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こんにちは。出版プロデューサーの西浦孝次です。この連載では、クリエイティブな才能に恵まれなかった僕ら凡人の最後の武器──企画力について、出版プロデューサーの仕事、キャリアを通じてお伝えしていきます。
前回『編集でもライターでもない、本の企画職「出版プロデューサー」』の記事で、僕がどういった経緯で出版プロデューサーとなったかお伝えしました。今回は、出版プロデューサーの仕事について具体的に書いていきます。
企画音痴を変えた最高の環境
企画ダメダメ人間だった僕ですが、出版プロデューサーとなったからには、自分で企画を立て、出版社に提案していかなければ仕事になりません。ですので、はじめて書いた企画書は「自分の力が通じるだろうか」と内心不安でした。だからでしょう、編集さんから「企画会議でOKでました」と連絡をもらった時は、嬉しいというより「ほっ」と胸をなでおろしたのを覚えています。
さて、全然ダメダメだったわりに、すんなり企画が認められたのはなぜでしょう。
それは、出版社のマーケティング部にいたことで「売れる企画のポイント」をつかめていたからです。当時の僕の仕事は「編集部から大量の企画についてプレゼンを受け、売り方を考えたり、改善点を指摘したりする」ことでした。
どれくらい「大量に」企画を見たかと言うと、「発売される担当書籍が年間400冊」くらいです。「ボツ」と判断される企画も含めると年間500~600冊の企画書を見ることができます。
しかもただ見るだけでなく、そのすべてについて「売り方」を考え、結果として「どれくらい売れたか、売れなかったか」を検証していくのです。最初のころは「売れる」と思った企画が売れなかったり、「こっちの方が良い」と思ったデザイン案が採用されなかったりと、企画音痴っぷりを発揮していました。そんな僕でも、これだけの「量稽古」を重ねれば、少しずつ「売れる企画のポイント」がわかるようになるものです。これは自分の企画力を磨くのに最高の環境でした。
このおかげで出版プロデューサーとなって数年経つころには「一つの企画につき2、3社に提案すれば、必ず通る」くらいになりました。むしろ企画が通るかどうかはほとんど気にしなくなり、その先の「良い本にできるか」「売れるかどうか」で勝負できるようになっていました。
著者は自分で探さない
ここからは「どのように著者を発掘し、企画を練りあげていくのか」を解説します。
どうやって著者を見つけるのか。僕は自分で著者を探すことはほとんどありません。いきなり「本を出版しませんか?」というオファーを受けたら自費出版の営業だと思われる可能性がありますし、何よりも「西浦のプロデュースで出版したい」という熱意ある方と一緒に本を作りたいじゃないですか。だから僕が探すのではなく、「ご紹介」か「相手に見つけてもらう」かのどちらかでご縁を繋いでいきます。
「紹介」は僕がプロデュースした著者からのご紹介です。やはり本が売れたり、話題にしたりして頂けると紹介も増えてくるので大変ありがたく、王道です。紹介で来てくれる方は、僕の仕事へのスタンスや、どれくらいの時間とお金がかかるかなど、詳しく訊いたうえで来てくれるので話もはやく進みます。
もう一つの「見つけてもらう」パターンは、検索やシェアをきっかけに僕のYouTube動画やオウンドメディアにたどり着き、コンタクトを取ってくださるケースです。こういったパターンの方が最近は多いです。
紹介だけだと、自分や紹介者と似たような人に偏りがちですから、「紹介」と「見つけてもらう」のと、二刀流が良いと思います。
ではここで、著者候補者さんとどのようなやり取りを行っているのか、特に最初のMTGの様子をお話しします。