Amazonが提供するライブ配信サービス「Twitch」を利用したゲーム配信分野が、着実に成長している。Twitchは、視聴者の70%近くを18~34歳の若年層が占めていることが特徴。Twitch で配信される広告の視聴率は 90%で、ソーシャルメディアの 77%を上回るなど(※)、広告が受け入れられやすい環境にあるといえそうだ。
Twitchの広告ソリューションである「Twitch ads」は、あらゆる業界や企業規模、ブランド用途に対応するソリューションとして活用が広がっている。実際にTwitch adsを活用しているアニメタイムズおよび三和酒類の担当者が、その内容や成果について語った。
※ 2022 年 12 月から 2024 年 11 月 にかけてAU、FR、DE、JP、UK、US、ES、IT、TR、KSA、DK、SE、FI の各地域で実施された調査。総サンプル数は 7150。
ゲームとアニメの親和性で会員を伸ばす
アニメタイムズは、ファミリー向けの王道アニメからコアなアニメ、最新アニメまで幅広い作品を取り揃えるアニメ専門の配信サービスだ。Amazonアカウントがあれば月額437円(税込)で利用することができ、会員数は2021年のサービス開始以来、右肩上がりで堅調に推移している。
加入促進のプロモーションは、Amazonのお客様 全般を対象として、「Fire TV」や「Prime Video」などAmazonが提供するサービスに広告を出稿してきた。そうした中で、Amazon AdsからTwitchを活用した広告ソリューションも活用してみてはどうかという提案を受けたという。Twitchの視聴者は若年層の男性が多く 、ゲームのみならずエンターテインメント全般への興味関心が非常に高くて、他の動画配信サービスへの登録率も高い傾向にあるというのが、提案の理由だ。
アニメタイムズは幅広い層に視聴されているアニメ配信サービス(同社Webサイトより)
Twitch adsの利用に踏み切った理由について、アニメタイムズ社宣伝室ゼネラルプロモーターの菊地春佳氏は、「従来は大人から子どもまで幅広い世代をターゲットにした広告が多かったため、ターゲットを絞って広告を打てばどのような効果が得られるのかを試してみたいと考えました」と語る。また、ゲームファンとアニメファンの親和性が高いと感じていたことや、これまで多くの広告を出稿してきたFire TVとTwitchの利用者層の重複が少ないことも背中を押した要因だという。
アニメタイムズ 宣伝室 ゼネラルプロモーター 菊地春佳氏
初めに、昨年3月末から1カ月ほど動画広告を実施。その後、7月にインフルエンサーによるライブ配信も行った。
動画広告は、Twitchで行われるライブ配信に組み込まれる形で配信される。アニメタイムズでは既存のプロモーション動画をそのまま用いて配信したが、結果は非常に良好で、アニメタイムズの登録者数が向上したという。
インフルエンサーによるアニメ解説が好評
インフルエンサー配信は、アニメタイムズが定期的に開催している登録キャンペーンの時期に合わせて実施。Twitchのインフルエンサーの中からブランドに合った人を選定して、懐かしいゲームをプレイしながら懐かしいアニメ作品について語り、アニメタイムズを紹介するという内容を企画した。
「一視聴者として配信を見ましたが、インフルエンサーがアニメタイムズのサービスやUIを紹介している間も非常に温かいコメントが流れていて、『この作品知ってる』『こんな作品もあるんだ』と盛り上がっていることが印象的でした。広告メディアとしても、インフルエンサーの方も、非常にマッチングしたと感じています」(菊地氏)
配信時間は2時間だった。アニメタイムズではどの作品に興味を持って登録したのかを計測できるようになっており、インフルエンサーが配信で言及した作品全体を通じた登録数は、登録キャンペーンの前と比較して1.64倍に。また、インフルエンサーが特に熱を持って取り上げた作品による登録数は特に大きく伸長し、キャンペーン前に比べ6.26倍まで跳ね上がった。
「今後は、広告配信先のメディア利用者に寄り添ったコンテンツを制作することによって、よりその効果を最大化できるのではないかと考えています」(菊地氏)
若年層つかむTwitch adsでブランドの思想を訴求
三和酒類は、2023年9月からTwitch adsを活用し、本格麦焼酎「いいちこ」の広告を展開している。
「下町のナポレオン」の愛称でも知られる「いいちこ」は、1979年の発売から月日の経過とともに、メインの購買層が高年齢化。そうした中で、幅広い世代にタッチポイントをつくりたいと考え、2014年にAmazonを通じたEC販売を開始した。
ECを始めるにあたり Amazonを選択したのは、お客様 の属性や興味関心といったデータがしっかり可視化できることが理由だ。インサイト分析を行った結果、若い世代へのアプローチを目的にAmazonのストア内での広告出稿を始めた。
いいちこなどの焼酎を生産する日田蒸留所(大分県日田市)
創業以来、九州・大分を拠点に事業展開してきた三和酒類は、大分の風土や自然、文化、人などを大事にしながら酒造りを行っている。長らくポスターやテレビ、雑誌を中心に展開してきた広告においても、短期的な購買訴求を狙うのではなく、日本の原風景をテーマにしたクリエイティブで郷愁や共感をお酒の味わいとともに伝えることに重きを置いてきた。
Amazonの広告でも、静止画で同様の訴求を実施してきたが、反応があったのは従来の利用者層だった。そこで提案を受けたのが、Twitch adsだ。執行役員の幡手剛氏は次にように語る。
購買訴求に偏らない広告に驚きの反応
「Twitchには、嗜好性が高く、若い人たちが集まっていると聞き、新しいお客様に出会える可能性が高いことに魅力を感じました。また、当社の広告の本質はそのままにしながらも、そうした人たちに共鳴する動画をつくることで、おもしろい反応が得られるのではないかという期待もありました。そこで、あえていいちこの従来イメージと異なるクリエイティブをつくり込んで配信してみることにしました」
三和酒類 執行役員 コミュニケーションデザイン室 本部長 幡手剛 氏
Twitchでは、四半期に一度、2カ月程度の広告配信を実施。お客様の興味関心に合わせてクリエイティブをブラッシュアップしながら、動画広告やスポンサーシップなどを継続的に活用している。
「出稿量に対して、驚くほどの反応がありました。広告を見た方から、当社のお客様相談室宛てに『あの動画で流れた音楽の曲名が知りたい』といった問い合わせや、『安らぎを感じた』というコメントが寄せられたほどです」(幡手氏)
Twitchで展開した「いいちこ」の広告
デジタル広告を目にして、わざわざ窓口を調べて問い合わせるといったケースは他にあまり類を見ない。そうした背景を、幡手氏は次のように分析する。
「世の中には購買を促進する広告が溢れていますが、当社の広告は『これは結局何だったのか』という不思議な感覚をもたらします。そして何だか印象に残って、気になって、検索をする。Amazonの分析ツールで利用者分析を行うと、まさにマーケティングの教科書で見られるような状況が確認できるんです」
今後も三和酒類は、直接的に商品や購買を訴求するのではなく、ブランドの思想を通してお酒の良さやブランドへの共感を訴求していくという。
「今後もTwitchをはじめとするAmazonの広告ソリューションを活用することで、お客様の反応や成果を可視化しながらクリエイティブの改良を続け、ブランドイメージをつくっていけたらと思っています」(幡手氏)
