何度見ても、心が震える広告がある
「何年経っても心に響く広告」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。
筆者にとってのその一つが、英国ヒースロー空港が制作したクリスマス広告シリーズだ。2016年の初作から9年が経過した今も、この季節になるとSNS上で誰かがシェアし、多くの人々の心を揺さぶり続けている。
そして2025年の今年、7年ぶりに新作が公開された。テディベアの老夫婦、Doris & Edwardの新たな旅が始まったのだ。
彼らは一作目から今回公開された4作目に至るまで、一言も喋らない。それなのに、いや、喋らないからこそ、人種も国籍も超えて、誰もが自分や大切な人の姿をその中に見出すことができる。
広告の寿命が極端に短くなったと言われる現代において、なぜこの広告は9年経っても人々に愛され、涙を誘い続けるのか。その秘密を紐解いてみたい。
ヒースローベアが紡ぐ、クリスマス帰郷の物語
ヒースローベアシリーズは、2016年から2018年にかけて3部作が制作され、なんと今年4作目が公開された。
1作目:「Coming Home for Christmas」(2016)
飛行機を降り、空港で入国審査を受け、荷物を受け取る。お父さんベア(Edward)とお母さんベア(Doris)が、クリスマスに家族の元へ帰る旅路が描かれる。
2作目:「Fly to someone, NOT JUST SOMEWHERE」(2017)
このタイトルが秀逸だ。「”どこかへ行く”のではなく、”誰かの元へ飛ぶ”」。旅の本質を端的に表現している。
3作目:「MAKING IT HOME, MAKES IT CHRISTMAS」(2018)
「家に帰ること、それがクリスマスにさせる」。場所ではなく、人との再会がクリスマスの本質だと語りかける。