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コラム

お菓子だってDX! 店舗とECでシナジーを生み出す、BAKEが始めたOMO戦略とブランド開発

オンラインで、いかにして“没入感”をつくるか? BAKE初のECをメインとするブランド、SNS活用とクリエイティブ戦略

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「アドタイ」読者の皆さん、こんにちは。BAKE INC.(以下、「BAKE」)でPRやSNSといったコミュニケ―ションの分野を担当している馬場 諭です。

4回にわたってお届けしてきた”BAKEのブランドづくり”についてのコラム。最終回となる今回は新ブランド「架空のパティスリー しろいし洋菓子店」のブランドづくりをコミュニケーションの側面から深堀りしていきたいと思います。

ECを基軸とするブランド「しろいし洋菓子店」でどう没入感を表現するか?

これまでの3回のコラムでお伝えしてきましたが、BAKEの新ブランドである「しろいし洋菓子店」においては、お客さまにImmersive(没入)な体験をしていただけるようなブランドづくりを進めてきました。

少しおさらいをさせてください。

1.ストーリー設計(マンション・住人・商品名等)

北海道のどこかに建つ紺碧の建物「マンション・インディゴ」。その1階には「しろいし洋菓子店」が入っていて、上階に住む個性豊かな住人たちにはお気に入りのお菓子があります。

たとえば、501号室に住む「花屋とパティシエのフラワー姉妹」のお気に入りはクッキー。「しろいし洋菓子店」では「501号室 夜更かしのための4種のクッキー」という商品名で販売されます。


イメージ 商品 「501号室 夜更かしのための4種のクッキー」

マンションの最上階に住むオーナーの「マダム ブルー」は、マンションを訪れる友人たちにクッキー缶をふるまいます。このクッキー缶の中身は住人たちのお気に入りのお菓子たち、という設計になっています。


イメージ 商品 「マダム ブルー」とクッキー缶

2.没入の演出方法

ブランドコンセプトの「没入」を表現するために、ブランドロゴ、クッキー缶のグラフィック、さらにはクッキー缶を開けたときに目に入るクッキーの形まで、中心に渦を巻いていくような形を採用しています。


写真 商品 綺麗な渦巻き型となるクッキー、パウンドケーキ

フォントは「しろいし洋菓子店」の持つ手作り感や不思議な世界観を表すようなものを採用しました。実際、どこかにあるマンションの話なんじゃないかと思わせるような、童話のタイトルで使われていそうなフォントです。


ロゴ 「しろいし洋菓子店」

このように、ストーリー設計・デザイン面・商品面とあらゆる方向から「没入」を感じられるようにブランドづくりを進めてきました。

5階建ての建物を貸し切り、世界観を表現したメディア向け戦略発表会

約1年間の準備期間を経て、いよいよブランドお披露目の日。2023年10月10日、BAKEでは「しろいし洋菓子店」のプレスリリースを出すのにあわせてブランド発表イベントを開催しました。

この発表会についても「没入」を表現できないかと思考錯誤を重ねました。会場として選んだのは、東京・日本橋にあるTHE A.I.R BUILDING。「マンション・インディゴ」と同じ5階建ての建物です。

アーティストが棲みついたビル

THE A.I.R BUILDING=ARTIST IN RESIDENCE

1970年代にNY出身のジャズミュージシャン『Gilles』が放蕩の末に棲みついたというストーリーを元に作られたコンセプトビルディング。ビルの各階が普段は独立して機能しているが才能のあるクリエイターや新進気鋭のブランドがビル一棟をハックし、表現を最大化することが出来ます。

この建物の紹介文、少し「しろいし洋菓子店」の世界観とも似ていると思いませんか?

この日はTHE A.I.R BUILDINGをマンション・インディゴとして生まれ変わらせました。入口を入ると目の前には「しろいし洋菓子店」の商品が並びます。


写真 「しろいし洋菓子店」の商品

階段を登ると上階には住人の部屋が。こちらは501号室に住むフラワー姉妹の部屋を再現した部屋です。


写真 501号室に住むフラワー姉妹の部屋を再現した部屋


写真 501号室に住むフラワー姉妹の部屋を再現した部屋

こちらの部屋の左側のエリアでは302号室に住む「絵描きのアマンダ」、奥のエリアでは201号室に住む「楽器職人のスノー」、右側のエリアでは403号室に住む「船乗りのブレッド」の部屋を再現しています。


写真 「マンション・インディゴ」の部屋を再現

ご来場いただいたお客さまはまるで「マンション・インディゴ」に訪れたような、自分が住人になったかのような気分を味わっていただけたかと思います。

OMOブランドだからこその課題!SNSでどう没入感を表現するか?

「しろいし洋菓子店」は実店舗をもたないブランドですので、店舗スタッフがお客さまと直接お会いすることはなく、日常的なお客さまとの接点といえばSNSとなります。「没入感の提供」をテーマにしているブランドですので、SNSでも没入感を表現できるようにさまざまな仕掛けを施しています。

1.Instagram

ブランドをお披露目する一週間前、「しろいし洋菓子店」のInstagramにはこちらの3枚の画像を投稿しました。ブランド名はまだ発表前だったため、「とある洋菓子店」という名前でアカウントをスタート。


イメージ Instagramに投稿した3枚の画像

その2日後にはさらに3枚の画像を投稿。お気づきいただけましたでしょうか。あたかもマンションが建設されていくかのように画像を投稿していったのです。


イメージ Instagramに投稿した6枚の画像

そしてブランドの発表を行った10月10日に最後の3枚の画像が投稿され、「マンション・インディゴ」が完成しました。

イメージ 「マンション・インディゴ」が完成

2.X(旧 Twitter)

Instagramの画像の右下にうつっている猫は「マンション・インディゴ」のオーナー「マダム ブルー」の飼い猫のアズーリ。しろいし洋菓子店のX(旧 Twitter)のアカウントはアズーリが運用している設定です。

販売開始の10月12日の朝にはオープンのお知らせをしたり、


イメージ しろいし洋菓子店のX(旧 Twitter)のアカウント投稿

まるで今この瞬間に店内の様子を見ているようなポストをしたり、


イメージ しろいし洋菓子店のX(旧 Twitter)のアカウント投稿

「しろいし洋菓子店」のパティシエや、「マンション・インディゴ」の住人たちの紹介をしてくれています。


イメージ しろいし洋菓子店のX(旧 Twitter)のアカウント投稿

ただ住人たちの紹介をするのではなく、「しろいし洋菓子店」のストーリーの中のキャラクターが話者になることで、一連のストーリーにさらに臨場感を持たせています。

3.LINE公式アカウント(BAKE INC.のアカウントで発信)

最後にご紹介する施策がLINE公式アカウントで配信したマダム ブルーからの手紙です。あたかも「しろいし洋菓子店」が実在し、実際に自分に手紙が届いたかのように感じられるよう、10月10日のブランド発表日には左の手紙を、10月12日の販売開始日には右の手紙を配信しました。


イメージ マダム ブルーからの手紙

私の担当するPRやSNSの役割は社内の多くのメンバーがかかわって作ってきたブランドの世界観や商品の魅力を、情報を見てくれるお客さまやSNSの先にいるお客さまにうまく伝えることだと考えています。最終的なアウトプットをイメージし、どんなふうに伝えたら一番伝わるかを考える、

これを私たちは「アウトプットからの逆算」と呼んでいます。

「しろいし洋菓子店」のブランドづくりにおいても、商品が決まって、コンセプトが決まって、ブランドとしてできあがってから発信方法をどうするかを決めたわけではありません。私たちSNSチームもブランドづくりのチームに入れてもらい、先にご紹介したようなマンションの住人たちのストーリーやキャラクター設定を一緒に設計したり、ブランドサイトの構成を最終的なアウトプットを念頭に置きながら一緒に考えてきました。

できあがったものを伝えられ、ただSNSで展開したのであればここまでの没入表現はできなかったと思います。議論を重ね、ブランドの世界観を社内のメンバーと一緒に作り上げてきたからこそ、ブランドに対する理解も想いも深まり良いアウトプットに繋がっていけたのだと感じます。

「ブランドづくり」は、お客さまの「しあわせ」をつくること

BAKEのミッションは「しあわせに、BAKEる。」です。BAKEのメンバーがしあわせであることが大事であり、私たちのしあわせが、食べる人、つまりお客さまのしあわせへとBAKE(化け)る、という考えに基づいています。


イメージ BAKEのミッション

しかし、いくら良いブランド・良い商品があっても、それをお客さまに知ってもらえなければ宝の持ち腐れです。

店舗に足を運んでくださるお客さまに直接お会いさせていただけるのは店舗で勤務するメンバーになりますが、私のチームではファンでいてくださるお客さまはもちろん、BAKEのことがちょっと気になっているお客さまやまだBAKEのことを知らないお客さまにも情報を届けることができます。そしてSNSで反応をいただくこともできます。

初回の北村のコラムにもありましたが、BAKEのブランドづくりは一方通行(BAKE→お客さま)から共創(BAKE⇔お客さま)へとシフトさせようとしています。お客さまの声をたくさんお聞きし、お客さまが求めているものがどういうブランドであり、どういう商品なのかをキャッチする。それを社内にフィードバックし、次のブランドや商品づくりに活かす。このような循環を生み、お菓子を、お菓子業界を進化させていくことが、結果的にお客さまのしあわせへと繋がっていく、そんなふうに考え、実行しています。

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BAKE ブランド戦略部 部長 馬場 諭氏

BAKE
ブランド戦略部 部長
馬場 諭氏