クリエイティブディレクターと脚本家を行き来して見えた 広告人のクロスキャリアのすゝめ

クロスキャリアのすゝめ

現在は、クリエイティブディレクターと脚本家の2つの名刺を持ち、それぞれの肩書きから仕事の依頼を受けている。自分ではこれを勝手に「クロスキャリア」と呼んでいる。それはドラクエで言うところの、戦士×魔法使い=魔法戦士となるように、2つのキャリアが足し算ではなく掛け算になっているからだ。

クロスキャリアの利点は、片方で得た「思考回路」を互いに持ち運べることにある。広告づくりは時代の空気やトレンド、すなわち “今” を撃ち抜くこと。対して、物語づくりは人間の変わることのない “普遍” を深掘ること。さらに広告づくりは、社会や市場などの客観的な課題から出発する “解法型”。対して、物語づくりは自己に内包する主観的なテーマから出発する “キャンバス型” だ。

もし広告づくりの思考回路を物語づくりに持ち込めば、社会の今を捉えるようなエンターテインメントを描くこともできる。逆もまた然りで、自己の中に新たな思考の発火点を持てる。

それぞれの領域で培った思考をあっちからこっちへ、こっちからあっちへと持ち運ぶ。そしてその思考の持ち運びの中で、時たま両者が掛け合わさる ‟化学反応” が起こる。それは片一方の領域だけにいる人間では生まれない、両方を行き来している人間にだからこそ生み出せるクリエイティブの化学反応だ。

自分にワクワクできているか

・・・とまとめつつ、実は一番伝えたいことは別にある。

時代がどんどん変化する中で、クリエイターが進化し続けることができるか否かは、「今の自分にワクワクできているか?」に尽きると思っている。前職の会社でクリエイティブディレクターとして仕事をしている時、恵まれている環境にもかかわらず、モチベーションの天井のようなものが見えた時があった。

そんな時に、絶メシのテレビドラマ化が決まったことで、「コンテンツ」というフィールドの扉をたまたま開けることができた。こうして、自分はもう1つの戦場(キャリア)を見つけたことで、今一度自分自身にワクワクすることができるようになった。

もう一度、ゼロスタートのゲームをしよう

たとえば広告会社に入り、立場がプランナーからディレクターとなり、責任が増すと同時に周りに意見されたり、否定されたりする機会が徐々に減ってくる。そして気づかないうちに、自分にとっての「やりやすい環境」が整ってくる。

初めてのドラマ制作現場で、あるアシスタントプロデューサーさんから、「クリエイティブディレクターって何をする人なんですか?」とピュアに質問されたことがある。その時は自分自身を表現する言葉がうまく見つからず、「ああ。この現場だとCDという肩書きは無力なのだ」と痛感させられた。

一方で、何者でもない身1つで戦う環境は、まさに新人の頃に感じた “悔しさ” や、同時に成長の “快感” を生む。職歴10年、15年を超えた人間がこんな「洗礼」のような経験をできるのは本当に貴重だし、もう一度ゼロから這い上がってやろう、という気持ちにさせてくれた。

色々とかしこまって語ったが、「クロスキャリアのすゝめ」とは、クリエイター人生を二度苦しみ、二度楽しむための精神論かもしれない。今、業界と業界の境界線はさらに溶けてきている。そして、それに気づいた広告クリエイターたちが、その曖昧な境界線をどんどんと飛び越えていっている。やはり、広告人には無限の可能性がある。

越境型クリエイティブディレクション実践講座 畑中翔太クラス

開講日: 2026年4月27日(月) 19:00~21:00
講義回数: 全6回
開催形式: 教室(表参道)とオンラインを各回自由選択できるハイブリッド形式
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畑中 翔太

dea/BABEL LABEL
クリエイティブディレクター/企画プロデューサー・脚本家

中央大学法学部卒業後、株式会社博報堂に入社。博報堂ケトルを経て2021年に株式会社deaを設立。広告領域においてはクリエイティブディレクターとして、『絶メシリスト』『静岡市プラモデル化計画』などのプロジェクトを手掛け、これまでに国内外200を超えるクリエイティブアワードを受賞。カンヌライオンズ審査員、ACC審査員なども務める。現在はコンテンツスタジオBABEL LABELにも所属し、企画プロデューサー・脚本家として、ドラマ『イグナイト-法の無法者-』『量産型リコ』『絶メシロード』、バラエティ番組『種から植えるTV』、舞台『なにわシーサー’s』、漫画『夢喰い』などを手掛ける。著書に『内村光良リーダー論』(朝日新聞出版)がある。

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