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データ活用という名のマラソン 10年先を見通した基盤と自走できる体制構築が必須

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近年、デジタル広告の分野でパラダイムシフトが起きている。改正個人情報保護法の施行などに端を発し、アドテクノロジーに対して透明性や説明責任を求める風潮が強くなってきた。こうした中、同意を得て自社で収集した、いわゆるファーストパーティデータをどう分析し、いかにして活用するか、という課題を抱える企業も増えてきている。

データ分析・活用において、先行する企業は着々と成果を出しつつある。グーグルとボストン・コンサルティング・グループの共同調査では、デジタルマーケティングの成熟度によって、業績に有意な差が出ているという。米国とカナダの20のブランドと7つの代理店を対象に調べたものだ。

グーグル・クラウド・ジャパン パートナーエンジニア データアナリティクススペシャリスト 梅川真人氏

グーグル・クラウド・ジャパンのパートナーエンジニア データアナリティクス スペシャリスト、梅川真人氏はこう話す。

「成熟度が高い企業は低い企業と比べて平均18%収益が高く、コスト抑制効果も平均29%高いという結果になりました。重要な点は、調査に参加した企業の半数以上が、デジタルマーケティングの可能性を最大限引き出すためには2年以上かかる、と答えていたことです。デジタルマーケティングはスプリントではなくて、マラソンだ、という意識を強く感じます」(梅川氏)

実際、成熟度の高い企業の収益の伸長率は、2019年から21年で2ポイント増、コスト抑制効果は16ポイント増、と伸びている。

「長期的に自分たちがどのような施策を打ち、マーケティングアナリティクスを成功させるかという戦略をしっかりと立てる必要があります」(梅川氏)

国内企業でも、マーケティングにおけるデータ活用は進みはじめている。梅川氏が紹介したのはLIXILの施策だ。

LIXILでは、広告効果の向上や店舗誘導の効率アップのため、顧客一人ひとりに合わせたコンテンツに誘導したいという課題を抱えていた。Webサイト閲覧などオンライン行動と、ショールームへの訪問との同期を取るというのは非常に困難なことだ。

LIXILでは、Google Cloudを活用したプライベートDMP(データマネジメントプラットフォーム)を構築。結果、顧客の属性ごとに広告配信をし、コンバージョン率など集客効果を高めている。データベースは従量課金制で初期投資を最低限に抑え、どれくらいの成果が得られるかを検証しつつ、実施を続けている。ほかにも基幹システムや業務用アプリケーションに Google Cloud のAppSheetを活用しているという。すでにアプリ数は1万6000を超え、社内の4000人がアプリを作成し、業務のDXを進めている。

しかし、多くの企業では、こうした活用はすぐには困難かもしれない。ファーストパーティデータ一つとっても、先に梅川氏が紹介した調査では、90%の組織が、ファーストパーティデータを重要視していながら、チャネルを横断して積極的に収集し、統合できている企業は30%にとどまった。

「別のデータによると、データ活用課題として企業の75%が挙げるのは、スキルやデータ不足、そして人材不足といいます」と話すのは、電算システム クラウドエンジニアリング事業部 事業部長の相村崇氏だ。同社は55年の歴史を持つシステムインテグレーター(SIer)で、グループ全体の売上高は500億円に上る。特に、日本国内でのグーグルとの協業は16年に及び、同社のサービスを3000社以上に提供しているという。

電算システム クラウドエンジニアリング事業部 事業部長 相村崇氏

「データの利活用を目指す上で、実際には非常に多くのデータを持っていることは少なくありません。ただ、顧客情報や売上データなどは個々のシステムの中に組み込まれていることがほとんどで、分散しています。キャンペーンなど、目的に応じて自在に活用したいと考えても、実務上では使えない状況にあるのではないでしょうか」(電算システムの相村氏)

そうした企業がデータ活用の自走(内製化)を果たせるよう支援するのも、電算システムの事業のひとつだ。たとえば大手総合商社では、DX推進部門がデータ分析・活用を最大限できるようにするための現場社員のトレーニングを実施。ソーシャルメディアにおける顧客の動向分析や、製品開発に生かすためのプログラムの提供なども担っている。

10年後も使える不朽の基盤を

電算システムがデータ活用基盤の自走支援をした企業のひとつに、花王がある。もともと同社には、データ分析などを担うコンシューマーリレーション開発部データサイエンス室があったが、2020年に同室から独立する格好で、ブランド横断でのマーケティングデータ収集と蓄積、管理のほか、関連する開発や運用、活用の支援強化のため「データマネジメント室」が立ち上がった。

花王 DX戦略推進センター カスタマーサクセス部 カスタマーアナリティクス室マネジャー 白石光弘氏

当時のコンシューマーリレーション開発部室長で、現在は花王のDX戦略推進センター カスタマーサクセス部カスタマーアナリティクス室マネジャーを務める白石光弘氏はこう語る。

「データマネジメント室の立ち上げ後、あるブランドのマーケティングデータをまとめるダッシュボードを構築するプロジェクトを始めました。ECサイトの販売データや動画サイトの広告データを収集、分析する基盤の構築で、期間は数カ月。当時、社内にシステム構築のプロはおらず、私たちの力だけでなく外の知見が必要、ということで外部パートナーと共に取り組むことになりました」(白石氏)

データの収集や前処理などの工程は電算システムのエンジニアが担当。納品だけではなく、その方法も花王の社員に伝え、自走のためのスキル向上に貢献した。白石氏は「入社時は未経験だった社員も、クラウドエンジニアとして成長しました。ただの外注ではなく、自社内で構築しながら教育支援までしていただいたことで、効率的に技術を身につけられたと思います」と話す。

白石氏がシステム基盤を立ち上げる際に重視したのが、「最低10年使える不朽性を持たせること」だった。これには2つの側面がある。

ひとつは実務上、プラットフォーム都合での仕様変更で右往左往したり、活用が制限されてしまうことのないようにするためだ。特定のサービスに過度に依存してしまうと、将来的に他社への移行が困難になってしまう。いわゆる「ベンダーロックイン」という状況に陥ることを開発時点で回避する必要があった。

もうひとつは人材育成の観点だ。技術や構築した基盤をどう継承していくか。関わる社員自身の技術力を引き上げていくことはもちろん、そこで培った知識体系を後進が享受できるような環境を整えることも重要だ。

「サービスは優れたものが次々に登場する状況です。まずは一過性の、一つの技術に踊らされないという堅牢な思想を持っておくべきだと思います。その上で、優れたものを、最善のタイミングで導入できるようにすることが大事だと思います」(白石氏)

現在、稼働しているシステムでは、21年末時で81ブランドに関連する145億レコードのデータが蓄積されている。これらを結合させながら、顧客分析やキャンペーンなどに活用しているのだ。ダッシュボードは社内で300人ほどが閲覧する。個々の習熟度に応じて、自身で分析したいという要望があれば権限を付与することもある。今後は、機械学習にも用いたり、自然言語解析でSNSでの発言のトレンドや意図などを探れるようにする考えもある。

「データは融合することで、より価値が高まる」と白石氏は話す。

「いかに多様なデータを組み合わせて、どこにお客さまの本音があるかを探る。人についての理解をより深めるツールとしてデータがあると考えています。データに基づくビジネスというのは、つまり、お客さまや社会のことを深く理解し、花王としてお客さまのお役立ちにさらに貢献するということを実現していくことではないでしょうか」(白石氏)

※本稿は、電算システム主催「なぜ今内製化をするべきなのか マーケティングにおけるデータ活用 花王の試みを探る」の内容を再構成したものです。
 



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