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コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

片山右京流・極限状態でも「今日この瞬間、頑張る力」を出し切る方法【後編】

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【前回コラム】本業は登山家だった!片山右京さんの「ゾーン」の入り方【前編】

今週のゲストは、先週に引き続き、元F1ドライバーで日本のプロサイクルロードレースリーグ「ジャパンサイクルリーグ」チェアマンの片山右京さん。今回は、ご自身がライフワークにされている「チャレンジスクール」の試みと、サイクルリーグが目指す壮大な未来について語ってくれます!

今回の登場人物紹介

左から、片山右京、中村洋基、権八成裕(すぐおわパーソナリティ)、澤本嘉光(すぐおわパーソナリティ)

※本記事は2022年9月18日放送分の内容をダイジェスト収録したものです。
 

高峰にたどり着いたら、ティンカーベルがいた!?

澤本:右京さんは、山を登っている時も、僕らが見たことのない景色を見られていて。

中村:それはまた、「ゾーン」に入られる感じですか?

片山:ゾーンとはまた違うんですけど。高峰では「高所順応」といって、酸素の薄い上部のキャンプに行ってから、また降りるということをするんですね。そうすることで体を酸素不足に慣れさせるんです。でも、1カ月半から2カ月もの間、マイナス30度から40度という場所にいるわけで。やっと頂上にたどり着いた時、そこに光が射していたんですね。自分の頭の回りには、ティンカーベルみたいなものが回っていて。それが、「ここを歩きなさい」とか「ここから先は、雪氷だから崩れるよ」とか、光が射して教えてくれるんですよ。

権八:え……。どういうことなんだろう?!(笑)

一同:(笑)。

中村:極限状態の中、ちょっとゾーンとは違うかもしれないけど、「脳がギアチェンジしている」みたいなことなんですかね。

片山:人間て、結局は弱いんですよ。自然の中にいて本当にがんばれた時、自分の小ささがわかると価値観のすべてが変わってしまう。その時に、余計なものが抜け落ちていくというか……。そうすると、子どもの頃から変わっていない部分が表に出てくるんですよ。そういう時に、涙が出てくるというかね。で、また頑張ろうという気になれるわけです。「もっと上を目指そう」とか、「もっと努力しよう」とか。

子どもたちの自立する力を引き出す「チャレンジスクール」

片山:僕、F1を引退してから、いろんな理由で親御さんと一緒に住めない子たちと野外活動をする「チャレンジスクール」というのをやっているんですね。そこで、「みんな、もったいないなぁ」と感じることがあって。それは、16歳前後の彼らの心の琴線に触れた結果、「レーサーになりたい」とか「サッカー選手になりたい」とか言い始めるんだけど、大抵の人が諦めてしまうんですよ。

その理由が、実にくだらなくて……。「コネがないから」とか、「お金がないから」とか。子どもなのに「もう年だから」とか言い始める。でも、そんなこと全然関係ないんですよ。うちも裕福じゃなかったですからね。だから、彼らに言うんです。「最初から自転車に乗れる子、いる?」って。みんな練習したし、誰かが後ろで持ってくれたよね、と。でも、大人になるとみんなカッコつけて、努力するのがカッコ悪いと思ってしまう。

ただ、そこを見せないから応援してくれる人もいなかったり、言葉にして発しないから、周りに伝わらなかったりする。だから、子どもたちには「全力で努力をして、それでもダメなら諦めればいい」と伝えています。

でも、負けたら悔しいし、もっと頑張ろうと思うよね。泣いたりして、心が動いた分だけ強くなれるし、それを向上心というんだよ、と。人間というのは、一生勉強しなきゃいけないから。だから、知らないことを一生学び続けるって楽しいよって教えたり、もっと大人が失敗するところを見せたほうがいいかな、と。そう思ってやっているんですけどね。

中村:いいですね!チャレンジスクール。

権八:それは、どういう場所でどんなことをやるんですか?具体的には。

片山:基本的には、キャンプに出かけて山に登ったり、自転車に乗ったり、チャレンジするんですよ。安全面はちゃんと確保しながらも、あえて助けない。ふつうの林間学校だったら、食事も用意してくれるし寝床もあるんだけど、そこでは全部自分で考えて行動するんです。

お腹が減って低血糖になると、寒くなるし思考能力が落ちてきますよね。そういう時は「自分と話をしなさい」と言うんです。今の自分をどうマネジメントするかを考えさせて、今度はそれをベースにほんの少しだけ背伸びさせるんですね。そして、競争もさせる。頑張った時には素直に「よくやった!」と褒める。「今は誰も助けていなかったぞ。自分でよく頑張った!」という場面をつくってあげるんですね。そうすると自信につながっていくんです。

例えば、大学に落ちた、彼女に振られた、馬鹿にされた。そういうことって絶対に忘れないでしょう?でも、そこからが分かれ道なんだよ、と。ある程度の年齢になったら、自分で向き合わなきゃいけない。自立には、経済的な自立と精神的自立のふたつがあるけど、たった数万円で自殺しちゃう人もいるわけだから、「ファイナンシャル・インテリジェンス」だって学ばなきゃいけない。

一方で、メンタルの部分でも、一番大事なことは絶対に死んじゃいけないんだっていうことですよね。自殺なんてもっての外だよ、と。最後の瞬間まで、何があろうとも絶対に諦めちゃいけない。みんなで力を合わせて頑張るんだ、とかね。

そういうことを言うと、今の時代、バカみたいに聞こえるし、クサイとかアツいとか言われるけど、ぼくはそういう面倒くさい人間なので……(笑)。だから、子どもたちには「もったいないから頑張れ!」って言う。絶対に見ててくれる人がいるから、まっすぐ頑張れって。それが本当であることを体感してもらえるようにね。

中村:え~、行かせたい!わが子をチャレンジスクールに。

片山:「サーキット・トライアル」っていう富士スピードウェイの20分の1みたいなのをみんなで走ってね、タイムを競ったりして、いろんなゲームをやるんですよ。そんな経験でもしないと、みんな自分のパワーを引っ張り出せないまま年を取ってしまうんでね。人生には、「今日、この瞬間に頑張らなきゃいけない」っていう日が必ず来る。だからこそ、そういう訓練はしておいたほうがいいですね。

権八:凄い……。

中村:まずは、僕らが行かなきゃいけないんじゃないかっていう……(笑)。

片山:一緒に自転車漕ごうよ、とか、トレッキングに行こうよ、とか。やっぱり、ガイドが楽しくないと山登りも面白くないですからね。基本は楽しく、ムリをする必要はない。そして、ほんのちょっと背伸びをした時に褒めてあげるんです。

次ページ 「自転車を「文化」として根付かせたい」へ続く