アカデミー賞が「AI否定」と話題… 実は全くの “誤解”、広告賞にも広がるAI作品を評価するための “下準備”

米映画芸術科学アカデミーが、第99回アカデミー賞に向けてAI利用に関するルールを明確化した。映画の制作過程におけるAI活用の透明性を求める内容で、SNSではこの流れを「AIの否定」と受け止める声も見られるが、生成AIの活用そのものを否定する動きではない。人間の創作性や責任の所在を明らかにし、AIを使った表現を正当に評価するためのルール整備といえる。

こうした流れは広告賞にも広がっており、カンヌライオンズやACCでもAI利用の開示や権利処理が重視される一方、AIを有効に活用した作品も評価され始めている。

The Ring Magazine「The 4th Judge」(Entertainment Lions for Sport ゴールド)

アカデミー賞が示した「人間の創作性」の線引き

米映画芸術科学アカデミーは5月1日、第99回アカデミー賞に向けたルール変更を発表。公式発表によると、演技部門では、映画の正式なクレジットに記載され、人間が同意のもとで実際に演じたことが確認できる役のみを対象とする。脚本部門でも、脚色賞・オリジナル脚本賞の双方で、人間が執筆した脚本であることを資格条件とした。

生成AIやその他のデジタルツールの利用については、それ自体がノミネートの可能性を高めたり損ねたりするものではないとしたうえで、各部門が「人間が創作上の著作者性の中心にいた程度」を考慮するとしている。疑義が生じた場合には、AI利用の性質や人間による著作者性について、追加情報を求める権利をアカデミーが留保する。

広告賞にも広がるAI利用の透明化

こうした透明化の流れは、広告賞にも広がっている。カンヌライオンズは2025年、AIや合成メディア、操作された素材をめぐる懸念を受け、受賞作品の一部を取り下げた。その後、2026年以降の応募に向けて、企業側・ブランド側の承認、応募内容の検証、AI利用の開示、虚偽や不備があった場合の失格・受賞取り消しなどを含む新たな基準を導入するとしている。

日本でも、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSの2026年エントリー規約に「AI使用に関する注意事項」が設けられている。ACCはAI活用を制限しない一方、AI生成素材を含む作品では、著作権、肖像権、商標権など第三者の権利侵害がないかをエントリー社の責任で確認するよう求めている。不正が発覚した場合は、受賞後でも取り消される可能性がある。

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