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監督はCMの夢をみています
そんなこんなでございまして、1990年代のCMは80年代までのように個々のCMディレクターの強烈な個性に依存するだけやなくて、新世代CMプランナーとのコラボレーションやら才能あふれる若きアートディレクターとのコラボレーションによって賑やかに彩られていきました。
もともと映画青年でも演劇オタクでもない、監督としてはちょっと中途半端ななかじましんやが生き延びていくことができたのは、この大きな時代の流れに乗っかれたからでした。めでたしめでたし……
いやいやいや、ちょっと待ってください。めでたくないんです。今のテレビコマーシャルが置かれている状況。才能あふれるクリエイターたちがその才能を開花させてきたような、あの素敵な檜舞台じゃなくなってますねん。
さあ、いよいよこのコラムも大詰めを迎えてきております。ここではね、テレビをなんとかしたい、テレビをなんとかできればみんなもっともっと幸せになれる、っちゅう夢を見ている監督の思いを吐露します。いよいよ真面目に書きます!
って、いままで不真面目やったんかい!ってつっこまんといてくださいまし。面白く書いてきましたけど不真面目やありません!非真面目やったかもしれませんが。
監督はCMの夢をみています。皆さん聞いてください。
僕がここまで、このコラムで僕の人生と僕のまわりの才能あふれるクリエイターの方々をご紹介してきたのにはわけがありました。それはCMをつくる、という仕事が単に企業の販売促進のお手伝いだけやないんや、ということをお伝えしたかったからなんです。
え? CMって物売るために流してんのとちゃうの? ってよう言われます。それはそうやねんけど僕がご紹介してきた、僕の大好きなクリエイターの皆さんは絶対「いくら賞取っても物が売れなきゃ意味ねえんだよ」とか言わへん。はず。です。
CMにはね、物を売るためだけじゃない大事な働きがあるんです。
カンヌで賞が取れなくなった
思い起こせば佐藤雅彦さんや大貫卓也さんをはじめとする若き才能が花開く90年代の半ば、いよいよインターネットが登場します。僕が初めてマックを買うたんは96年でした。マクドちゃいますよ。マック。マッキントッシュ。この時のマックは初期のインタラクティブメディアとして物珍しかった「CD-ROM」が見れる、とか、「Photoshop」っちゅうやつでお絵描きできる、ちゅうような、おもちゃ箱的な物としてとらえてました。

