇作家で演出家の根本宗子氏。
月刊「根本宗子」の全作品の脚本・演出を務め、2017年には「皆、シンデレラがやりたい。」で第17回バッカーズ演劇奨励賞を受賞するなど、次世代演劇界を担う劇作家として注目されている。

そんな根本氏は2022年4月に初の長編小説『今、出来る、精一杯。』(小学館)を刊行。本作は、2013年の初演後、再演を重ねた人気作である同タイトルの戯曲の脚本を、新たに小説用に書き下ろしたもの。戯曲「今、出来る、精一杯。」は、2019年にはシンガーソングライターの清竜人氏を主演兼音楽監督に迎え新国立劇場で音楽劇としても上演されている。

今回、小説化に至った経緯について根本氏は、「新国立劇場での公演を出版社の編集担当の方が観て、この舞台を小説化しませんかと提案いただきました。何度も公演してきた作品だったこともあり、何か別の形で残せないかなと考えていた時期だったので、これは良いタイミングだと思い、書籍化することを決めました」と話す。

本作品の舞台は、東京都三鷹市。スーパー「ママズキッチン」のバックヤードで繰り広げられる男女12人の物語だ。12人という人数は、群像劇を得意とする根本氏の作品の中でも最多だという。

「脚本を書く際、『キャラクターの書き分けが難しいのでは?』という質問を受けることもありますが、作品にはいつも出演してほしい役者の方が存在するので、その方の個性や演じている姿などを想像すると、自然と人物像やストーリーが湧いてきます。なので、登場人物は何人いても、キャラクターが被るところはないですね」と根本氏。
喜怒哀楽、様々な感情をさらけ出した言葉の応酬、それにより傷つけ合う人々。本作品で根本氏は「対話を諦めない」ことを伝えたかったと話す。

「コミュニケーションにおいて、他者を理解するために必要なのは“相手の話を聞くこと”、そして“自分のことも話す”こと。この2つがかみ合うことが大切なのだと思います。いつの時代であったとしても、他者と完全に“わかり合う”ことは難しいです。しかし、昨今のコロナ禍で文字ベースでのコミュニケーションが増加したことで、発した側の意図や感情に合わない受け取られ方をしてしまうといったコミュニケーションロスが、対面時以上に多くなっているように感じていました。直接会話をする時のような温度感が文字には乗らないんだなと。でも、そんな時こそ“わかり合う”ことを諦めたくないと強く思います。人と人とはどうしようもなく“わかり合えない”。それでも、他者とわかり合うことを諦めてほしくなくて。その思いが作品を通じて読者に伝わったらいいなと思っています」。

上演中、同じシーンを見て、「ある人は笑ったがある人は泣いていた」という体験を自身が手掛けた演劇作品でしたことがある根本氏。人と人との“わかり合えなさ”を描く根本氏にとって、演劇が演劇を超えた人間模様を生み出した印象的な出来事であったという。

演劇にも広告にも必要な「知りたい」を刺激する仕掛け

演劇と広告の関係性についてたずねると、基本的には真逆ではないかと答えた根本氏。
特にテレビCMと比較した場合、尺の長さがまったく異なることで制作のプロセスや表現手法にも大きく違いがあるという。

この続きは月刊『宣伝会議』2022年7月号に掲載しています
 

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