4月1日、電通の代表取締役社長執行役員に就任した松本千里氏。AIが浸透し、広告業界が歴史的な転換点を迎える中、松本氏は「Integrated Growth Partner(インテグレーテッド・グロース・パートナー、IGP)」として顧客の事業成長にコミットする姿勢を鮮明に打ち出している。
4月1日の新入社員の入社式の後に記者たちの取材に答えた際には、電通グループの連結決算では最終赤字となったものの、日本事業については11四半期連続のプラス成長となり「非常に好調なモメンタム」にある。また、日本の総広告費も4年連続で過去最高となっており「市場環境としてもまだまだ十分に伸ばせる」との見方を示している。
AIの普及によるマーケティングの変化、GEO(生成AI検索最適化)への対応、企業の未来構想支援など、電通が担う次の役割について、新社長が語った。
「広告」以外の事業が、売上総利益の約4割に到達
━━4月1日に電通の代表取締役 社長執行役員に就任されました。どのような方針を掲げていますか。
企業としての戦略は大きく変わりません。2021年から掲げてきたIGPの実践を引き続き、事業活動の大方針として考えています。顧客の成長、さらには社会を活性化させ、活気や元気を拡散させていく。そうした事業を行っていくのが、私たち電通が目指すべき方向性であるからです。
この方針のもと、具体的な事業領域として注力するのが昨年から掲げる、「マーケティング」「BX(ビジネス・トランスフォーメーション)」「スポーツ&エンタテインメント」の3つで、これらをコアに事業戦略を組み立てています。
3領域の中でも特に、伸びしろを感じているのがBXです。私たちは今、企業変革と事業変革を推進して顧客の持続的な成長を支援する「グロース型コンサルティング」を提供しています。BXをはじめとする、従来の広告領域以外を売上総利益で見ると、dentsu Japan全体の約4割に達し、ここ数年で大きく成長させることができたとの自負があります。
BXでは事業変革だけでなく、人的資本経営も含むカルチャー変革の依頼が増えています。どんな事業も、実装し動かしていくのは人の力です。こうした領域では、広告会社を出自とし、人に働きかけるコミュニケーションとクリエイティビティに強みを持つ当社だからこその提案や実行ができると考えています。
顧客のバリューチェーン全体の中で、私たちが貢献できる領域はまだまだたくさんあるはず。顧客の事業成長にコミットするIGPとして、企業変革や事業変革、DX、R&D、HRなど多岐にわたるバリューチェーンの各プロセスで伴走型の支援が可能な体制を構築していきます。
「業績」だけで企業が評価される時代ではなくなりつつある
━━成熟している国内市場を見ると、「Growth(成長)」という言葉を経済的な成長以外の側面からも捉える必要があると考えます。
私たちが「成長」という言葉を使うとき、顧客の事業成長という経済的な側面が大前提としてあります。一方、企業文化の醸成や従業員エンゲージメントの向上とモチベーションアップといった可視化が難しい部分においても、“成長”の支援が必要だと考えます。
━━電通は昨年3月に、戦略的IR支援プログラム「IR For Growth」の提供を開始。コミュニケーション活動の支援を、従来のマーケティングから企業価値向上のためのコーポレート・コミュニケーション活動支援に広げていく方針を感じました。
人的資本に関する相談が増えていることとも連動しますが、今の時代は業績だけで企業が評価される時代ではなくなってきていると感じます。それゆえ、人的資本や従業員エンゲージメントなど、非財務領域の価値も伝えていく必要性が生まれています。
