新入社員の成長に、AIの使用はマイナス?プラス?〜ヒントになる2つの実験〜

本コラムは、2025年10月に発売した書籍『AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる』に書ききれなかった話題、そして発刊から5カ月経って著者の並河進氏が新たに考えていることを、現在進行形で語ってもらう企画です。「続・AIネイティブマーケティング」として、ぜひ本書とあわせてお読みください。

4月。会社に新入社員が入ってくる季節です。たぶん、いま、いろいろな会社で議論になっている問いがあります。

「AIを新入社員に使わせるべきだろうか?」

これは、最初からAIに頼ってしまうと、仕事が上達しないのではないか、という懸念からだと思います。あるいは新入社員の方々からこう聞かれることもあります。

「最初からAIを使っちゃうと成長できなくなる気がして…使っていいんですかね?」

一方、「新入社員にはAIのじょうずな使い方を期待している」という声もあるかもしれません。当の新入社員からしたら、「どっちなの?」と、とまどうこともあるかもしれません。

新人とベテランで“逆転”した実験結果

以前、私は、クリエイティブ職の数十名の新入社員に対して、ある研修を行ったことがあります。まったく同じ課題に対して、2つのアプローチを試したのです。

1つ目は、まず企画を、自分で案を考え、その後AIにその案をぶつけてブラッシュアップする方法。2つ目は、最初からAIに指示を出して、(自分では案を考えず)AIに案を考えさせる方法。

結果は、新入社員は、「最初からAIに指示を出した場合」よりも「自分で先に考えてその後AIに手伝ってもらった場合」のほうが良いアウトプットを出す傾向があると感じました。

これは、興味深い結果でした。実は同じ研修を、ベテランのクリエイティブ職の社員で試したことがあります。そのときの結果は逆で、「最初からAIをディレクションした場合」のほうが「自分で先に考えた場合」よりも良い結果になる傾向があったからです。

この差はどこから来たのでしょうか。

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画像はAdobe Fireflyで生成

「評価軸を持っているかどうか」が分岐点

ベテランは、自分の中に明確な評価軸を持っています。何が良くて、何がダメか。どこを直すべきか。また、その評価軸をもとに方向性を指し示すこともできます。

一方、新入社員にはそれがまだないことが多い。その状態でAIを使うと、アウトプットの良し悪しを判断できず、結果として「それっぽいもの」をそのまま受け取って答えにしてしまっていた、ということなのでしょう。

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続・AIネイティブマーケティング
並河進(dentsu Japan チーフ・AI・オフィサー/エグゼクティブ・クリエイティブディレクター/主席AIマスター)

AIを活用したプロジェクトと、企業と社会を結ぶソーシャルプロジェクトが得意領域。2022年9月、電通クリエイティブインテリジェンス発足。東京大学AIセンターとの共同研究をスタート。Augmented Creativity Unitユニットリーダーをつとめる。著書に『Social Design』(木楽舎)、『Communication Shift』(羽鳥書店)他多数。読売広告大賞、広告電通賞など受賞多数。最新著作は2025年10月発売『AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる』(宣伝会議)。

並河進(dentsu Japan チーフ・AI・オフィサー/エグゼクティブ・クリエイティブディレクター/主席AIマスター)

AIを活用したプロジェクトと、企業と社会を結ぶソーシャルプロジェクトが得意領域。2022年9月、電通クリエイティブインテリジェンス発足。東京大学AIセンターとの共同研究をスタート。Augmented Creativity Unitユニットリーダーをつとめる。著書に『Social Design』(木楽舎)、『Communication Shift』(羽鳥書店)他多数。読売広告大賞、広告電通賞など受賞多数。最新著作は2025年10月発売『AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる』(宣伝会議)。

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