愛情を注げる一方、視野は狭くなる
花王とLIFULL(ライフル)は5月23日、「IN-HOUSE CREATIVE SESSION」と題したイベントを開催した。
両社のクリエイティブ部門の社員を対象にしたイベントで、パネルディスカッション「インハウスクリエイティブの現在と未来」にはLIFULLから川嵜鋼平氏(執行役員CCO/LIFULL HOME’S事業本部副本部長CMO/LIFULL senior 取締役)、遠山佳子氏(クリエイティブ本部PRユニット長)、花王から片平直人氏(作成センター長)、簑部敏彦氏(作成センター 第1ブランドクリエイティブ部長)が登壇した。モデレーターはLIFULLの7年目の上垣氏、花王の2年目の高山氏で、若手からの質問にベテラン陣が答える形で進行した。
はじめに川嵜氏から「海外ではインハウスクリエイティブ組織を評価するIn-house Agency of the Year(One Asia Creative Awards)やBrand-Side Agency of the Year(The One Show)があるなど盛り上がりを見せており、日本も同様に盛り上げていきたい」と今回イベントが開催された目的が示された。また花王はインハウス組織ができて約100年、一方でLIFULLは9年と差があり、組織体制にも大きな違いがある。異業種交流を進めて、課題を分かち合う場としていきたいと、意気込みが語られた。
片平氏と簑部氏の2人は新卒で花王に入社しキャリアを重ねてきたが、川嵜氏と遠山氏はLIFULLに中途入社と対照的だ。転職の際に広告代理店も視野に入れた自身の経験に重ねて「インハウスのほうがビジョンと事業が紐づいていて、やりがいを感じられた」と遠山氏は語った。一方でやりがいと課題は表裏一体で、インハウスだと自社事業に深く向き合うため視野が狭くなってしまう。だからこそ自分の外に視点を得ていくことが重要だと説いた。
簑部氏も「自分の担当の商品に100%の愛情を注げる。店頭に並んだときの感動は忘れがたい」と熱く語った。これに対してモデレーターの若手から自社愛が強すぎると客観視できないのではと質問が飛び、「担当商品をたとえばティッシュペーパーだと思うようにしている。つまり自社製品でなければ意識することのほとんどない、日常にありふれたものと思い込むように気持ちを切り替える」とアドバイスを送った。