メディアも企業広報も「フェアであること」を忘れてはいけない

取材もせず、新興勢力という「出る杭」を打つ報道姿勢

メディアは不偏不党・公平公正であるべきだといっても、あらゆる論点において書き手の価値判断は働く。その中で、既得権益側や抵抗勢力側の論理に乗っかるメディアがあるのは理解できる。既得権益側が巧みに誘導し「書かせる」こともあるだろうし、メディア側が率先して既得権者擁護と取れる主張をすることもあるのが現実だ。

ただし、私は30年以上のメディア経験において、そういう報道姿勢には与しないという思いでやってきたと

前回

書いた。そして、メディアからTBMの広報に立場が変わり、TBMやLIMEX(TBMが開発・製造・販売する石灰石を主原料とする新素材)の過去報道を見たとき、ごく一部ではあるが、「裏」を感じる記事が見受けられるという話をした。

というのも、LIMEXはプラスチックや紙を代替する素材だ。既存市場のプレイヤーからすると、邪魔な新参者である。新しいことをやろうとするとそれに反対する勢力が必ず存在し、中にはメディアを使って批判的な論陣を張るというケースもある。

外部からの中立的な視点、忖度なしの率直な意見は、自分たちを客観視するために役立つことも多い。しかし、残念ながら支離滅裂な論旨に基づく批判もある。新興勢力という「出る杭」を打つことのみを目的としたような報道姿勢には疑問を感じる。

例えば、LIMEXの主原料である石灰石は、日本国内はもちろん世界中に豊富に存在するとはいえ、限りある資源であることに変わりはない。なので、LIMEXは水資源と森林資源の保全に貢献するとうたいながら、別の資源の無駄遣いに加担しているのではないかという指摘がある。

石灰石を主原料とする新素材「LIMEX」。紙とプラスチックの代替としてすでに8000を超える企業で採用中

「地球上の石灰岩がすべて熱分解したと仮定すると、気温が300度上昇するといわれる」という、およそ現実的でないデータでLIMEXを批判する記事もあった。「もちろん石灰石ペーパー類だけでそのような状況になることは考えられないが……」という留保付きであったが、そんな極論を持ち出せば、どんな素材も存在意義を失ってしまう。

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深澤 献(TBM ブランド&コミュニケーションセンター長)
深澤 献(TBM ブランド&コミュニケーションセンター長)

ふかさわ・けん/広島県出身。株式会社TBMのブランド&コミュニケーションセンター長。1989年ダイヤモンド社入社。『週刊ダイヤモンド』でソフトウェア、流通・小売り、通信・IT業界などの担当記者を経て、2002年10月より副編集長。16年4月よりダイヤモンド・オンライン(DOL)編集長。17年4月よりDOL編集長との兼任で週刊ダイヤモンド編集長。19年4月よりサブスクリプション事業や論説委員などを経て、22年2月に新素材スタートアップのTBMに転じる。著書に『そごう 壊れた百貨店』『沸騰する中国』(いずれもダイヤモンド社刊・共著)など。趣味はマラソン。

深澤 献(TBM ブランド&コミュニケーションセンター長)

ふかさわ・けん/広島県出身。株式会社TBMのブランド&コミュニケーションセンター長。1989年ダイヤモンド社入社。『週刊ダイヤモンド』でソフトウェア、流通・小売り、通信・IT業界などの担当記者を経て、2002年10月より副編集長。16年4月よりダイヤモンド・オンライン(DOL)編集長。17年4月よりDOL編集長との兼任で週刊ダイヤモンド編集長。19年4月よりサブスクリプション事業や論説委員などを経て、22年2月に新素材スタートアップのTBMに転じる。著書に『そごう 壊れた百貨店』『沸騰する中国』(いずれもダイヤモンド社刊・共著)など。趣味はマラソン。

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