目的は常に“伝わる”こと 担当全員でベクトルを合わせ一丸となって取り組む都城市の広報

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、地方自治体のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のスキル形成について考えているのでしょうか。本コラムではリレー形式で、自身の考えをお話いただきます。都農町の松村直哉さんからの紹介で今回、登場するのは宮崎県都城市の恒吉 祐弥さんです。
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恒吉 祐弥氏

宮崎県都城市
総合政策部秘書広報課
広報戦略担当 副主幹

平成20年度に都城市役所に入庁。障害福祉課、保護課、保育課、財政課を経験し、令和4年度に秘書広報課に異動後、広聴担当を経て同5年度から広報戦略担当。都城市の広報コンクール受賞実績:令和3年~6年 宮崎県広報コンクール(市部)特選、令和5年全国広報コンクール(市部)入選、同6年入選2席。

Q1.現在の仕事内容について教えてください。

都城市総合政策部秘書広報課の恒吉祐弥と申します。

まず始めに、都城市を紹介します。

都城市は、宮崎県の南西部に位置し、鹿児島県と隣接する自然豊かな地域です。霧島連山の麓に広がる肥沃な大地と温暖な気候に恵まれ、畜産業が盛んで、日本一の生産量を誇る焼酎メーカーがあることから「肉と焼酎のふるさと」と呼ばれています。

島津氏ゆかりの歴史や文化が息づくまちでもあり、都城島津邸や都城歴史資料館などの史跡が点在しています。さらに、関之尾滝や母智丘公園など、美しい自然スポットも多く、観光資源に恵まれています。

近年は、ふるさと納税を対外的PRツールとして位置づけ、寄附額日本一を5回獲得。豊富な特産品と効果的なPR戦略により、多くの支持を集めています。豊かな食文化と自然や歴史が調和し、ふるさと納税でも注目を集める都城市は、多方面から魅力的なまちとして評価をいただいています。

次に仕事内容について紹介します。広報戦略担当では、1年目は広報紙づくり、2年目の現在はホームページやSNSの管理・運用などWEB業務をメインに担当しています。

Q2.貴組織における広報部門が管轄する仕事の領域について教えてください。

都城市の広報戦略担当の主な業務は、次のとおりです。

  • 広報紙作成…担当職員6人で記事を分担して作成。取材や写真撮影、原稿作成、レイアウト、デザインなど職員が担当。業者には印刷製本のみ委託
  • 報道対応…記者会見や取材申し込みの対応など。その他、月1回の市長定例記者会見有り
  • プレスリリース…市政情報を記者クラブへ
  • テレビやラジオ番組の制作…地上波テレビ週1回「幸せ上々みやこのじょう」(5分番組)、ケーブルテレビ月3回「みやこんじょジャーナル」(10分番組)、AMラジオ「みやこのじょうどきどきナビ」(15分番組)
  • 新聞広告…市政情報を主に、年数回広告を掲載
  • 広告審査…寄付型封筒や広報紙裏面、ホームページのバナーなどに掲載する広告の内容を審査
  • ホームページ運用…管理、運用業務
  • SNS運用…公式LINE、公式Facebook、公式YouTubeの配信業務 ※LINEは広報担当で集約して配信、Facebook及びYouTubeは各課配信
  • 広報研修…広報基礎研修のほか、ホームページやチラシ、プレスリリースの作り方などについて職員向けに研修会を実施
  • フォトギャラリーサイトの運用…令和7年4月公開に向けて準備中
  • ※ なお、他市町村では、シティプロモーションや広聴業務も広報担当の管轄する仕事に含まれていることが多いですが、都城市では他の部署か担当において実施しています。

写真 表紙 「広報都城」

平成18年1月1日合併による新「都城市」誕生に伴い第1号を発行した「広報都城」。
16年の歴史を刻み、令和4年8月号で創刊200号!

Q3. ご自身が大事にしている「自治体広報における実践の哲学」をお聞かせください。

都城市の広報業務が全国レベルで評価を得るようになったのは、ここ最近のことです。

その要因として、広報紙「広報都城」が2年連続全国広報コンクールで入選したこと、さらに、市公式LINEの友だち登録数が全国トップレベル(令和7年1月現在、約85,000人)であることなどが挙げられます。

広報紙については、副課長である橋口が“全国で賞を獲りにいく“ことを有言実行で成し遂げたことが大きいと思っています。

これまで、都城市は県のコンクールで入選することはあっても、全国入選は一度も果たせずにいました。そこで、①全国広報コンクール受賞常連自治体の広報紙やデザイン性の高い商業誌を研究、②日本広報協会主催のデザインセミナーに参加、③広報アドバイザーを招いての勉強会の実施、④県内外の自治体の広報担当者との勉強会の実施、⑤地元カメラマンを招いて撮影セミナーの実施など、本気で賞を得るための取り組みを続けました。これらを通じて、令和5年に全国広報コンクールで初入選を果たし、翌6年は全国入選2席を受賞することができました。入選2席に輝いた令和5年12月号の子育て特集では、子育て世帯が置かれている状況やそれらを支える団体などを多角的な視点から取り上げ「まち全体で行う子育て支援について表現できていた」と審査員から評価されました。

写真 表紙 全国広報コンクール広報紙

写真 誌面 全国広報コンクール広報紙

令和5年12月号の子育て特集は全国広報コンクール広報紙(市部)で過去最高となる入選2席を受賞。

特集では単に情報を伝えるだけでなく、市民の皆さんが地域の問題に関心を持ったり、行動を起こすきっかけになったりすることをコンセプトに記事を作成しています。このことは、前述の令和5年12月号だけでなく、過去4~5年の大型特集では全て共通しています。私も特集記事を作成する際には、メッセージが読者にいかに伝わるかに腐心しながら取り組んでいます。このことは公式LINEでも同じで、利用者が知りたい情報を迅速かつ的確に情報発信することを念頭に取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症の感染が拡大した時期は、ワクチン接種予約や接種会場の空き状況、接種証明に遷移するタブをLINEに設け、市民の皆さんのニーズに即した内容を届けることで、お友だち登録数も爆発的に増えました。

広報紙では、手に取って開けてもらわないとその中にある大切なメッセージが伝わらないので、表紙にも特に力を入れていますが、公式LINEも同様で投稿内容の見た目(ファーストインプレッション)は重要と考えています。長々とした文章は掲載せず、目を惹く写真やイラストなどを取り入れ、詳細な内容が掲載されているリンク先のホームページなどを閲覧してもらえるよう工夫しています。

また、ブロックにつながらないよう、次のような取り組みも実施しています。
・情報によって配信グループを変更する
・配信間隔を3時間は空ける
・プレゼント企画(不定期)

あらゆる媒体で広報を実施していますが、目的はいずれも「伝わる」こと。広報戦略担当全員でベクトルを合わせ一丸となって取り組んでいます。

写真 人物 令和6年全国広報コンクール授賞式にて

令和6年全国広報コンクール授賞式にて。左から恒吉、橋口副課長、吉田主査(国富町:同コンクール広報紙町村部入選3席)。

写真 誌面

まちなかの活性化に取り組む市地域プロジェクトマネージャーと地元高校生が連携して地域で途絶えてしまった紙漉き文化を再生するプロジェクトを特集(令和6年12月号)。

Q4.自治体ならではの広報の苦労する点、逆に自治体広報ならではのやりがいや可能性についてお聞かせください。

広報担当になるまでの私もそうだったのですが、まだまだ広報担当以外の職員は広報に対する意識が低い状況です。担当部署は一生懸命に事業を進めてはいるのですが、広報が足りないことから取り組み自体を知らないといったご意見をいただくこともあります。

広報の重要性に関する研修を毎年全職員に向けて実施はしていますが、まだまだ浸透していないのが現実です。

広報紙についているはがきやLINEから広報紙への意見などを投稿できる「読者のおたより」。毎月多くのおたよりを読者の皆さんからいただいています。中には、厳しい意見もいただくこともありますが、広報紙を読んでもらえているからこそであり、全てのご意見に感謝しています。

【次回のコラムの担当は?】

熊本県菊池市 政策企画部市長公室広報交流係の三代 烈也さんです。

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