MOON-Xの関口慎一郎氏は前職のP&GジャパンでEC事業の責任者を務め、当時から楽天グループと協業関係にあったという。関口氏と楽天グループの佐久間陽太氏が9月25日、26日に開かれた「アドタイ・フォーラム2025」に登壇し、事業成長に向けた取り組みを紹介した。
楽天データを活用し協働で商品開発
楽天のアカウントイノベーションオフィス(AIO)は、メディアプラットフォームとしての同社のアセットを活用した各種マーケティング支援から、ECプラットフォームとしての「楽天市場」での販促支援まで、マーケティングのあらゆるプロセスでサポートする体制が整っている。楽天の共通IDに紐づく膨大な量のデータ活用と楽天経済圏の様々なサービスやアセットを掛け合わせてソリューション提供できるのが強みだ。
MOON-Xも同社との協業に取り組んでいる1社。2021年から2025年にかけて、「楽天市場」に出店する公式ショップの売上が6倍の規模に成長しているという。
MOON-Xが持つ多くのブランドの中から、関口氏はビューティー・ヘルスケアブランドのレバンテの事例とともに解説した。レバンテは「カテゴリーの商品数も多く、消費者ニーズの変化も激しい中でどういった新製品を作るのかがものすごく難しい」ことが課題だった。
MOON-X 執行役員Chief Revenue Officer 関口慎一郎 氏
楽天の佐久間氏はレバンテの課題に対し、楽天のマーケティングデータを活用して商品開発を協働で実施したケースについて解説した。レバンテブランドの購入者や競合ブランドの購入者それぞれのデータを比較分析したものに加えて、価格帯やLTV、販促施策などの楽天が持つマーケティングデータを組み合わせて、商品開発を進めた。
佐久間氏は「商品の配合成分ごとの売れやすい価格帯や、『楽天市場』が定期的に行う『楽天スーパーSALE』などのイベント時とイベント以外の時期のオファー内容、またオファーの違いによってリピートはどうなのか、年間のLTVはどうなるのかなどをスコアリングして、どのサプリはどの価格帯で、こう仕掛けるべきというところまで導き出しました」と話した。この分析をもとに今年6商品を発売予定で、この新商品によって約30%の売上押し上げを期待しているという。
関口氏は流れの早いカテゴリターゲットの購買行動を可視化できること、さらにデータ分析や提供だけに留まらず、そのデータをもとに同じ目線や温度感で議論ができることがメリットだという。
「私たちはスタートアップの小さい企業なので、人材が豊富というわけではありません。その中で楽天の方に加わってもらいブレインストーミングができる。私たちと同じ視座で商品開発していただけるところは非常に良いと感じています」(関口氏)
売上規模が28倍に成長「ヒツジのいらない枕」を支援
続いてのテーマは「リテールメディア楽天市場の最新活用事例から学ぶ、ブランド急拡大の方程式」として、MOON-Xの「ヒツジのいらない枕」ブランドで展開した手法を紹介した。「ヒツジのいらない枕」はクラウドファンディングで立ち上げたブランドで、枕をメイン商品に各種寝具を展開している。ECを起点に量販店にも販路を拡大、メディア露出も追い風となり、シリーズ累計販売100万個を突破し、2020年から2024年までで2785%(約28倍)の成長率を達成している。
この大きな成長を支えたのが楽天のメディアプラットフォームとしてのマーケティング支援だった。佐久間氏は「ヒツジのいらない枕」で実施した施策を3フェーズに分けて解説を行った。最初のフェーズでは楽天広告をフル活用してブランド認知の拡大や売上の基盤を構築した。2番目のフェーズではLIVEコマースによる新たな販売方法の創造へのチャレンジ、3番目のフェーズは「Brand Gateway」を活用したブランド育成へのチャレンジとなっている。
LIVEコマースについて関口氏は楽天市場内の広告による誘導やLPとなるページ、実際のライブを連動させるだけでなく、動画をアーカイブ化し継続的に質の高い情報を提供する仕組みを評価した。佐久間氏はライブ視聴をきっかけに商品を知り、そのまま購買へと進む購買行動についても触れ、「楽天市場に何か良いものがないか?」というお買い物マインドで訪れているユーザーだからこそ、ファネルが分断しづらく、認知から購買まで一気通貫してスムーズに実現できるところにリテールメディアの良さがあると述べた。
さらに、楽天グループの4402万人という国内の月間アクティブユーザー数や楽天ポイントを活用し、楽天経済圏内で施策を行うことの強みについても言及した。
もうひとつの取り組みである「Brand Gateway」は「楽天市場」内にブランドページをつくることができるソリューションだ。その背景にはブランドの購買層が女性を中心にしているにも関わらず、うまくアプローチできていないためにそのポテンシャルを十分に発揮できていないのではないかというブランド課題があった。そこでAI分析を使い、男女での検討情報の違いや、商品に求める要素などを抽出し、性別に応じたブランドページを出し分けることで最適なコミュニケーションを図った。
楽天グループ アカウントイノベーションオフィス FMCGカテゴリーコンサルティング課 シニアマネージャー 佐久間陽太 氏
佐久間氏は「Brand Gateway」について「すべての行動が楽天IDで管理されているので、どのコンテンツが良かったのか、購買した人としていない人の違いは何のか、データに基づいたPDCAを回せるところが特徴です」と話した。
楽天の強みはパートナーシップとカスタマイズ性
関口氏は、楽天の強みとして、「パートナーシップ」と「カスタマイズ性」の2点を挙げた。前者については、「ワンチーム感が強い。前職のP&Gは、小売業とメーカーが協働してカテゴリー成長に取り組むJoint Business Plan(JBP)を積極的に推進していましたが、楽天はこうした姿勢に対応してくれる会社」とし、後者については、「カスタマイズした提案を次々に持ってきてくれる」と評価した。
佐久間氏はそれを受けて、クライアントであるブランド企業と、楽天の持つメディアやデータと組み合わせ、深く協働することで変化していくことを心がけているとし、ユーザーニーズにあった取り組みに進化し続けることが重要だと話した。
「カスタマイズ性」についてもAIOが大事にしているポイントと話し「高い成長を目指すときに、既存のメニューだけでは目標を達成できないケースもある。私たちはそこでメーカーやユーザーのニーズに沿ったものを一緒につくっていくというマインドを大事にしているので、このマインドが今回でいえばMOON-Xさんと掛け合わされて大きな成果をあげられたと思っています」と話した。
続けて「今、オンライン、オフラインを問わずリテールメディアの重要性が高まっています。今日のセッションが少しでもリテールメディアの活用法のヒントになればうれしいです」と話し、セッションを締めくくった。

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