住みやすい福井に向け、県民の意識改革促す
福井新聞社が主催するコピー賞「one womanアワード」(宣伝会議協力)の最終審査会が3月25日に東京都内で実施され、翌26日付の福井新聞紙上で受賞者が発表された。
「one womanアワード」は、福井県内に住む一人ひとりの女性が自分らしく生きることができ、女性のさまざまな生き方を誰もが認められる地域づくりを目指して、福井新聞社が立ち上げた「one woman」PROJECT」の一環として開催された。
都道府県別の幸福度ランキングで、たびたび1位に選ばれる福井県。2024年3月に北陸新幹線が金沢駅から敦賀駅まで延伸開業し、県内各地への経済効果に期待が広がっている。こうした可能性の半面、若年層、特に女性の県外転出が課題とされてきた。同社はその解決策の一つとして、多様な価値観を受け入れる県民の意識改革が必要と考えた。
審査風景(3月25日、都内)
アワードの課題は、「女性がもっと等身大で、自分らしく生きられる福井になるために、様々な生き方や価値観を認め合えるような地域につながるキャッチコピー」とした。
募集は全国から、昨年12月25日から今年2月20日まで実施。審査員には、コピーライター/クリエイティブディレクターの三井明子氏、エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター/シティ・アクティベーターの三寺雅人氏、神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 教授/福井県立大学名誉教授の塚本利幸氏が名を連ねた。
「ごめんなさい、私の人生が待ってますので。」
集まった作品は、6001点。その中から、1次審査、2次審査を経て、最終審査会で最優秀賞1点、優秀賞3点、入選16点を選出した。
最優秀賞に選ばれたのは、森山靖さんの『ごめんなさい、私の人生が待ってますので。』。審査員3人から評価され、満場一致で選出された。優秀賞には、重森有気さんの『男だから、女だから。だからなんだと、福井は言います。』、宵っぱりさんの『福井は、幸せの発掘現場になりたい。』、山元彩さんの『我が子に思う「あなたの好きなように生きなさい」を、自分にも。』が選ばれた。
各賞の受賞者コメントは次の通り。
最優秀賞
『ごめんなさい、私の人生が待ってますので。』
森山靖さん(東京)
受賞者コメント:
しなやかな女性の姿を表現
古い価値観や決めつけといった壁をさらりと軽やかに超えていく。そんなしなやかさをもつ女性の姿を表現しました。一歩踏み出した先に待つ自分らしい人生に、ワクワクを感じてもらえたらうれしいです。
優秀賞
『男だから、女だから。だからなんだと、福井は言います。』
重森有気さん(埼玉)
受賞者コメント:
思い込みで可能性を狭めないという思いを訴求
「性別への思い込み」は、大人だけではなく、大人を見て育つ子どもにも植え付けられています。「男だから/女だから」という思い込みで、ひとの可能性を狭めない。そんな福井になりますように!
『福井は、幸せの発掘現場になりたい。』
宵っぱりさん(広島)
受賞者コメント:
福井の魅力は「発掘力」にある
地域社会に生きる女性の幸せ。その実現に向けて取り組む福井の姿を作品化した。福井といえば発掘力。イメージする言葉を掛けて、福井こそが問題意識を掘り下げ、幸せの発掘現場になるのだという強い意志をこめた。
『我が子に思う「あなたの好きなように生きなさい」を、自分にも。』
山元彩さん(東京)
受賞者コメント:
説得力ある言葉で女性の背中を押したい
説教くさい言葉にはしたくない。だけど、心から「そうだよな」と思えるような説得力のある言葉にはしたい。そんな思いでこのコピーを書きました。少しでも女性の背中を押すきっかけになったら嬉しいです。
審査員に聞く
話し言葉で共感を呼ぶコピーが最優秀に
三井明子氏(三井グループ コピーライター/クリエイティブディレクター)
最優秀賞に選ばれた作品はとても秀逸で、話し言葉のキャッチコピーでこれだけ共感を呼べるということが、とても魅力的だと感じました。福井に限る内容ではありませんが、これを見た福井の女性はきっと背中を押されると思いますし、他県の方にも共感を持っていただけるのではないでしょうか。
優秀賞もそれぞれ素敵なものでした。今後、こうしたコピーがどのように世の中に出ていき、どのように皆さんの背中を押せるかということがとても楽しみです。6000通という多くの応募があったことからも、このアワードのテーマそのものに世の中の関心が高いと感じます。「one woman」という素晴らしい取り組みをきっかけに、福井県がそうした意識を高く持ち、全国をリードしていく県になっていったらうれしいですね。
残ったのは、意識が変わる部分まで踏み込んだコピー
三寺雅人氏(FACT エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター/シティ・アクティベーター)
最優秀賞の作品は、言葉の文体はもちろん、中身もすばらしいと感じました。福井の女性を主人公に、彼女らが実際に一歩を踏み出しているイメージを表現しながら、人にもその気づきを与えています。一方的に伝えるのではなく、そこに読み手が感情移入して、その言葉を強烈に受け取ることができる力がありました。特に「待ってますので」という表現が、福井の奥ゆかしい女性をイメージさせます。そうした女性像が変わりつつあるぞ、変われるぞというメッセージで、多くの福井の方々に希望を与える内容になっているのではないでしょうか。
優秀賞の作品も、価値観を変えていくような発見があると感じます。「幸せの発掘現場」といったキーフレーズも入っていますので、そうした言葉が種となって、意識も広がっていけばいいなと思います。
一方で、審査の中では、“言っているようで言っていない”コピーがいくつかありました。良いことを言っているけれど、果たして本当にリアリティがあるのか、その言葉を聞くことで人の意識が変わるのか、きれいごとになってはいないか。最終的には、意識が変わるという部分に踏み込めているコピーが残ったのかなと思います。
「one woman」という取り組み自体がすばらしいものなので、ぜひ別の形でもどんどん発展させいただき、私も福井が日本をリードしていけるように応援していきたいです。
地域全体で男女の役割分担を見直す一つのきっかけに
塚本利幸氏(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 教授/福井県立大学名誉教授)
どのコピーも、福井の現状を反映していて、興味深く審査しました。私が福井にやってきたのは25年前ですが、福井は女性の職場進出が全国に先駆けて進んでおり、当時から共働きが当たり前の県でした。
現在でも、女性の就業と、結婚や出産、育児の両立がしやすい県であることを発信していますが、一方では、女性の管理職比率が全国でもワーストに近いという問題もあります。女性は働いていて当たり前だけれど、家事も育児も介護もやって当たり前という多重負担が女性の肩にずっしりとのしかかっているので、その上さらに管理職を目指そうというモチベーションが維持できない、あるいは頼まれても引き受けられないのです。
そうした現状を変えていくには、女性だけでなく男性や高齢者、職場の上司など、あらゆる人の意識が変わっていく必要があります。それによって、男性の生き方にも選択肢が広がり、より生きやすくなっていくと考えています。選ばれた作品は、地域全体で性別役割分担などを見直す一つのきっかけになるようなフレーズが切り取られているようなものが多いと感じたので、そうなってもらえるとうれしく思います。
お問い合せ
福井新聞社
one womanプロジェクトチーム(福井新聞社営業事業局内)
住所:〒910-8552 福井県福井市大和田2丁目801番地
URL:https://onewoman.jp/
