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コラム

お菓子だってDX! 店舗とECでシナジーを生み出す、BAKEが始めたOMO戦略とブランド開発

コーポレートブランドを強化し、事業ブランドのポートフォリオを見直す 顧客データを基点にしたコロナ禍のBAKEのDX

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店舗ビジネスを前提とした創業以来のBAKEの経営戦略

「アドタイ」読者の皆さん、こんにちは。BAKE INC.(以下、「BAKE」)の西岡 純一です。私はBAKEでオンライン事業やOMO(Online merges with Offline)推進を担当しています。

「お菓子だってDX!店舗とECでシナジーを生み出す、BAKEが始めたOMO戦略とブランド開発」をテーマにした本コラムも今回が2回目。トップバッターを務めた当社のChief Branding Officerの北村萌の1回目からバトンを受け取り、今回の執筆を担当します。

私たち、BAKEでは、新ブランド「架空のパティスリーしろいし洋菓子店」を立ち上げ10月から販売を開始しました。BAKEは店舗を中心としたビジネス展開をしてきましたが「しろいし洋菓子店」は、当社の10年の歴史の中で初となるオンラインを基軸としたブランドとなります。本連載では、このブランドの開発に携わったメンバーがリレー形式でバトンをつなぎ、どのようにブランドを開発したのかを解説。さらに、私たちが現在進行形で取り組んでいる、製菓市場におけるOMOビジネスの可能性についても言及していきたいと思います。

私からはBAKEの創業からのビジネス展開、コロナ禍で顕在化した店舗ビジネスの課題、そしてどのようにDXを行い「しろいし洋菓子店」を開発したか、さらにはBAKEの今後のオンライン戦略についてお伝えできればと思います。

さて、まずは創業から続けてきた戦略についてお伝えします。


実データ 創業以来のBAKE INC.の経営戦略

➀ユニークなビジネスモデル

BAKEでは創業以来「工房一体型」の「専門店業態」の店舗を出店。そこで販売する商品については「1ブランド=1プロダクト」というビジネスモデルで店舗を拡大してきました。

工房一体型の店舗はお客さまの五感に訴えかけることができ、購買意欲を刺激します。また、販売する商品を絞ることでオペレーションがシンプルになります。その結果、商品力アップに力を注ぐことができ、好循環なビジネス展開ができました。

➁製菓企業としてのこだわり

私たちが創業以来、大切にしてきた考え方のひとつに「おいしさの三原則」があります。その三原則とは、「原材料にこだわる」「手間を惜しまない」「フレッシュな状態で提供する」の三つです。良い原材料を使い、ひと手間を惜しまずに商品づくりにこだわり、出来立てのおいしさをお客さまに届けてきました。

➂ブランド力の源泉となるデザイン

創業以来、大切にしてきた考え方のもうひとつが「おいしさの次にデザインが大事」です。

製菓企業としては珍しく、インハウスデザイナーを複数かかえ、ブランディング・クリエイティブにも力を入れています。

売上が9割減の月も コロナ禍で顕在化した店舗ビジネスの課題

このように店舗ビジネスを中心に順調に拡大をしてきたBAKEでしたが、2020年コロナウイルスが蔓延したことに伴い状況が一変しました。

当時、私たちは国内に全ブランドあわせて60を超える店舗を出店していました。それが、緊急事態宣言で営業できなくなったり、短時間営業となったり、また出店する百貨店でコロナウイルスの感染者が出たら急遽休業になったりと、さまざまな情報が交錯し日々状況も変わるなか店舗を運営するだけでも非常に大変、という状況に陥りました。

特にネックになったのが、私たちが駅や百貨店など⼈通りの多い場所に店舗を構えていたという点。さらにBAKEのお菓⼦は友人宅への訪問時や帰省時、またはビジネスシーンなどで手土産に選んでいただくことが多かったという点です。コロナウイルスの流行により、人通り・お菓⼦が使われるシーンの両方がなくなってしまい、前年と比較して売上が8~9割減という月もあるなど非常に⼤きな打撃を受けました。

コロナ禍における戦略の転換

コロナ禍、店舗の売り上げが急激に落ちこんでいき、私たちはこれまでと戦い方を変えていく必要がありました。

具体的には前述した戦略「➀ユニークなビジネスモデル」「➁製菓企業としてのこだわり」「➂ブランドを創出する源泉」のうち、➀の中身を変えていきました。


実データ BAKE INC.の新たな経営戦略

まず、ブランドポートフォリオ戦略の変更です。創業以来、専門店業態での出店をしていたため、それぞれのブランドのファンでいてくださるお客さまの中でも「BAKE CHEESE TART」と「PRESS BUTTER SAND」を同じ会社が運営していることをご存じない方が多くいらっしゃいました。

一方、コロナ禍以降はこれらのブランドがBAKEのブランドであるということを押し出していきました。まずオンラインショップ開設の準備を急ピッチで進めました。2020年6月にオンラインショップ「BAKE the ONLINE」をオープン。また、2021年にはBAKEが展開するブランドをまとめてお買い求めいただける「BAKE the SHOP」の1号店を出店しました。これにより、オンラインでもオフラインでもBAKEの複数のブランドの商品を一度に購入できるようになりました。

並行して、顧客情報の⼀元化も進めていきました。BAKEでは2018年からLINE公式アカウントの運営をスタート。また2019年にはスマホアプリをスタートしており、ポイントが貯められる仕組みはありました。しかし、以下のような課題がありました。

  • ・店頭ではLINEの友だち追加が主で、オンラインショップとの会員情報連携ができていない
  • ・アプリで貯めたポイントが利用できるのは店舗のみでオンラインショップは対象外
  • ・店舗ごとにLINE公式アカウントが分かれており管理が煩雑

そこで2021年には新アプリをリリースし、店舗とオンラインショップの会員情報を統合。また「BAKE Membership Program(以下、「BMP」)」というポイントアップシステムを作り、対象店舗とオンラインショップのどちらでもポイントが貯まって使えるようになりました。また、LINEについても店舗ごとの公式アカウントを順次廃止し、BAKE INC.のLINEアカウントをひとつに集約しました。

オンラインショップの開設や会員統合には困難が伴いましたがその導入はゴールではなくスタートです。導入後も機能改善に尽力しました。たとえばオンラインショップでは配送リードタイムの短縮や配送温度帯の変更、ショッパー(ブランドの紙袋)や熨斗などの付帯サービスの改善、大口注文の専用サイトの設置など少しずつ機能をアップデートしてお客さまの利便性を高めていきました。

店舗でのサービス改善、オンラインショップの機能改善、LINEからBMPへのログイン機能、LINE公式アカウントやメルマガでの情報発信などさまざまな施策を行い、現在はBMP会員さまとSNSの総フォロワー数をあわせると延べ100万人を超える規模となりました。今後BMP会員さま向けサービスやアプリのアップデートも予定しています。

これからも各ブランドの世界観を維持しつつもうまくOMOを活用し、お客さまに体験価値を提供していきたいと考えています。

初のECをメインとするブランドの立ち上げ、こだわったのは「体験」のデザイン

10月に発表した新ブランド「しろいし洋菓子店」は、まさにOMOを意識しながら設計したブランドです。

これまでBAKEでは店舗ビジネスを展開してきたため、店舗でのブランド体験という点に重きを置いていましたが、「しろいし洋菓子店」では店舗での体験に変わる価値ある体験をしていただきたいと考えました。

架空のパティスリーである「しろいし洋菓子店」は、北海道白石区のどこかに建つ「マンション・インディゴ」という建物の1階に入っているという設定です。このマンションの住人たちにはお気に入りのお菓子があり、それが「しろいし洋菓子店」で販売する商品となっています。


写真 ブランドサイト 「マダム ブルー」の飼い猫のアズーリ


写真 ブランドサイト 「マンション・インディゴ」

お客さまに「マンション・インディゴ」の世界を体験していただくにはどうしたらよいかを考え、ブランドサイトを少し変わった設計にしました。ブランドサイトに入ると「マンション・インディゴ」のオーナー「マダムブルー」の飼い猫のアズーリがお出迎えし、各ページへ案内してくれます。サイトにアクセスしてくださった方が実際にマンションに訪れたような感覚になっていただけるよう、下から上へとページをスクロールすることで、1階の『しろいし洋菓子店』から上の階の住人の部屋に上がっていく感覚を得られるような構成にしています。

また「しろいし洋菓子店」のX(旧 Twitter)の中の人は、猫のアズーリです。この架空のパティスリーが入ったマンションに住むアズーリが、住人やお菓子について紹介してくれます。

また、ブランドの拡張性という点も意識しています。このマンションには空き部屋があります。「これからどんな住人が増え、どんなお菓子が登場するんだろう」とお客さまが想像し、サイトを、いえ、「マンション・インディゴ」をまた訪れたいなと思っていただけるのではないかなと考えています。

お客さまはオンラインで注文し手元に届いた商品と、ブランドサイトやSNSといったオンライン上で繰り広げられるストーリーの両方を楽しむことができる、まさにOMOな設計となっています。

BAKE以外の商品も扱う「お菓子のプラットフォーム」をつくりたい!

今後はすべてのブランドにおいてOMOを意識し、たとえばオンラインでしか買えない限定商品を作ったりなどもしていきたいと考えています。

さらに、少し発展した構想もあります。BAKEでは「CAKE.TOKYO」という話題のスイーツやおすすめのスイーツショップを紹介する自社メディアを運用しているのですが、小さなスイーツショップさんにインタビューをすると、「宣伝が難しい」「他社ブランドとの差別化が難しく選んでいただくのが大変だ」というようなお声を聞くことがありました。

前述のとおりBAKEには100万人規模のBMP会員さま・SNSのフォロワーさまがいらっしゃいます。

そのような課題をもつ企業・スイーツショップがあるのであれば、BAKEのオンラインショップ「BAKE the SHOP」をプラットフォーム化し、同サイト上で「CAKE.TOKYO」でご紹介させていただいたスイーツを販売することができないかと検討を進めています。そうすることでお客さまの選択肢が増えますし、BAKEと関わっていただいた企業・スイーツショップも商品の認知を広げていくことができる。BAKE the ONLINEを起点として新たなイノベーションを起こしていきたいと考えています。

BAKEのミッションは「しあわせに、BAKEる。」

たくさんの方のしあわせへとつながるブランドや体験とは何かを、これからも考え、実現していきたいと思います。

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BAKE ブランドプラットフォーム部 部長 西岡純一氏

BAKE
ブランドプラットフォーム部 部長
西岡純一氏