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誰かをちょっと幸せにするコピー ―田中直基×石本香緒理

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現在、作品募集中の第60回「宣伝会議賞」の審査員を務めるDentsu Lab Tokyoのコピーライター田中直基氏と、AO CHANのコピーライター石本香緒理氏。お2人が「好きな広告とその理由」について語り合いました。トーク内容から、応募作品を制作するヒントをつかんでください!

※本記事は、2022年9月22日~25日に開催した「宣伝会議賞」60回記念したイベント「そのことばのある前と後~広告の中のことばたち~」で実施したトークイベントの一部を抜粋したものです。アーカイブ配信はこちら。
※第60回「宣伝会議賞」の応募受付は2022年11月1日までです。

Dentsu Lab Tokyo
クリエイティブディレクター/コピーライター
田中直基氏

言葉、映像、デザイン、テクノロジーなど、課題に適した手段でニュートラルに企画することを得意としている。主な仕事に、TOKYO2020パラリンピック開会式“PARAde of ATHLETES”、AI監視社会から逃れるカモフラージュ「UNLABELED」、「マツコロイド」、Eテレ「デザインあ」、サントリー「話そう。」、「人生には、飲食店がいる。」、YouTube「好きなことで、生きていく。」など。TCC賞グランプリをはじめ、受賞多数。

 

AO CHAN
コピーライター/クリエイティブディレクター
石本香緒理氏

セーラー広告、電通名鉄コミュニケーションズ、博報堂などを経て、2022年にAO CHAN設立。広告クリエイティブから、地域・企業ブランディング、商品開発など。TCC新人賞・審査委員長賞、ACCシルバー、グッドデザイン賞、CCN賞、FCC賞、OCC新人賞、One Show melit、Cannes Lions Shortlistなど受賞。

 

見る人すべてを応援するものを

石本:田中さんと私は、TCC新人賞を同じ年にもらっているんですよね。田中さんと同じって言うのもおこがましいんですけど……(笑)

田中:いえいえいえ(笑)。石本さんが立ち上げた会社の名前が「AO CHAN」なんですけど、うちの息子の名前も「あおちゃん」で(笑)

石本:実はうちの犬の名前も「あおちゃん」で(笑)。そんなわけで、共通点がいっぱいある2人でお送りします!

田中:それでは早速、「好きなコピー 影響を受けたコピー」というテーマで話していきましょう。まずは石本さんからお願いします。

石本:はい。私が好きなコピーは、

「今日を愛する。」(ライオン)

です。なぜ選んだのかというと、私がすさんでしまいそうな時に励ましてくれたり、一番近くにいてくれたコピーだからです。コピーライターになって少し経った頃、自分への焦りから、人と自分の環境を比べて羨んだり、劣等感を感じたりしていて。そんな自分にモヤモヤしている時、このコピーを会社のデスクに貼っていたら、気持ちが浄化されていったんです。当たり前のことだけど、一日一日をちゃんと刻んでいくことが大切なんだな、と。

田中:僕がYouTubeで「好きなことで、生きていく」というコピーを書いた時も、そのサービスや企業を応援するのはもちろんだけど、実は見ているすべての人を応援できたらいいな、と思っていましたね。このライオンさんのコピーも、まさにそういうことですよね。

石本:そうですね。たとえライオンさんのロゴがなくなったとしても、コピーの言葉自体を信じられるわけです。そういうところにもこのコピーの魅力はあるな、と思わされますね。

ストライクゾーンは「言われてみれば、そうだよな。」

田中:僕が選んだのは、

「ロケットだって、文房具から生まれた。」(トンボ鉛筆)

ですね。壮大でロマンチックな話が好きで。鉛筆と消しゴムという身近な文房具に共感を覚えつつも、新たな発見がある。「なるほど、言われてみたらそのとおり!」という内容ですよね。
僕はクリエイティブ職になった頃につけていた「気になったコピーノート」が6冊ぐらいあるんですが、僭越ながら先輩方の偉大なコピーに評点をつけていたんですよ。

石本:へえ〜!それはいいですね。

田中:当時の先輩に「まずは自分の中で“いいコピー”を定義することが必要だ」と言われまして。僕のいいコピーの定義は、「共感」と「!(ビックリマーク)」の2つでした。この「!」にはいろんなテクニック論が当てはまるんですが、一番良いのが「発見」なんですね。

そこから、さらに突き詰めていくと、コピーというのは大体3つに分けられるんですよ。
一番端っこにあるのが「ぶっ飛びすぎたコピー」。これは本人にしかわからないレベルのものですね。それと対極をなすのが「当たり前のことを書いたコピー」。コピーを書いていると、実は、この2つのどちらかにめちゃくちゃ陥りがちなんですね……。この2つの間に「言われてみれば、そうである」というゾーンがあるわけなんですが、これが僕にとってのストライクゾーンです。このトンボ鉛筆のコピーは、まさにストライクゾーンそのもの、といった感じですね。

石本:素敵ですよね。小さな文房具から、あんなに大きくて壮大なものが生まれるという対比のドラマチックさが。そこに至る道のりや、ジャンプ力みたいなものにもドラマを感じますね。

ひとつのコピーが「カルチャー」へと飛躍した

田中:それでは次に、僕たちが考えるビジネスや社会に影響を与えたコピーを発表したいと思います。石本さん、お願いします。

石本:これはもう「言わずもがな」なんですが、

「THE FIRST TAKE」

ですね。この言葉だけでコンテンツのフレームが生まれて、ひとつのビジネススタイルにまでなっている。さらには、あっという間に「当たり前のカルチャー」ぐらいに育っていきましたよね。その速度と波及力が本当に凄いな、と思いました。

昔と比べると、広告もテクノロジーの進歩のおかげで手法が増えました。そんな中、改めて「言葉の役割ってなんだろう?」と考えてみたんですが、それはやはり、言葉を真ん中に置いた「未来予想図」を描くことなんだろうな、と。この「THE FIRST
TAKE」は、そういったことを軽々とやってのけているところが凄いな、と思いましたね。

田中:わかります。これ、最初に見た時は「やられたな〜」と思いましたよね!
続いて、僕が選んだのは、

「死ぬときぐらい
好きにさせてよ」(宝島社)

です。これは会社の同期だった太田祐美子さんが書いたコピーなんですが、僕はそもそも、樹木希林さんがすごく好きなんです。このコピーは彼女の言葉でありつつも、メディアやSNS、ワイドショーやニュースなどの過剰さに対して、すごくうまく言及している。ここには、希林さんからすべての人に向けた「生き方のアドバイス」があるような気がします。

石本:ちょっと前から「終活」という概念が浸透しつつある中で、このコピーは異彩を放っていますよね。「好きにさせてよ」の前に、「死ぬ時ぐらい」がつくのが、やっぱり凄いと思います。

田中:これ本当は、死ぬ時だけじゃなくて「すべての時間において」好きにさせてよ、ということだと思うんですね。こういう言いづらいことを堂々と言える企業の存在は、今や貴重ですよね。一社でも声を上げ続けることで、他の企業にも勇気を与えてくれると思います。

コピーがプロジェクトの中心をつくる

田中:それでは最後に、お題としていただいていた「私にとって、コピーとは」を出したいと思います。石本さんのものから見ていきましょう。

石本:私のはちょっと長くて(笑)。コピーとは「商品やサービス(が人と出会う)より先に、誰かをちょっと幸せにするもの。」です。
当たり前のようでいて忘れがちなことなんですが、コピーにはそうした「使命」があることを改めて自覚すべきだな、と。目の前の人や、自分の知っている人、そして、自分自身をもコピーを通じてちょっとだけ幸せにできたらいいなと思います。

田中:僕にとってのコピーとは、「真ん中。」ですね。平たく言えば、自分の仕事が世の中や未来をちょっとでも良くできたらいいなと思っていて、クライアントさんに対しても、そんなふうに宣言してから仕事を始めるようにしています。
プロジェクトの中で、コピーというのは、中心、つまり“真ん中”をつくるものだと思っていて。真ん中がないプロジェクトはブレブレになって空中分解してしまうことさえある。それぐらい重要なものだと思っているので、仕事をする際も真ん中をつくる言葉を常に意識しています。

―イベントの様子は、こちらからご覧ください。

第60回「宣伝会議賞」応募のご案内

「宣伝会議賞」は、宣伝会議賞は、月刊「宣伝会議」が主催する広告表現のアイデアをキャッチフレーズまたは絵コンテ・字コンテという形で応募いただく公募広告賞です。
一般部門・中高生部門で作品を募集しています。

【応募期間】
2022年9月1日(木)10:00~2022年11月1日(火)13:00

第60回宣伝会議賞公式サイト:https://senden.co
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