※本記事では5月30日発売、『広報会議』2025年7月号の特集企画「オウンドメディア&コーポレートサイトリニューアル 徹底活用」に掲載している記事の一部をお届けします。
ヤマハ発動機は2024年1月にオウンドメディア「HATSUDO」を立ち上げた。10代~30代前半の“ヤマハ発動機を知らない”若年層を主なターゲットとして、日常にあふれる「心ときめく」モノ・コトの紹介や、「新しい経験」を後押しする情報を紹介するメディアとして展開。ウェブサイトに加え、公式Instagramも運営している。
若者の約半数がオートバイを知らない時代
「HATSUDO」の設立は、国内における二輪車市場の現状と、それに伴いヤマハブランドが感じていた課題を起点としている。
オートバイなどを中心とした輸送用機器メーカーであるヤマハ発動機。同社は売上の9割強を海外市場が占めており、グローバルで成長を続けている。一方で、国内二輪車市場は1980年代をピークに縮小傾向に。特に市場の大きなシェアを占めていた原付一種の出荷台数は、2000年から2024年で約5分の1にまで減少している。また、同社が毎年国内の2000~3000人を対象に実施している調査によると、「オートバイ(スクーター含む)のメーカーと聞いて思い浮かべるメーカーは?」という問いへの回答において、「無い/分からない」「オートバイを販売していないメーカーの名前を誤認して回答」の数が増加。特に10代~30代にこの傾向が強く、2024年の調査では、10代、20代の約半数がオートバイメーカーの名前を挙げられないという結果となっていた。この結果から、若年層に対するコミュニケーションの必要性を感じたという。
若年層のオートバイ離れの要因として同社は、「物、情報が溢れていることによる生活者の興味領域の変化」「ジェンダー意識の変化」「ライフスタイルの変化」が挙げられると考察。これらの変化に対応して、現在の価値観、現在の若年層に合うようなアプローチが必要だと考えた。
「売上だけでなく、採用の観点でも若年層からのブランド認知は重要だととらえています。これまでにも当社は、若年層に人気のあるコンテンツとのコラボレーションなど、さまざまな施策を実施してきました。しかし、一時的な盛り上がりをみせる一方、継続的な関係構築には至りませんでした。若年層との長期的な接点を築きたいと考え、着目したのがオウンドメディアでした」とコーポレートコミュニケーション部 広報グループの岩崎慎氏は話す。
あえてヤマハ以外を記事に
オートバイをはじめとする乗り物を長年製造している同社は、「乗り物をつくる会社だからこそ、外に出ると、日常の中に素敵な発見があること、その発見を通して新しい自分に出会えることを伝えたい」という思いを持っている。「HATSUDO」もこの思いのもと、「身近な日常のなかにある新たな発見や、新たな自分との出会いの可能性を紹介すること」を目的に運営している。
「立ち上げにあたって外部パートナーと企画を進めるなかで、『ヤマハ発動機の製品をどの程度押し出すか』という点は特に議論を重ねました。ブランド認知は獲得したいものの、製品などを前面に押し出すことで、現在の若年層の価値観から遠のいてしまうことが懸念でした。そのため、現在は5つある記事カテゴリの中で『ぼくらのエンジン』でのみヤマハ発動機の取り組みを紹介し、他のカテゴリではほとんどブランドには触れていません。この塩梅については今後も検討を重ねていければと考えています」と岩崎氏。
「HATSUDO」は、「トキメキポスト」「10MOMENT」「初めての始まり。」「発動HUNT」「ぼくらのエンジン」の5つのコーナーで始動。外部パートナーから提案された「ときめき」というキーワードを軸に、インフルエンサーの取材やクリエイター寄稿記事などを中心に掲載し、「日常の中での心のときめき」のきっかけを提供している。
Instagram×ウェブの理由
運営において、外部パートナーとの打ち合わせを隔週で実施。進捗確認と記事の反響を踏まえた企画検討、取材対象者や方向性のすり合わせを行っている。取材や記事作成は外部パートナーが担当し、社内チェック後に公開する体制をとっている。
また、公式Instagramでは「HATSUDO」の更新情報やサイトの世界観と連動したInstagram独自のコンテンツを投稿している。
――本記事の続きは5月30日発売の『広報会議』2025年7月号に掲載しています。

広報会議2025年7月号
「オウンドメディア徹底活用&コーポレートサイトリニューアル」特集
CONTENTS
【CASE】
若年層の約半数がバイクメーカーを知らない時代
ヤマハ発動機の「ブランドを語らない」メディア
サステナブルな考え、半歩先の未来に触れる
大和ハウス工業の「ともに考える」メディア
メインターゲットは約15万人の従業員とその家族
セブン&アイHDのオープングループ報
ファッション事業だけではない
AOKIグループの3事業の価値を社内外に届ける
企業が抱えていた4つの課題解決に向け
サッポログループが公式noteを始動
動画制作には地元インフルエンサーを起用
マッピングを駆使した四国電力「愛でたい四国」
Tellusのオウンドメディア「宙畑」
宇宙ビジネスの発信、長続きの秘訣は
70ページ超で目指す、ミスマッチ0採用
アイグッズ、新卒採用サイトリニューアル
グローバル成長を加速する企業サイト改修
「知る人ぞ知るNOK」からの脱却へ
サイト内コンテンツを拡充したバンダイ
信頼できる情報発信でコラボ案件も増加
ブランドムービー制作に2年半
ノンバーバルで物語伝える印傳屋のサイト
【GUIDE】
「コーポレートサイト」と「オウンドメディア」
成果を出すために知っておきたいポイント
コーポレートサイトは「企業の顔」
運営における炎上リスクと対応策