商品の「今」を伝えるコピー
三島:そして、こちらのパナソニックも、女子高校生の気持ちが全面に出たコピーです。
女子高生に大ブーム!!
なーんて広告は、
やめてねっ。
ガスコテは口コミ商品なのにっ!
広告するなんて非常識だっ!
ガスコテのブーム化反対!
This is “ガスコテ” For Girl
(松下電器/コードレスヘアカーラー/1997年)
児島:この広告の商品名は「カールガール」で、通称「ガスコテ」と呼ばれているもの。ガス式のコテだからガスコテ。これは、ほぼ女子高生の鞄の中だけで生きている商品なんです。普通の人はほとんど使わないし、存在を知らない。特に男の人は、商品を見ても何の家電かわからないと思います。
完全にターゲットセグメントされている。今ならTikTokを使うと思いますが、当時は女子高生だけが読む雑誌など閉じた感じで広告していたのですが、このときはあえて山手線などで交通広告を展開したんです。
だから「ターゲットだけに伝える」のではなく、世の中に対して伝えた上で「女子高生の商品なんだから広告やめてね」と言う構造。そういうアプローチをすることでこの商品を際立たせたいと思いました。
女子高生は、コミュニティを大事にするじゃないですか。世の中に向けてばーっと商品を広げて、その中で「これは私たちだけのものなの」と宣言する、そういう面白さを目指しました。そのほうが、この商品のらしさを伝えられると思ったんです。広告を見た女の子たちには「そうだ!そうだ!」と思えるだろうし、ターゲットでない人たちには「こういうのが流行っているんだね」と思ってもらえる。
三島:同じ「カールガール」のコピーで言えば、「This is わからん人にはわからんぞ物体。」。これもすごい実験です。「This is」が効いています。
This is
わからん人にはわからんぞ物体。
(松下電器/ コードレスヘアカーラー/1997年)
児島:この辺りが、やっぱり広告をつくる楽しさですよね。とにかくアプローチを面白く考える。転んでも絶対にただでは起きない、普通にはやりたくないという気持ちがすごくあった時期ですね。それを続けたことで、結果的にコピーって自由なんだなと実感することができました。
三島:この広告はアプローチの面白さがありながら、商品のシズルをきちんと伝えていますよね。
児島:そう、これはシズルがすごく大事でした。広告には3人の女子高校生のイラストが入っていて、「クチコミ商品なのにっ!広告をするなんて」と怒っているのですが、そこがこの広告の一番のシズルになったなと思っています。
この商品の機能を伝えるのではなくて、この商品の「今」を伝えるということが大事なんだろうと思いました。こういう広告をやることによって、ブランドがちゃんと今に向き合って商品をつくっている、時代遅れじゃないと思われることも意識しましたね。
(第3回に続く)
