売り場で話題の狼煙を上げ効果を拡大する、ドンキ流リテールメディアとは

2024年12月よりスタートした宣伝会議主催の「テーマ別研究会」。2025年1月22日には「リテールメディア研究会」がおこなわれ、pHmedia(ペーハーメディア)の奥田薫氏が登壇。ドン・キホーテの実店舗を起点とした、新しいリテールメディアの活用法について講演した。

オンオフを組み合わせた新たなリテールメディアを提案

ドン・キホーテとUNYを運営するPPIHと博報堂がタッグを組み、2023年に設立したpHmedia。PPIHが保有する購買データに博報堂のクリエイティブ力を掛け合わせ、消費者に対する最適なコミュニケーションを企画。投資効果の高いリテールメディアを提供し、消費者、メーカー宣伝部、メーカー営業部、小売業の「四方よし」を目指している。

pHmediaの広告商品は、実店舗の棚を活用したオフライン施策、電子マネーアプリ「majica(マジカ)」やSNSを活用したオンライン施策、1,600万人を超えるmajicaの会員データの活用施策と大きく3つある。また、実店舗ではアンケート調査をおこなっており、オン・オフメディアを組み合わせてさまざまな施策を提案している。今回の講演では、メーカーのブランディングと売上向上を同時に実現させた、新しいかたちのリテールメディア施策と活用事例を紹介した。

課題を打破する店頭起点のブランディング

近年、購買データを活用したオンライン広告や店舗のサイネージ広告など、コンビニエンスストアやスーパーマーケットを中心にリテールメディア市場拡大の機運が高まっている。しかし、営業活動の一環としてのみに利用されることが多く、奥田氏は「リテールメディアの価値が限定的になっていることに課題を感じていた」と明かす。

この課題を解決すべくpHmediaが取り組んでいるのが、実店舗に企画を付与して店頭起点のブランディングをおこなう、ブランデッド・エンターテイメントの創出だ。奥田氏は「ファーストパーティデータを活用して企画を立て、実店舗を発信源として話題の可視化やバズ・マス化につなげていく」と設計思想を語り、「リテールメディアが実現できる新しい取り組みのひとつだと定義している」と言葉に力を込めた。

フルファネルにフィードバックする狼煙型マーケティング

pHmediaでは、こういった取り組みを「狼煙型マーケティング」とネーミング。狼煙型マーケティングとは、簡単に言えばテストマーケティングであり、売れる・売れないが最もシビアに検証できる売り場で狼煙という勝ちパターン(企画)を作り、マーケティング領域にフィードバックしていくことだという。

この取り組みが実現できるのはドン・キホーテならでは。奥田氏は「お客さまは『ドキドキワクワクする』ことを求めて来店されるので、新商品やチャレンジ商品に対して期待を持たれている方が多い」と理由を語る。また売り場は「ドンキと言えば手描きポップ」という第三者目線の陳列や商品紹介ポップが特徴。「企画をおこなう環境が整っていることも、他ではできないことが実現できる要因である」と説いた。

データから仮説を実証し、コラボ企画が実現

ここで奥田氏は、カバヤ食品「タフグミ」の事例を紹介。グミと言えば柔らかいイメージがあるが、タフグミは「集中したい時に食べたいグミ№1」をコンセプトにした硬い噛み応えが特徴。「カバヤ食品さまは『カテゴリーエントリーポイントをどう増加させるか』を課題としていた」と振り返る。

きっかけは商談中に出た、「タフグミとエナジードリンクの相性の良さ」というキーワード。奥田氏は自社のSNSや購買データに基づき、タフグミと併売率が高い商品のひとつにエナジードリンクがあることを確認。そのデータをもとに「タフグミとエナジードリンクの親和性」という仮説を立てて棚提案を進行した。まずは10店舗のドン・キホーテにて、タフグミとサントリーのエナジードリンク「ゾーンエナジー」によるコラボ棚を展開。Xの公式アカウントへの投稿を通して潜在的なニーズを既成事実化させ、拡散の火種を作るというプロセスを踏んだという。

その結果、タフグミの売り上げは、施策の前後比較77%リフトと大幅にアップ。コラボしたゾーンエナジーの売り上げにもつながり、両社の新規顧客獲得にも大きく貢献した。「カバヤ食品さまからは『コラボの座組ができた』『売り場を保有できる』『テストマーケティングの実行とナレッジが得られる』ことが高く評価された」と、奥田氏は取り組みへの手応えを熱く語った。

内部での大きな変化があり新しい領域へのアプローチも

カバヤ食品の成果により、今まで「売上重視」だった自社の商品部の考え方も変わり、新規商品の投入にも前向きな気運となった。奥田氏は「ドン・キホーテの店頭に並んでいない商品開拓も進め、メーカーにアプローチをしている」と話す。また、「購買データからニーズのあるコラボブランドや企画を見つけ出す取り組みを増やし、商品価値をマーケット全体に拡大させるサポート施策も増やしていきたい」と言葉に力を込めた。

最後に奥田氏は、「ここ数年で、テレビ業界をはじめとして大きく変化を遂げている」とメディアの価値について触れ、「購買の熱の高いお客さまに対して直接トスができる場を、さまざまなサービスで提供可能なのがリテールメディアの特徴。メディアの選択肢のひとつとして、これからさらに注目されていくと感じている」と力強く語った。

今後目指すのは、宣伝・営業と同じ視点での取り組み

講演後の質疑応答では、博報堂とタッグを組むことへの経緯に関する質問が挙がった。奥田氏は「『情熱価格』というPBブランドのリブランドの際にコンサルタントとしてジョインしてもらったことがきっかけ」と振り返る。「リテールメディア事業をおこなううえで課題に感じていたのが、商品部を通じたコネクションでは販促の領域を超えられないということ。マーケティング部や宣伝部とプロジェクトを発足するためには、我々の知見ではできない部分があり、過去に課題解決を一緒に取り組んだ博報堂さんと組もうと決めた」と語った。

しかしまだ課題は多いそうで「四方よしを目指しているが、メーカーと販社が別となっている会社もあり、そういったところは個社との対応が必要」との対応策を挙げる。その一方で「メーカー側も変わってきていて、トレードマーケティング部やリテールメディア部など専門部署を作る会社が増えてきており、リテールメディアが注目されていることを肌で感じている」という明るい兆しがあることを伝えた。

今後pHmediaが目指すリテールメディアの在り方については、「広告事業としては、営業部や宣伝部の方と同じ視点で戦略のすり合わせをさせてもらいたい」と語る。「例えば、中長期で酒市場を増やしていくとなったら、アクションプランは変わってくる。それぞれが違うことをやるのではなく、同じことを同時期にやる。そういった戦略に一緒に取り組んでいければと思っている」と回答をした。

【「リテールメディア研究会」~次回開催予定のイベント~】

◆第2回:2025年2月12日(水) 16:15~17:30(開場 16:00)

・テーマ:消費者行動を捉え、新たな価値創出を目指す 
カルビーのリテールメディア活用戦略

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松永 遼 氏

カルビー株式会社
リテールサイエンス部 部長

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吉田 誉朋 氏

カルビー株式会社
リテールサイエンス部

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◆カンファレンス:2025年3月24日(月)13:00~18:00(開場 12:30))

・テーマ:資生堂が目指す リテールメディアで実現するLTV向上戦略

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小暮 亮祐 氏

資生堂ジャパン株式会社
エイジングケア

・テーマ:ファイントゥデイが語る マーケ視点の組織イチガンリテールメディア活用術

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益川 竜介 氏

株式会社ファイントゥデイ
日本事業本部 ブランドマーケティング部 ヴァイスプレジデント

・テーマ:イオンリテールのリテールメディア最前線

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田中 香織 氏

イオンリテール株式会社
デジタル企画部長

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