飛行機と広告は、コンビの発明物です。広告づくりは、アートディレクターとコピーライターの共同作業。この2人さえいれば、どんなに大きな世界的キャンペーンでも実現できます。
カップルでもパートナーでもなくコンビと呼ぶのは、前々から漫才コンビのような組み合わせだ、と秘かに思っていたからです。漫才には、ボケとツッコミの役割分担があります。アートディレクターがつくるビジュアルとコピーライターが書くコピーが、それぞれこの役割を演じています。
一般的にはビジュアルがボケ役で、コピーがツッコミ役。絶妙な絡みだと、気持ちがいい。広告の前でクスッと笑ったり感心したり、一瞬でファンになってしまうこともあります。ところが、ボケが張り切りすぎたり、逆にツッコミのキレが悪かったりすると、とても残念な気持ちになります。
あの日の【彼】は、おそらく残念な演目を見た直後だったかもしれません。クリエイティブフロアに入ってくるなり、口火を切りました。
「コピーが頑張り過ぎだよ、コピーが」
「どうしたんですか?」
「今さ、駅前のポスター見たら、コピーがドーンと大きく入っているんだよ。どうなの?」
「…と言われましても」
「大体さ、コピーライターが言いたいことを全部言ってしまおうとか、何とか一行にまとめようとして頑張るから、アートディレクターもやりようがないよね。結局、コピーを大きくしてしまう。もうコピーそのものがビジュアル化して、偉そうに大手を振って歩いてるんだ。コピーとビジュアルの持ちつ持たれつの関係なんか、最初から無かったような顔して。忙しい世の中に合わせてコミュニケーションもスピード優先と言う人がいるけど、僕は反対だね。鼻っから分かり切った広告なんてつまらないよ。せっかく目を止めても、表札みたいなポスターばかりだと味気ないよね」
「まあ、そうかもしれませんね」
「そりゃ、そうだよ。」
「でも、表札じゃないのを見たことあるんですか?」
内田しんじ(DENTSU ONE CHINA(広州)/ ECD)
内田しんじ(DENTSU ONE CHINA(広州)/ ECD)
うちだ・しんじ/大学在学中よりコピーライター@プロダクション(1984-89)からスタートし、DY&R(1989-’99)→TBWA/JAPAN(1999-’04)ECDを経て電通へ。現在、DENTSU ONE@広州(2020-)。外資系と電通でほぼ半々(約15年ずつ)のキャリア。3つの代理店で3つのクルマ(VOLVO→NISSAN→Honda)を担当。ウイスキーやコニャックを担当するも下戸。1988年度TCC新人賞(講談社)、1994年カンヌシルバー(スーパーニッカ)、2000年朝日広告大賞(アップルコンピュータG3)、2003年カンヌファイナル(フリスク)、2004年アドフェストブロンズ(NISSANカウゾー)、2011年ギャラクシー賞(AC公共広告機構)、2013年ACC+ADCグランプリ(Honda負けるもんか)、2018年中国国際広告賞ゴールド(Acura China)など受賞多数。2013年全広連広告大学・夏期セミナー講師。
内田しんじ(DENTSU ONE CHINA(広州)/ ECD)
うちだ・しんじ/大学在学中よりコピーライター@プロダクション(1984-89)からスタートし、DY&R(1989-’99)→TBWA/JAPAN(1999-’04)ECDを経て電通へ。現在、DENTSU ONE@広州(2020-)。外資系と電通でほぼ半々(約15年ずつ)のキャリア。3つの代理店で3つのクルマ(VOLVO→NISSAN→Honda)を担当。ウイスキーやコニャックを担当するも下戸。1988年度TCC新人賞(講談社)、1994年カンヌシルバー(スーパーニッカ)、2000年朝日広告大賞(アップルコンピュータG3)、2003年カンヌファイナル(フリスク)、2004年アドフェストブロンズ(NISSANカウゾー)、2011年ギャラクシー賞(AC公共広告機構)、2013年ACC+ADCグランプリ(Honda負けるもんか)、2018年中国国際広告賞ゴールド(Acura China)など受賞多数。2013年全広連広告大学・夏期セミナー講師。
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