CASIO、国内外2000人以上の社員の声を集めた「パーパス策定」の裏側

時代が変化する中でも、創業当時から大切にしてきた経営理念「創造 貢献」を実現し続けるため、2024年にパーパスを策定したカシオ計算機(CASIO)。どのように社員を巻き込んでいったのか。
※本稿は広報会議2025年4月号を転載しています

創業者が小型純電気式計算機を発明して以降、CASIOでは時計、電子楽器、電子辞書など、斬新な働きを持った製品を生み出すことで、人々の生活を助け、社会を進歩させてきた。こうした考え方は同社の「創造 貢献」という経営理念に表れている。

だが時代が変化するにつれ「創造 貢献」だけでは「何をつくったらいいか」が見えにくくもなっていた。「商品・サービスをつくったその先でどのような社会にしていきたいのか?」未来志向で自社の存在意義を問い直すため、2023年8月よりパーパスとバリューズを策定するプロジェクトを開始。2024年6月に社内発表し共通理解を深めた上で、同年11月に社外発表している。

実データ グラフィック CASIOパーパス

実データ グラフィック CASIOパーパス

策定した「パーパス」と「バリューズ」をポスターとして社内に掲出。「このパーパスから、ひとりひとりが変わっていこう。」「今日を超える歓びがあふれる毎日を、社会を、生みだし続けよう。」と呼びかけるメッセージも加え、「自分たちの延長線上に、パーパスがある」と感じられるようにした。

パーパスプロジェクトには、営業、マーケティング、開発、経営企画、人事、コミュニケーション(宣伝・広報)など、ほぼ全部門のメンバーが参画した。その中核を担ったのは、各部門の架け橋となり、社内発信にも長けているコミュニケーションデザイン部。パーパス策定にあたっては、ワークショップなどを通じて国内外の2000人以上の社員の声を集約した。

プロジェクトを率いた同部の小野洋子氏は、次のように話す。

「CASIOには長い歴史を紡いできた事実があります。CASIOの存在意義は、社員を含むステークホルダーの中に必ずあります。それを“発見する”のがパーパス策定のプロジェクトだという認識を持っていました。これまでの実績や現場のリアリティを無視したパーパスではわざとらしく不自然で、誰の賛同も得られません。立場の異なる様々な視点の意見を集めてパーパスの源泉にしていきました」。

同社はパーパスブランディングを支援するSMOと組み、パーパス策定のプロジェクトを次のようなステップで進めていった。

まず2024年1月~2月頃、有志の社員を募り、2種類の「ワーク」を行っている。1つが自主ワークで、「意見抽出ワークキット」を用い、「企業の強み」「ステークホルダーのニーズ」などを記入できるようにした。もう1つが対面で行うリアルの「ワークショップ」。これは全3回実施している。これらのワークを通じて、「驚きのあるものを届けたい」「親しみやすい存在でありたい」といった社員が抱いている思いや、「独自性がある」「ユニーク」「品質にこだわっている」などの同社の強みを集めていった。

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