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楽天の強みはKYC オンとオフ双方の購買実績に基づき実施・検証

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楽天IDを主軸に70以上の多様なサービスで構成される「楽天エコシステム(経済圏)」を活用したマーケティングは、今後、どんな道をたどっていくのか。楽天グループの紺野俊介・執行役員が、その考えを明かした。

 
――コロナ禍を乗り越え、社会や経済活動の正常化を急ごうという動きが進んでいます。まず、この2年間は、「楽天エコシステム」にとってどんな時期になりましたか。

紺野俊介氏 「楽天エコシステム」は、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけとして、非常に大きな規模に成長しました。特にインターネット・ショッピングモール「楽天市場」をはじめとしたECと、キャッシュレス決済です。いずれも、日本は世界から遅れていると言われる分野ですが、非接触・非対面が求められる中、結果的に普及が進んだと思います。

より広い視点から見れば、消費者行動が変化したということです。それに応じて、タッチポイントが変わった。その結果生じたのが、データにおける変化です。蓄積するデータの多様さも、その規模も従来から非常に大きくなりました。それをそのまま、楽天グループが提供するマーケティングソリューションを集約した「Rakuten Marketing Platform」(RMP)の強みとして変換できていると考えています。

 
――具体的には「RMP」において、どのような強みになっていますか。

紺野氏 購買において言えば、オンラインだけではなく、オフラインを含む双方の購買実績を蓄積できていることです。そして、いわゆるKYC(Know Your Customer)という観点において、ユーザーが実在するという確認(身元確認)と、本人が操作しているという当人認証ができている点が、非常に重要です。あらゆる消費者行動を網羅するサービス展開によって蓄積される多角的なデータを、KYC済みのIDによって分析できることは、楽天グループのユニークネスと言ってよいと思います。

また、楽天グループにおけるデータの利活用で大きな特徴なのは、「楽天ポイント」です。個人情報というのは基本的に、その個人が主体となって管理するものです。企業が活用する場合、どういった条件、指針でどこまでを利用するのかを個々で許諾していくことが求められています。近年、顕著となった例として、Webサイトを閲覧していると、「WebブラウザーにCookieを保存し、そこで得たデータを使います」といった通知が出るようになりました。「何かよくないことが起きるのではないか」という恐れから、そこから先に進まないケースも少なくないかと思います。「OK」を押すにしても、詳しく内容を確認していないことのほうが多いのではないでしょうか。

楽天の場合、きちんとしたデータ利用指針を敷いているのはもちろんですが、それに加えて、データを利活用させていただく一種の対価としてポイントを付与しています。消費者にアクションを促し、ハードルを下げる上で、ポイントは強力です。

Webサイトを閲覧したり、何らかの会員登録をしたりすることでポイントを与えるサービスも世の中にはありますが、それらと異なるのは、楽天グループでは、こちらから提供する情報とユーザーの需要のマッチング精度を高めるためにデータを活用している、という点です。この精度を高めることで、非常にエンゲージメントが高い状態で接点を作りだすことができていると考えています。

ポイントだけで行動を喚起するのではなく、より閲覧者に役立つ、アクションして意味のある広告をデータに基づいてリーチさせていくので、ポイントだけが欲しくて、その先には全く興味がない、ということを起こさない仕組みになっています。

楽天グループ 執行役員 紺野俊介氏

――データを活用したマーケティングは、広告主サイドでも重要度がますます高まっています。

紺野氏 そのとおりだと思います。ただし、さまざまな障害も出てきているはずです。たとえば、個人情報保護にまつわるコスト。そして、自社で保有できるデータ以外をなかなか活用しづらい点などです。自社で個人情報を扱う以上、漏えいなどの防止のためのセキュリティ強化や、今後も起きるであろう、法制度の変化には継続的に対応する必要があります。

例を挙げると、自社で得られているデータだけではなく、オウンドメディアの会員の方は、実際に商品をどれくらい、どんな頻度で購入しているのか。どんな広告に接触しているのか。普段何を見ているのか、といった、多様な切り口で分析してこそ、成果につながります。こうした分析においても前述の個人情報保護の問題は出てきますが、それを抜きにしても、外部データとの連携が必須になるということです。

自社の事業に照らして、必ずしも自前でデータマネジメントプラットフォーム(DMP)を構築し、保全・拡大していく必要があるか? と考えたとき、「持たない」という結論に至った企業も、いまや少なくはありません。

――そういった企業には、楽天グループとしてどのように応えているのですか。

紺野氏 いわば仮想的な、バーチャルのDMPとして「楽天エコシステム」を活用いただいています。先ほど強みとして説明したとおり、消費者行動の多くをカバーするサービスが揃っています。自社の顧客はどのような人物であるべきか、というペルソナを描く上でも、想像ではなく、実際のデータにもとづくので、極めて精緻です。こうして定めたデータをもとに、「楽天エコシステム」の「外」において広告を配信することが可能です。

また広告の成果を測る上で、実際の購買に寄与したのか、といったことが、オンライン・オフライン双方の消費行動分析データを基に分析できることも特徴と言ってよいと思います。

 
楽天グループは、ご承知のとおり、ECからスタートした企業群です。最終的な購買成果を測る上で類推なのか、現物の実データで増減が見られるのか、では異なります。半面、ECのデータだけでは成り立たない部分も少なくありません。性別や年齢層だけでは見えないことのほうが大きい。あるドレッシングを購入した人において、男性が多いか、女性が多いか、世代別ではどんな割合かだけではもはや参考にならない、という実感があろうかと思います。

これまでブランドAを買っていたのに、ブランドBを買うようになった。何がきっかけだったのか。同じような人物像なのにブランドCしか買わない人は、どんな理由があるのか。楽天グループが展開する多様なサービスを切り口として、これまで見えなかった性別や世代以上のデータを把握することができるというふうにご理解いただければと思います。

――多様なデータに基づく「RMP」において、今後さらに変化、強化する点はあるのでしょうか。

紺野氏 楽天グループとしては「楽天エコシステム」の拡大に努め続けることになりますが、それは広告・マーケティングにおいても、強い追い風となります。データの豊富さが、クライアントへ提供できるサービスの向上につながるからです。消費者のタイムシェア、ウォレットシェアの拡大がカギになると思います。

事業として期待しているのは、SQREEM Technologiesと2020年に立ち上げた合弁会社、楽天スクリームが広げるマーケティングの可能性です。楽天スクリームは、AI(人口知能)による行動パターン分析を軸としたデジタルマーケティングソリューションを開発・提供する会社で、楽天会員に基づく消費行動分析データとオンライン上のオープンデータをAIによって分析します。

 
これまでの広告は、データを基にしているとはいっても、限られた領域における過去のデータを、そのまま見ているに等しい状況でした。だからこそ、ここまでお話ししたように、できるだけ多面的なデータで分析することが必要でした。

楽天スクリームで実施しようとしているのは、より発展的な「予測」です。特定の行動をする人は、データ上でどのような特徴を持つのか。膨大、かつ複雑なデータを基に、人間のような先入観や偏見のないAIが、思いも寄らない効果的なセグメントを出す、ということがあります。

人間が思いつく考えを超越したAIからの提案を前にすると、「このセグメントは意味があるのか?」と思うこともあるかもしれませんが、実際にやってみると成果が出ています。これからこんな行動をする人たちは、いま何々をしている人たちだ、というと、かつてあったSF映画のようではありますが、ほとんど現実のものとなりつつあります。

 
「楽天エコシステム」の拡大によりデータの量、多様性が増すにつれて、「RMP」がどのような変化をしていくか。これまでは広告事業から、マーケティングに資する事業への変化でした。そして今後は、より広範なデータビジネス事業へ変貌しつつあると言えるかもしれません。
 



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