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コラム

D2Cブランドの立ち上げから考えた、これからの「価値」のつくり方

Inastagramで始めた「好きなもの繋がり」がきっかけ!D2Cブランドオーナーへの道のり!

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見る専用にダウンロードしたInstagramが、人生を変えた!?

はじめまして、ジュエリーとアクセサリーの2つのブランドを、Instagramだけで販売する無店舗型ビジネスを展開する稲本あやと申します。このスタイルで事業を始めたのが今から6年前。約2年間、務めたメーカーでのエグゼクティブ・アシスタント職を辞め、独立して事業を開始しました。

現在は国内のMAUも3000万を超えると言われているInstagramですが、当時の日本では現在ほどには浸透していませんでした。新語・流行語大賞で「インスタ映え」が選ばれたのが2017年のことでしたので、まだ浸透前の状況にあったと思います。

ショッピング機能が実装される前、SNSから買い物をするという感覚が全くない時期でした。「Instagramだけで事業をしています」と言うと6年経った今でも、「きっかけは何ですか?」「どうして無店舗で物が売れるんですか?」とよく聞かれます。

なぜならアクセサリーやジュエリーといったものは、 高額で商品を見て購入したいと多くの人が思うであろうものだからです。それでも「高額の方がInstagramで売れる」という確信がありました。連載1回目はそのお話からしていきたいと思います。

6年前はまだ日本では、SNSではFacebookにだんだん皆が飽き始めて「次はInstagramかな~なんだろうな~」くらいの時期。一方で米国をはじめとする海外ではInstagramとSnapchatが人気を二分していた時期でした。

海外で流行った商品は日本では5年後に遅れてやってくる!

最近はインターネットの普及などでスピードが加速しているため、タイムラグはどんどん短くなっているように感じますが、幼い頃から海外で生まれ育ったこともあり、日本は海外で流行った商品が5年~数年程遅れて入ってくるという感覚を持っていました。InstagramかSnapchatはもう少ししたら日本で流行するのだろうなと思い、見る専用に何となくダウンロードしたのがInstagramでした。

好きなことや趣味や目的だけで横に繋がっていく仕組みが面白く、当時、日本では情報交換と言えば「アメーバブログ」が全盛の時代だったのですが、写真だけで欲しい情報が取れるInstagramの便利さに「これはおもしろい」と思い、海外で買ったアクセサリーの写真を1枚投稿してみました。すると、「私も欲しい」というコメントがたくさん来たのです。趣味や感覚が似通った女性同士。それなら、と「じゃあ色違いも欲しかったから、送料をみんなで折半しよう、他にも欲しい人いる?」と呼び掛けて・・・実はこれが事業スタートのきっかけです。

最初はビジネスをしようと思っていたわけではないのに「好きなものが同じ人どうしの繋がりでコミュニケーションを密にとりあった結果、ニーズがありビジネスになった」のでした。

はじめに気を付けたのがお金のやりとり。金銭トラブルは絶対にないよう、またお互いの個人情報の交換はDMではしたくなかったので、最初はメルカリのプラットフォームを活用しました。当時は今のように自分で作るショップサイトが流行する前で販売手数料+決済手数料が高額だったため、自社ショップサイト製作の資金を作るためにメルカリとInstagramを活用。Instagramで写真や動画をシェアし、メルカリで決済をしてもらう。メルカリには受け取り後、「感想をもらう」機能があるため、レビューを今度はInstagramに投稿、このふたつの間に流れをつくりました。海外ではすでに動画を見てInstagramで物を買うことが主流になっていたため、とにかく動画をInstagramで掲載して実物を手にしているかのような状態を想起させました。ショップはクルーリールという名前で、「ブライダルアクセサリー専門店」でスタートしました。ブライダルは需要が消えることはなく、さらに写真や動画はプロのカメラマンさんが撮影した素敵なものを顧客の花嫁さんからたくさんシェアいただけ、プレ花嫁さんは最新の流行を雑誌よりも早く動画で見ることができる。Instagramの相性が良いと考えたからです。それと同時にすっかりInstagramのおもしろさにハマり、海外のInstagram Marketing Youtuberの動画を見漁り、海外のInstagram Marketing Schoolに入会してコミュニティ内で最新の情報交換をし、そこで初めてInstagramは全て「アルゴリズムに支配されている」ということを知り、とにかくアルゴリズムを徹底的に研究しました。

写真 ジュエリーを付けた手

日本の市場では、他者の“お墨付き”が購買の起点に

どのようなビジネスでもそうですが、全て海外の手法を取り入れればOKというわけではなく必ずローカライズが必要だと言われます。おそらく一度は聞いたことがあるかもしれませんが、世界各国の人々が乗った豪華客船が沈没しかかったときに何と声をかけるといいのか、という「沈没船ジョーク」の話があります。販売の際、これと全く同じだと感じました。船長が各国の人を飛び込ませるために、アメリカ人には「飛び込めばヒーローになれる」と言い、フランス人には「決して海には飛び込まないで下さい」と言い…日本人に対しては「みなさんはもう飛び込みましたよ!」という。この話と似ていて、Instagramはまさしくここをカバーしているプラットフォームだったと思います。売り手と密にコミュニケーションをとり、写真や動画でくまなくチェックし、さらに「誰かの率直な感想」と「自分以外の誰かがとっても気に入っている様子」を見て、それを「真似する安心感」があって初めて買う決意ができる。

「みんながこんなに気に入っているのだし、こんなにたくさんの人が持っているってことは、これがイイと思った自分の直感は間違いないはず」という、“お墨付き”が大きなキーポイントでした。「販売者とのコミュニケーション」における双方向だけではなく三方向以上の矢が刺されば、より購入につながりやすい状態になるのです。

さらにInstagramというショーケースで広いコミュニケーションを取り、LINE@に誘導しさらに個別で一人ひとりと対応、ショッピングサイトへ誘導するというSEO対策が一切不要なルートを確立させました。マニュアル化すれば、扱う商品は関係なく誰にでも可能になると確信し、試しにアクセサリーで成功したステップと同じ手法で、アパレル、ジュエリー、インテリアといろいろ検証をしてみたところ全て販売に繋がることがわかりました。この「ファンを育てる」やり方は時間を要するだけに、金額は関係なくブランドを価値あるものに育てていくことができるのです。

当時ほぼいなかったSNSコンサルの依頼をいただいていたことから、SNSの物販スクール事業の準備も同時に進めほぼ完成していました。これまでのプラットフォームの移り変わりからInstagramもこのプラットフォームを超える何かがそのうちすぐに現れ、Instagram頼りのビジネスは10年後にはなくなっていると思い、20年後も残る「ブランドを作る事業」に集中しようと決めました。SNSの使い方を教えることは自分でなくてもできますが、スモールビジネスの起業後にどうブランド価値を作ってスケールしていくかを伝えられる人になる方がきっと今後求められると考えたからです。2024年ようやくその段階にきました。

Instagramビジネスが軌道にのり、会社員をやめ事業に集中することにしたのは2020年です。外出規制された多くの人たちがSNSにエンターテイメントを求めるしかなくなり、Instagramは想像以上のスピードで広がりをみせたように感じます。それまで非対面で、ネット上で高額な商品をご購入いただくことにはそれ相応の時間と労力を費やしてきましたが、ある時期を境に意識と習慣が変わって非対面での物販が驚くほどすんなりと受け入れられるようになりました。

そして次なる挑戦は、日本ではまだその存在をほとんど知られていなかった、ラボで創られるエシカルな人工合成石『モアサナイト』という石のジュエリーブランド、RADIANNに価値を持たせることです。こうして非対面販売ビジネスを確立させつつあったのですが、個人がSNSで簡単にビジネスがスタートできるようになり、たくさんのご質問、ご相談もよせられるようになりました。有象無象が現れては消え、現れては消える個人商店たち。何事も始めるのはとても簡単です。

でも大切なのはHow to Win。Where to Win。どう勝つか。どこで勝つか。そして価値を持たせ、価格競争には巻き込まれず、ブランド価値を高め続けられるか。この「価値とはいったいなんなのか?」という目には見えないものをつくり上げることでした。そしてとんでもない事件は起こったのです。

続きは第2回で! 最後までお読みくださりありがとうございました。

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