電通が考えるデザインの進化とこれから

グローバルに拡大を続けるエージェンシーである電通。その電通のデザインのすべてを学べる「Dentsu Hands and Heads」が開講。本講座で講師を務める八木義博氏、南木隆助氏、小柳祐介氏にインタビューを実施。第3回は、3名それぞれが考える、新しい価値を生み出すために必要なこととは何かをお話しいただきました。

頭と手を同時に動かしながら、新たな価値を探っていく

━━デザインを生み出すプロセスについてお伺いしたいです。

南木:僕は「この人の言っていることってこうだよね」と割と早々に結論を出したくなってしまうんですけど、八木さんにはよく「早くまとめすぎ」とか「もうちょっともがいた方がいいよ」といわれます(笑)。

確かにパッとまとめるスピード感の良さって、プロジェクトの推進のしやすさという意味ではある種正解ではあるんですが、長期的に見たときにもたないかもしれない。結構もがいてアイデアを出すことで、強度が増すと最近は思っています。デザインをやっていると、オーダーはこれだからゴールはこの辺だなと見えるときがあるじゃないですか?その際、それをA案として、全然違うC案、D案、もうX案ぐらいの飛ばしたやつを一回考えてみようかみたいな。飛ばしてみるとA案とX案の間にも答えがあるような気がしていて、その分岐する面白さを感じています。

八木:これが正解と決めて次に行ってしまうと、その中でしか考えないと思うし、もっといい案があるかもしれないという欲があるから、正直あんまり決めたくないんですよね(笑)。

小柳:僕もカンプをロジカルに細かく書くタイプだったんですけど、初めて八木さんと仕事をしたときに、お題に対してモチーフになりうる資料を集めて、それで持ち寄ろうと言われたんです。資料をテーブルいっぱいに並べて、どこら辺のイメージがいいかみたいなことを探るやり方がすごく衝撃的でした。ロジックを超えて、コンセプトに合わせたものを探し、それをさらに頭で考えながら分けていく作業が、まさに今回の「Hands and Heads」だなと。

僕が学生の時にやっていた、落書きして、それの何がいいのかというのを頭で考えて、それをまた絵にしてみたりとか……。当時やっていたことにかなり近いというか、根源的にものを作ろうとした時の形に戻してもらった感覚があります。

すごく昔から決まっている広告のロゴ位置とか、大体こういう商品はこう見せるよねということではなく、クリエイティブとしてちゃんと伝わるものをどう作るか思考できた方がいいんだなと、改めて思いました。

八木:そもそもイノベーションが起きる原理で考えてみると、土壌があって初めてつながるはずのなかったものがつながり、新しい価値が生まれるのだと思うんです。僕らがやっている表現というのは、プチイノベーション。いろんなアイテムがあることで、誰も予想できないつながりが生まれるんです。

技術やアイデアの組み合わせが、デザインの幅を広げる

━━デザインとテクノロジーを組み合わせることで、どのように新しい表現や価値が生まれると考えていますか?

小柳:デザインが、ブランドや商品を、もともとの姿や本来見えてほしい姿に戻してあげることだとすると、テクノロジーによって使える絵の具の幅が広がるイメージですね。デザインにおいて幅広くプレゼンテーションできるようになります。

また、テクノロジーという専門性があることで、例えばポスターやCM一つとっても、それを改めてなぜこの媒体なのか、なぜこのキャンペーンなのか、ブランドがなるべき姿やそれを叶えるための手段として正しいのかを改めて考えるようになりました。専門性があることによって逆に、初心に帰って来れるというか。

我々が扱っているのはあくまで広告の中のテクノロジーなので、最新じゃなくても思いを届けやすいテクノロジーであることの方が重要なんですよね。テクノロジーによって、使える手札は増えると思います。

━━空間デザインでは、グラフィックデザインと連携させる際、どのようなことに気を付けていますか?

南木:僕、もともとはストラテジーの部署出身で、割とロジックを重ねるタイプだと思うんです。理屈っぽいというか。ただ、デザインする際にはその理屈の部分を超えないといけない、いかに矛盾を超えるか、ジャンプできるかがデザインの役割だと思います。

ロジックの先にあるものをそのままデザインにしてしまうとめちゃくちゃつまらない。ただ、ロジックを無視したデザインもそれはそれでつまらないと思っているので……。デザインとはつまり、美しいジャンプだと思います。ウルトラCみたいなジャンプ、捻り、ひねり、回転してきれいに着地するみたいな。

建築や空間って広告やブランディングにおいては異質だと思うんですよね。そういう異物があることでグラフィックがさらに面白くなったり、逆にグラフィック的なアイデアによって空間が面白くなるというのは、すごくいいアプローチになり得るのではないかと思います。

空間をデザインした後に、サインやロゴなどのデザインをしてもらい、さらにそれを踏まえて再度空間デザインを変えることもあります。そのプロセスを踏むことで、実際にデザインがどんどん良くなっている感じがします。

八木:色々な意見を取り入れてプロセスを踏むというのは、電通の強みでもあります。建築やテクノロジーはもちろん、ピュアなグラフィックをやってる人やCMをやってる人もいて。異種格闘技みたいな、なかなか面白い現場だと思います。

小柳:海水と淡水が交わる場所を「汽水域」と言うんですが、突然変異が一番起こりやすい場所だそうです。多種多様な人のアイデアが交わる場所としての会が開かれたなら、最終的に参加された方々は超人になってるんじゃないでしょうか?(笑)

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八木 義博

電通
エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター

ブランドとユーザーとの接点であるアウトプットを重視したDriven by Design型クリエーティブディレクションで、ビジネスコンサルティングから、企業ブランディングなど、ノンバーバルなコミュニケーションを展開。
カンヌでは2度のグランプリ、その他アワードでも多数のグランプリを受賞し、カンヌ審査委員長経験や国際キーノート講演経験多数。

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南木隆助

電通
チーフアーキテクト/クリエイティブディレクター

空間設計(展覧会、オフィス、店舗、建築)、ブランディング(伝統文化、都市)、商品開発(企画、プロダクトデザイン)を手掛ける。空間や建築と、コミュニケーションやブランド作りを融合させ、新しい体験を作り出すことを目指している。最近の主な実績:YEBISU BREWERY TOKYO設計チーフ、パリ ギメ国立美術館 魯山人展 設計/企画、グリコ「Pocky THE GIFT」店舗設計など。

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小柳祐介

Dentsu Lab Tokyo Head of Design
アートディレクター

1982年東京生まれ、東京藝術大学大学院デザイン専攻修了。在学中から映像作家として活動し、電通に入社。現在zero局所属。Dentsu Lab TokyoのHead of Designを務める。新聞、CMなどのトラディショナルな広告領域からテクノロジー領域まで垣根なくブランディング、ディレクションすることを得意とする。

イメージ バナー Dentsu Hands and Heads

<Dentsu Hands and Heads 講座概要>
◯開講日:2025年3月25日(火)19:00~21:00
◯講義回数:全8回
◯開催形式:教室とオンラインを各回自由選択できるハイブリッド開催
◯詳細・お申込はこちらから

第0回 無料体験講座のアーカイブも期間限定で公開中!視聴はこちら

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