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なぜ単身世帯向けの食洗機だったのか パナソニックが語る開発背景

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月刊『販促会議』で連載している「ヒットの仕掛人に聞く!」。話題のヒット商品・サービスがヒットに至った経緯を、開発の背景やプロモーション戦略からひも解きます。

今回は、2023年2月にパナソニックが発売した単身世帯向け食洗機「SOLOTA」。食洗機の普及率を高めるため、若手中心に編成された新商品開発プロジェクトによって誕生した同商品。その開発背景やヒットの裏側をプロジェクトの中心メンバーに聞いた。

※本記事は、月刊『販促会議』9月号 連載企画『ヒットの仕掛人に聞く!』に掲載されています。

詳細はこちら から。

■商品情報

商品名:パーソナル食洗機「SOLOTA」

希望小売価格:37620円(税込)

主な販路:公式通販サイト、家電量販店など

 

パナソニック
キッチン空間事業部
冷蔵庫・食洗機 ビジネスユニット
食洗機技術部
楠 健吾氏

2015年入社。食洗機技術部で食洗機の設計・開発を担当している。主に卓上食洗機の開発に携わってきた。「SOLOTA」の開発ではプロジェクトリーダーとして推進した。

パナソニック
キッチン空間事業部
冷蔵庫・食洗機 ビジネスユニット
国内マーケティング部
山本秀子氏

2005年入社。食洗機の営業担当を経て、13年に現在の部署へ。冷蔵庫のマーケティングを経て22年から食洗機の担当に。「SOLOTA」をはじめ、卓上、ビルトインタイプと食洗機全体のマーケティングを実行している。

 

食洗機の普及率向上を目指して開発

──「SOLOTA」開発の背景を教えてください。

楠:若手を中心にした新しい食洗機開発プロジェクトの立ち上げが開発のきっかけです。日本における食洗機の普及率は29%程度で生活必需品とは言えない状況。普及率拡大のためにはどのような商品が必要なのかを考えていました。

食洗機の購入動機を考えると、家族が増える、住居の購入など、ライフステージの変化がきっかけになっていることが多いことがわかっています。逆に言うと、そこで存在を知らなければ検討すらされない場合も十分に考えられてしまうのです。

一方で食洗機は、家電の中でも利用満足度が高いカテゴリーで、一度使ってみると、食洗機がない生活を想像しにくくなる性質があることも事実です。そこで、人生のできるだけ早いタイミングで食洗機に触れてもらうことが大事だと考えました。

「初めての食洗機」を意識し、食器洗いの様子が見えるように前後に窓を設けた。キッチンの広さも意識し、A4サイズで収まるように設計された。「SOLOTA」の名前は単身=SOLOに、技術で手助け(Technological Assistant)したいという思いから付けられている。その名の通り、一人暮らしの相棒となることを目指している

 

──ニーズを起点としたのではなく、ターゲット起点の開発だったのでしょうか。

楠:プロジェクトが目指していたのは食洗機の普及率向上です。明確なターゲットやペルソナも決まっていたわけではありません。ですが、プロジェクトメンバーで議論を進めていくうちに、使う食器の数が少ない単身世帯でも食器洗いは手間なのではないか、そのストレスは食器点数とは無関係なのではないか、ということに気づきました。その気づきが、現在の「SOLOTA」の若年層の一人暮らしというターゲット設定につながっています。

ターゲットのペルソナを立てるときには、得てしてこちらの都合の良いペルソナを考えてしまいがちなことも多いですよね。また、調査やアンケートの結果からつくることも多いと思います。

ですが今回は、ターゲットと世代の近いメンバーの実体験や等身大の生活をベースに、メンバー間の議論である程度「腹落ち」するところまで細かくペルソナをつくり上げました。調査を行ったのは、あくまでそのペルソナが正しいかどうかを検証する目的。これによってより実体感のあるペルソナをつくることができたのではないかと思っています。

──発売後の反響はいかがですか。

山本:2023年2月17日に発売し、5月末の時点で販売計画の1.5倍に到達しています。発売当初から想定以上の動きを見せていて、現在も実績に応じた生産の最適化を図っています。

 

「気づき」と「インパクト」を二本柱に

──プロモーションではどのようなことをされましたか。

山本:「一人暮らし」といっても若年層から高齢者までさまざまです。今回は人生の早いタイミングで食洗機の価値を知ってもらうことがテーマなので、20代~30代の賃貸暮らしをコアターゲットにプロモーションを検討しました。

加えてZ世代も意識するとデジタルの活用は必須。ただ、メッセージとして「一人暮らし向けの食洗機あります」と発信するだけでは届かないので、一人暮らしのシーンを客観視して食洗機がある生活への気づきを与えることが必要だと考えました。

ただ、それだけでは哲学的になりがちになってしまいますよね。その点は、理屈抜きで記憶に残ることも大事だと考え、「気づき」と「インパクト」の2つの柱で展開しました。

「気づき」を与えるために行ったのは、一人暮らしのリアリティを伝えるコンセプトWebCMの制作と、キーワードを散りばめたSNS広告の展開です。

また、インパクトの創出を目的として、テレビアニメ「【推しの子】」とのタイアップを活用しています。作品内のキャラクター、アイが「SOLOTA」をPRする動画も制作し、30秒のものは1800万回再生されました。

食洗機を持っていない、使ったことがない若年層に「食洗機のある生活」を自分ごと化してもらうため、コンセプトCMを制作。一人暮らしのリアリティを客観的に見せることで視聴者の「気づき」を促すことを目指した。

 

──家電は関心から購買までの期間が長い傾向にあります。気づきとインパクトを与えたあとの施策は?

山本:サイトの構成を既存商品とは変え――、

本記事の続きは、月刊『販促会議』9月号 連載企画『ヒットの仕掛人に聞く!』にてお読みいただけます。
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