言葉のプロフェッショナルが語る「身体に響くコピー」の作り方

コピーライターの橋口幸生氏(電通)と言語学者の小野正弘氏(明治大学文学部 教授)による対談が実現。シズル感のある言葉をテーマに、感覚に直接届く言葉について伺いました。
 
「オノマトペ(擬音語・擬態語)」を研究する小野氏は、言葉が持つ力とその効果について解説。一方、近年はオノマトペを使った広告が減少していると話す橋口氏。両氏が「言葉」という視点から、表現の現在と未来を語り合いました。

コピーライターは「翻訳家」。抽象を具体に変える

橋口氏は、コピーライターの仕事を「翻訳家」に例える。企業の商品開発会議では「感覚刺激」「知覚刺激」といった抽象的な言葉が飛び交うが、それをそのまま消費者に伝えても理解されない。そこで、会議室で決まった抽象的な言葉を、人々の肌感覚のある、つまりシズルのある具体的な表現に「翻訳」することがコピーライターの役割だという。

小野氏によれば、日本語のオノマトペには強い「象徴性」があるという。例えば「ツルツル」「サラサラ」といった言葉には、滑らかさや爽やかさのイメージが直結している。また、本来はマイナスな印象を持つ「ガツガツ」「ガリガリ」といった言葉が、豪快さや痛快さを表現するプラスの意味に転じる「絶対値のプラス転化」をすることもあるという。「ガリガリくん」という商品名は、この言語現象を巧みに活用した例だと指摘する。

そのうえで、橋口氏は現在の広告について「オノマトペ冬の時代」と危機感を抱く。近年では、「満足度100%」「9割が実感」といった企業の調査結果をそのまま使用するコピーが増加。一方で、人の身体感覚に直接響くような表現は減少傾向にある。その背景には、広告制作過程における徹底的な調査の実施があり、その過程で直感的な表現が削られていくという。

新しい言葉とコピーライティング

社会の変化と共に、新しい言葉の生まれ方も変化している。かつては漫画から生まれることが多かった流行語が、現在ではSNSから生まれることが主流に。昨年大流行した「Bling-Bang-Bang-Born」のような言葉は、まさにその典型だと橋口氏は指摘する。そんな中で、橋口氏が目指すのは「身体感覚のある言葉」を書くことだといい、理屈ではなく、見た人の身体感覚に響くコピーの重要性を説く。

最後に橋口氏は、言葉を扱う人に求められる資質として、「自分らしいオリジナルな言い方を見つける」ことを挙げた。SNSの普及により、誰もが気軽に言葉を発信できる時代。既存の表現をそのまま使うのではなく、自分なりの言葉で表現することが、豊かな言語生活につながるという。

――本対談の全編は、宣伝会議公式YouTubeにて公開中です。是非ご覧ください。

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