アイデアの宝庫である書店で働く書店員の視点から、他店との差別化の工夫や棚づくりのこだわりを紹介する本連載。さまざまな思いを書店員が語る。今回は、書籍校閲専門の校正会社「鷗来堂」が運営するかもめブックス(東京・神楽坂)の前田隆紀氏にインタビュー。同店は2014年に開店、「ふだん本を読まない人にも本を選ぶ楽しさを感じてもらう」ことを目指して書店づくりを行っているそう。「特集棚」などの棚作りや見出しの付け方、雰囲気作りなど、かもめブックスならではのこだわりについて聞いた。
他の書店とは違う空間で新しい書籍に出合う
――主な客層と売れるジャンルを教えてください。
当店は、校正・校閲の会社「鷗来堂」が運営をしています。開店当初のラインナップは「鷗来堂」の社員が中心になって選んだものですが、それらを軸としながら現場のスタッフが選書をしていき、今に至ります。そういった流れからか、日本語やことばにまつわる本は人気があります。神楽坂周辺には出版社や印刷・製本会社が多いので、編集やデザイン、出版関連の本もよく売れていますね。
客層については、普段神楽坂に住んでいる方を除くと30代から40代の女性が多いですね。休日になると学生や20代くらいの方が増えてきます。気軽に読めそうなエッセイ、食や生活にまつわる書籍を手に取る方が多い印象です。
――店舗が賑わう時間帯はありますか。
平日だと、お昼ごろと夕方が賑わいますね。会社の帰りに来店するお客さまも多いからだと思います。手前にカフェがあるのでそれを見つけて立ち寄ってくれる方もいらっしゃいます。
――かもめブックスならではの特徴や、他店との差別化を図っている点は。
カフェが併設されていたり雑貨が置いていたりする書店は他にもあると思いますが、やっぱり書籍がただ並べられているだけでは立ち寄りにくい方もいるかもしれない。立ち寄りやすい書店という雰囲気にはこだわっていますね。
より多くの書籍を並べることだけを優先するならもっと棚の数を増やすこともできます。でも、あえて余白や抜け感を意識することで、お客さまの隙間に入り込めるような雰囲気にしていければと思っていますね。

