大量の情報が溢れ、さらにSNSなどのアルゴリズムにより届く情報が限定される現代。企業の発信は生活者にスルーされ、従来以上に届きにくくなっている。この課題に対し電通PRコンサルティングの平林未彩氏は、「n=1の声」への着目を提案する。「『n=1の声』は、まだ社会的な問題として表面化していないが個人が感じ始めている問題の兆候です。この“潜在的な困りごと”は、企業コミュニケーションに昇華させる大きなポテンシャルを秘めています」。
では、「n=1の声」をより効果的に活用するにはどうすればよいのか。平林氏は、「①n=1の声を探る方法」、「②n=1の声をみんなが“乗りたくなる言葉”に変換する方法」の2つのフェーズについて解説した。
「鬱憤構文」と「あいのりことば」
「①n=1の声を探る方法」のひとつに、SNSを活用した「ソーシャルハンティング」がある。「一般的な『ソーシャルリスニング』がSNS投稿の全体傾向をつかむのに対し、『ソーシャルハンティング』は、一つひとつの投稿に着目し、インサイトの兆しをつかむことを目的にした手法です」と平林氏。
例えば、商品開発のため育児に関する課題を探したい場合、「寝かしつけ」「授乳」などの言葉と共に「大変」「つらい」など、モヤモヤを表す言葉を組み合わせてSNSで検索をする。すると、「n=1の声」となる投稿が複数見つかるため、それらをグルーピングすることで課題の本質を探っていく。
また、「n=1の声」を探るもうひとつの方法として同社が提案するのが、自身や周囲の知見・経験から声を探るフレームワークだ。「例えば、『20~30代のビジネスパーソンが抱える課題は?』と言われても、大量には思いつきづらいものです。しかし、『補助ワード』を追加して、『20~30代のビジネスパーソンが“ストレスを感じる”ことは?』とすると考えやすくなります。私たちはこのような補助ワードを洗い出し『鬱憤構文』と名付けました(図)」(平林氏)。
図 「鬱憤構文」
また、発掘した「n=1の声」は賛同しやすい言葉に変換することで、多くの人に共感が広がり、メッセージが届きやすくなる。これが「②n=1の声をみんなが“乗りたくなる言葉”に変換する方法」のフェーズだ。
「各々が心の中で抱いていたモヤモヤを、ひと言で表す“言葉”に落とし込めれば、共感の輪はより素早く広く波及していきます。賛同した人が同じ言葉に相乗りし、共通言語として広く使われていくという点から、当社はこれを『あいのりことば』と名付けました」。「あいのりことば」の設計には、①既存の言葉をちょっとズラす、②問いかけにしてみる、③動詞で動きをつける、④ダジャレでチャーミングに、⑤あえて企業/ブランド名は外す、などのポイントがあるという。
「n=1の声」を社会全体で共有できる言葉に変換するこの設計は、企業が共創する仲間を集めるための「関係づくりの設計」となり、現代のPRにおいて有効だと平林氏は語った。

お問い合わせ

株式会社電通PRコンサルティング
広報部
https://www.dentsuprc.co.jp/
〒105-7001 東京都港区東新橋1-8-1
MAIL:info@dentsuprc.co.jp
