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思いっきり泣いた。明日は任せた。粧美堂、中高生のコピーを実用化

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第60回「宣伝会議賞」では、宣伝会議の講座とコラボレーションしたビジュアル制作プロジェクトを実施。今回は、中高生部門・粧美堂の課題「TWOOL(トゥール)でふたえメイクをしたくなるアイデア」で受賞した3作品が、実用化に至った。

ブランド立ち上げのタイミングで言葉の重要性を実感

2021年9月に発売された粧美堂のブランド「TWOOL(トゥール)」。マーケティングチームの佐藤裕之氏によると、同商品は「粧美堂」ブランドの価値向上、商品力強化の方針のもとに生まれたアイテムだという。

「『TWOOL(トゥール)』は筆とプッシャーでふたえまぶたをつくる商品で、ある意味ではコンプレックス商材というカテゴリーに含まれます。しかし、ひとえも魅力的な個性であって、画一的にふたえをよしとする発信をしたくはない。そんな葛藤の中、議論を重ねて生まれたブランドでした。こうしたいきさつもあり、このブランドは外部のコピーライターやデザイナーに入ってもらい、商品開発を進めてきました。このときに提示したのが、“ふたえコスメ宣言”というキャッチフレーズ。当時SNSでトレンド入りもして、改めて“言葉”の重要性を認識したのです」(佐藤氏)。

あらためてブランドが、若年層からどのような印象を持たれているか。どのようなメッセージを打ち出していけばよいか。プロモーションやインサイト調査の一環として、中高生部門での課題協賛に至った。

「応募いただいた作品はどれも、繊細な感情の濃淡が言語化されていて、等身大の想いが伝わってくる。キャッチフレーズとして表現されることで、機能性だけではない、使用したときの感情が見えてくることが分かりました」(佐藤氏)。

協賛企業賞の選考は、担当者3名が全作品からそれぞれ数点を選び、持ち寄ってディスカッションを重ねたという。一方、コピーライターによる最終審査会を経て選ばれたのも、グランプリ、準グランプリともに同社の課題に寄せられた作品だった。

同社マーケティングチームの金田なつみ氏は、「協賛企業賞はTWOOLが伝えたいコンセプトに沿っているものを、という観点で選定しましたが、グランプリに選ばれた作品も、実は最終候補の中に残っていたのです。こちらも本当に心にグッとくる言葉だったので、とても嬉しかったです」と振り返る。

そして今回、宣伝会議の講座である「コピーライター養成講座×アートディレクター養成講座『アートとコピー』コース」の受講者とのコラボレーション企画を実施。約5カ月間をかけ、受賞コピーを起点としたビジュアル制作に取り組んだ。

「デザイナーの皆さんの、言葉を際立たせるようなアプローチと表現が新鮮でした」と佐藤氏。現在、作品はInstagramで広告配信されているほか、今後も店頭のPOPや什器などでの活用を検討中だという。

「実際の売場での活用を視野に入れたデザインということで表現に制限はあったと思いますが、素敵なビジュアルに仕上げていただきありがたかったです」(佐藤氏)。

価値観の多様性をいかに表現するか?

今回のプロジェクトでは、講座「アートとコピー」受講生から希望者を募り、竹内駿さん、黒石恵梨奈さん、重見果歩さんの3名が参加した。
 
グランプリ作品「思いっきり泣いた。明日は任せた。(森川芽那さん作)を担当した竹内さんは、「今回の取り組みでは私が唯一の男性で、きっとターゲットから一番遠い存在。コピーを起点としたアプローチは普段の仕事でもあまりないので、貴重な経験でした」と振り返る。

実データ 作品 「思いっきり泣いた。明日は任せた。

“泣いた”とありますが、悲しくて泣く時もあれば、嬉しくて泣く時もある。状況を限定しすぎるのは良くないと思い、見た人の感じ方に委ねる、ビジュアルを使わない方向性を検討しました。そもそも言葉そのものに力がある。そこで、文字を涙でにじませたデザインにしました」(竹内さん)。

黒石さんは、準グランプリ「ひとえにもふたえにもなれるわたし。」(杉田珠江さん作)を担当した。
「他のふたりの作品を見ていても、中高生にとって、価値観が多様であることは当たり前のことなんだな、と感じました。誰かを傷つけるような表現になってはいないか、杉田さんが言葉に込めた純粋な思いをどう表現したらよいか、苦慮しました」と話す黒石さん。
最終的に、多くの人にとって馴染み深いであろうゲームの選択画面をデザインに落とし込み、パーツを選んでキャラクターをつくるシーンをイメージしたという。

実データ 作品 「ひとえにもふたえにもなれるわたし。」

協賛企業賞「こっちの私も、好き。」(髙木麻衣さん作)を担当したのは、重見さん。「どの作品も、人によっていろいろなシーンを思い浮かべることのできる、余白のある言葉遣い。“こっちの私”という言葉も、ビジュアルで“あるべき姿はこっち”のように規定しないように考えました」と話す。
「私自身もそうですが、目元のメイクが変わったらヘアスタイルにも影響すると思うんです。誰かと比較するのではなくて自分自身が、もくもくと雲のように形を変えていく。想像力が膨らんでいく様子も表現しました」(重見さん)。

実データ 作品 「こっちの私も、好き。」

竹内さんは「中高生の皆さんに、自分の書いた言葉が形になる喜びを、味わってもらう一助になれたら」と話す。

また現在、地域の小中学生とクリエイターが一緒になってローカルマガジンを制作する「コロマガプロジェクト」に携わっているという黒石さん。「今回の企画は将来的にやっていきたい活動にも近く、とても楽しかったです」と振り返る。

「中高生の人に喜んでもらわなきゃというプレッシャーもあって、創作意欲が湧きました」と重見さん。「普段は主にWeb施策に携わっているので、私もコピーを起点としたデザインは初めて。自分自身の強みを考えるきっかけにもなりました」と話した。

言葉で表現することの魅力を伝えるだけでなく、広告コピーを通じて社会とのつながりを感じてもらうことを目指す「宣伝会議賞」の中高生部門。今後も様々な企画を通し、若年層と広告ビジネスをつなぐきっかけをつくっていきたい。

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  • 「その言葉が、未来を変える。」
  • 第61回「宣伝会議賞」応募のご案内

「宣伝会議賞」は、広告表現のアイデアをキャッチフレーズまたは絵コンテ・字コンテという形で応募いただく公募広告賞です。1962年の創設以来、「コピーライターの登竜門」として長年にわたり、若手のクリエイターやクリエイターを目指す方々にチャンスの場を提供してきました。60万点近くの作品が集まる、“日本最大規模の公募型広告賞”として進化を続けています。

協賛企業からのオリエンテーションを掲載した月刊『宣伝会議』11月号は、9月29日より全国の書店、Amazonで発売中です!

実データ グラフィック 第61回宣伝会議賞