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UV美容液が販売計画比2.5倍の大ヒット KANEBO がインフルエンサー施策で成果

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Instagramで一点突破

KANEBOが2022年3月に発売したUV美容液「ヴェイル オブ デイ」が好調だ。日中の肌に継続補水することで乾燥を防ぎながら、SPF50・PA⁺⁺⁺で強力な紫外線からも肌を守るウォーターサプライUV美容液。5月までの販売実績は計画比で2.5倍の大ヒットを収めた。新規客の割合も45%と高く、新たなユーザーを呼び込む商品にもなっている。

(写真左)「カネボウ ヴェイル オブ デイ」商品企画担当の林茉鈴氏。(写真右)電通デジタル アドバンストクリエイティブセンター ブランデッドダイレクト第2事業部の中川美沙氏

決め手は写真・動画共有 SNS「Instagram」におけるインフルエンサー施策だった。担当したのは電通デジタル。目的は、「ヴェイル オブ デイ」についての発話・口コミ量を増やすこと。いわゆるシェアオブボイスの増大だ。プラットフォームはInstagramに絞った。商品企画を担当するKANEBOブランドの林茉鈴氏は、「担当者としてもInstagram1本で進めるほうがよいだろうと判断しました」と話す。結果としてはそれが成功要因となった。

KANEBOが2022年3月に発売したUV美容液「ヴェイル オブ デイ」

「 Instagram上でこれだけの規模感のインフルエンサー施策を実施するのは初めてでしたから、勇気が全く必要なかったかというと、そうではありませんでした。ただ、(Instagram内で)『 KANEBO 』と検索しても投稿自体がまだまだ少ないですし、他社と比べても圧倒的に遅れていました。化粧品と相性のよいInstagramに注力すること自体は、絶対に必要だと考えていました」(林氏)

インフルエンサーが投稿した画像。左がレビュー系、右がライフスタイル系

 

施策の提案と実行を担った電通デジタル アドバンストクリエイティブセンター ブランデッドダイレクト第2事業部の中川美沙氏はこう話す。

「ひとくちにインフルエンサー施策と言っても、ブランドのフェーズや目的によって、 活用するプラットフォーム (YouTubeやTikTok、Twitterなど)や、協力してもらうインフルエンサーのタイプなど、適した手法はさまざまです。本施策ではフェーズと目的を踏まえると、林さんからもあったように、化粧品ブランドとしては、Instagramで検索されたときに、情報が蓄積されていることが重要です。仮に同じ予算だったとして、広く薄くすべてのプラットフォームで実施するか、あるいは一点突破するか。『ヴェイル オブ デイ』では後者を選ぶべきだと考えました。その分、発売時の話題の〈山〉をいかに高くするかの量、そして、一つひとつの投稿に込められた熱量、質を高めよう、と」(中川氏)

 
判断材料の要のひとつになったのは、中川氏が事前に分析した他社事例だった。過去に、 UVケア商品で発売前後にどんな施策を実施したか、Instagramではどんな投稿があったか、PRで投下されたもの、ユーザーが自発的に投稿したもの等々から、予算規模なども逆算した。

「UVケア商品は技術などの進化もあって、ずっと同じ商品を使い続けるというよりは、毎シーズン新しい商品をチェックし、乗り換える方が多い傾向にあります。それだけに、事前の評判が重要なのです。であれば、Instagramにおいては、他ブランドよりも多い話題量を担保しておきたい。ほかのプラットフォームはそれを踏まえて二の矢、三の矢と続ければよいと考えたんです」(林氏)

戦略と情熱とバランス

「なぜ売れたのか?」に答えるとするなら、インフルエンサーを含む「実際に商品を使った人が、「自分の言葉で『本当にいい』と言っている、そうした良質な口コミを生じさせることができたから」と、中川氏は話す。では、どのようにして、そうした口コミを誘発することができたのか。そこには、戦略と根気強さとバランス感覚の3つの要素があった。

話題に乗せていくシナリオとして、ターゲットは大きく2つのグループに設定した。ひとつは、「毎年、積極的に新しいUVケア商品をチェックしている人」。もうひとつは、「義務感からUVケア商品を使用しており、実は今使用しているものには満足していない人」。

こうした人々に「ヴェイル オブ デイ」を知ってもらうべく、インフルエンサー施策も2段階に分けた。第1段階は「レビュー系・美容エキスパート」。第2段階は「ライフスタイル系」だ。「レビュー系」は専門知識が豊富で、紹介されることで投稿を見た人にとっても信頼が高まり、商品理解も進む。レビュー系が取り上げている信頼感から、自分が使ってみて投稿してもよい、という機運も生まれやすい。「ライフスタイル系」は美容に限らない半面、より広いフォロワーを持つ。「ヴェイル オブ デイ」を取り上げてもらえれば、商品認知が拡大する。

「これを指針に、具体的にどなたに依頼するかは、当社で活用するインフルエンサーのデータベースで細かく効果数値や、投稿傾向などを確認し、候補を絞りこんでいきました。ただ、『投稿お願いします』というだけで、各インフルエンサーのフォロワーに届く投稿になるわけではありません。ブランドの渾身の商品として世に送り出すので、その技術やブランドの思いに、より興味を持って理解していただくべく、選定後に少人数での説明会を10回、林さんに実施していただきました」(中川氏)

インフルエンサーを選ぶにあたって、一人ひとりの投稿にも目を通したほか、 KANEBOブランドとの親和性、相性のよさなども確認していった。リストアップしたのは200人。そこから60〜70人という規模に選定を重ねていった。

少人数での説明会実施は「スケジュール管理など含め大変だったこともありますが、それ以上に得るものがありました。やってよかったと思います」と林氏は話す。

「勉強会の録画を観ていただく、資料だけお渡しする、という手もあるかもしれませんが、オンラインとはいえ、お互いに顔の見える状態でコミュニケーションを取れたのがよかったです。開発背景や技術情報、ブランドの思いなど、そこでしか知り得ない情報を直接お伝えすることができたのもよかったかなと思います。ブランド側としても、インフルエンサーの皆さんの捉え方、視点を知ることができて、今後の施策にも応用できそうな発見が多くありました」(林氏)

 
ブランド側からの一方的な伝達にならないよう、質疑応答にも時間を割いた。また、商品の性質上、法律上の制約もある。そうした中、「ヴェイル オブ デイ」の訴求ポイントである「継続補水」による肌への効果を朝・昼・夕とそれぞれ分けて訴求することで、自分ゴト化しやすい切り口で整理することができたことも、その後の投稿の成否を左右したポイントだった。

「ブランドとして伝えていきたいこと、そして薬事上、訴求できないポイントはきちんとご理解いただく必要がある一方、ブランド側で投稿内容を100%決めてしまうと、『言わされている感』が出てしまい、説得性に欠けてしまいます。インフルエンサーご自身の言葉で語っていただくことを大切にしていました。また商品のよさだけでなく、KANEBOブランドとしての思いとともに、未来への提示(紫外線ケアをどこか義務に感じていたものから、それが日中スキンケアするという新しい価値を生み、感触と品質が感動を呼んだこと)も含めて伝え続けたことで、その熱量がどんどん拡がり、結果的にインフルエンサーの方にも『この商品から得られる感動を伝えたい』、という強い思いにつながったのではないかと思います」(林氏)

「インフルエンサーをすごく尊重していて、信じているという印象がありました。これは、かなり大きい要素だったと思います」と話すのは中川氏だ。

「今回の施策については企業発信のメッセージ、インフルエンサーの声、そして、それらに触発された生活者の方の声、これらのバランスがうまく取れました。企業発信が強ければいかにもPR、という印象がまとわりつきますし、完全にお任せだと狙った成果を本当に収められるかが不透明になります。インフルエンサーの投稿を見て、広告を見て、周りのほかのユーザーの声を見て、というのが、『皆が本当にいいと言っている』状況。そうした良質な口コミを生み出せたのではないかと思います」(中川氏)

成果は、店舗で接客する美容部員からのヒアリングにも現れた。

「『SNSを見て気になったので』と店頭に足を運んでくださる方も多くいらっしゃったとのこと。施策が効いていると思いました。カウンセリングにつながれば、波及的に KANEBOのほかの商品を知っていただく機会にもなりますから、店頭からも『(インフルエンサー施策を今後も)積極的にやってほしい』と言っていただけています」(林氏)

次につなげるインフルエンサー施策

「プレステージブランドなので、世界観やイメージが崩れてしまわないか、という点は非常に悩みどころだった」(林氏)としながら、KANEBOブランドとして商品にかける思い、またそこから得られる体験と感動を伝え続けることで、その思いが連鎖し、発信されたインフルエンサーの熱のこもった投稿。さらにその熱はそのほかのプラットフォームにも拡がっていった。

これを水平展開しようと、すでに次の施策が着々と進行中だ。そこでも、「ヴェイル オブ デイ」で起用したインフルエンサーの一部は、継続して依頼している。

「ご一緒させていただくインフルエンサーの皆さんについては、プロモーション依頼で投稿していただいたものだけではなく、その後、どんな投稿をされているかまで継続して確認しているんです」と中川氏は明かす。

「どれくらいエンゲージメントやリーチが叶ったかなどの広告効果などの定量面はもちろんですが、施策後にアンケートを実施したり、その後の投稿内容を確認したりして、施策を通じてインフルエンサーの皆さんが、ブランドに対してどれくらい好意や親近感を持っていただけたのか、という定性的な面も重視しています。お客さまだと捉えて、どれくらいロイヤルティが高まったか、というのにとても近いですね」(中川氏)

「一度実施して、これだけ売れたからそれで終わり、ということではないと思うんです」と林氏も言葉をつなぐ。

「今後もコミュニケーションを取っていきながら、インフルエンサーさんとの関係は繋いでいきたいと考えています。今回の施策でオーガニック投稿が圧倒的に増えた感覚があり、いい形で成果を収められました。それと共に、やはりブランドのことをもっと好きになってもらえるようにする、それが重要だと思います」(林氏)
 



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