スーツ離れを好機に変える多種多様な戦略
衣替えの季節を迎える中、スーツ市場では大きな変革が始まっている。コロナ禍を契機に働き方の多様化が進み、オフィスカジュアルが台頭。スーツは「毎日着るもの」ではなくなってきている。一方で「何を着ていけばよいかわからない」という悩みが顕在化しているほか、記念日や結婚式などの重要な場面のために「きちんとしたスーツ」を一着は所持していたいというニーズも高まっている。
こうした変化する需要に応えるため、新たなコンセプトを打ち出しているのがAOKI、青山商事、グローバルスタイルの3社だ。各社は直近で新たな戦略を発表しており、その取り組みを以下にまとめた。
AOKIの「パジャマスーツ」。場所はフルリニューアルした「AOKI 銀座本店」
AOKIはラインナップ拡充で「着回し」提案
AOKIが2025年9月12〜19日に実施した「ビジネスウェアに関する実態調査」(回答者=20〜60代のビジネスパーソン男女1000人)によると、コロナ禍前に最も多かった仕事服は「スーツ」(35.3%)だったが、現在は「ビジネスカジュアル」(31.2%)が主流となっている。ジャケットを着用しないビジネスカジュアルやラフなカジュアルスタイルを選ぶ人は50%に上る。一方、2025年時点でも30.4%が「スーツ」をメインに着用しており、スーツ派も一定数残っている。
こうしたビジネスウェアのトレンドに関して、「コーディネートの楽しみが増えた」(16.3%)という前向きな意見がある一方、「何を着るべきか悩む・ストレスを感じる」(14.0%)、「周囲の目が気になる・服選びが面倒」(10.7%)といった声も挙がっている。服装の自由化による悩みは特に20代で顕著だ。
ビジネスウェアに求める要素も変化しており、コロナ禍前と比較して「フォーマル性(きちんと感・信頼感)」の重視度は低下(31.2%→25.0%)する一方、「経済性(手頃・長く使える)」(25.8%→31.1%)、「汎用性(着回しやすさ・オンオフ両用)」(18.6%→24.0%)が上昇しており、より実用的な価値を求める傾向が強まっている。
