「今週、会社から届いた社内メールやTeamsの投稿を全部読みましたか」。Staffbase Japanの赤平百合氏は会場にそう問いかけ、さらに2つ重ねた。そのメッセージは従業員に届いているか。届いたとして、読まれ、理解されているか。
現場に届かない情報
同社の調査では、社内コミュニケーションの質に満足しているのはデスクワーカーで47%、ノンデスクワーカーでは29%にとどまる。工場や店舗で働く現場従業員ほど、情報から取り残されている。一方、経営陣のコミュニケーションが明確だと感じる従業員は、仕事への満足度が約3.5倍高いという調査結果もある。
AIはこの状況をどう変えたか。原稿作成、要約、翻訳、動画化、FAQ。コンテンツをつくることは、もはやボトルネックではない。しかし人間が受け取れる情報量は変わらない。五感から入る情報のうち意識的に処理できるのは約27万分の1にすぎない。情報量が増えるほど、「何を届けないか」が重要になる。
発信者から設計者へ
だからこそ、AI時代の社内広報に求められる役割は発信者ではなく設計者だと赤平氏は言う。同じメッセージでも、相手によって必要なコミュニケーションは異なる。経営層が知りたいのは「なぜ今この戦略か」。管理職なら「チームをどう動かすか」、店舗や工場では「明日から何をすればいいか」といった形だ。
設計すべき要素は4つ。「コンテンツ」「チャネル」「タイミング」そして「期待する行動」だ(図)。例えば、営業職ならデスクトップに朝9時、工場勤務ならアプリやサイネージに始業前。多言語への対応も欠かせない。起点となるのは、どんな行動変容を求めるのかという問いである。
出所:Staffbase
実装面では「届ける」「読まれる」「使われる」の3段階で捉える。製造業における経営層と現場の情報格差を出発点に、ドイツで生まれた同社ならではの整理だ。まず必要なのは、全従業員がアクセスできるチャネル。デスクワーカーにはポータル、現場にはモバイルアプリやサイネージ。あとは日々の業務ツールとつなぎ、毎朝ログインして1日の始まりを迎える導線をつくり込む。
知る、納得する、行動する
講演では、同社の海外事例も紹介された。国際物流大手では、ドライバーなどの現場スタッフがイントラネットにアクセスできず、デジタル基盤から取り残されていた。
そこで同社のアプリを導入したところ、メッセージ伝達率は5%から70%へ。日常業務で活用できる従業員は75%、働き方が改善したという回答は70%に達した。
また、580超の店舗を持つ欧州のスーパーマーケットチェーンでは、店舗責任者が伝達役を担う構造が一貫したメッセージ伝達を阻んでいた。同社のサービス導入後の登録率は99%、月間アクティブ率は94%。人事部門の負荷は軽くなり、顧客満足度も上向いたという。
最後に赤平氏は、コミュニケーション設計を3段階で整理してみせた。知る・理解する「CONNECT」、納得する「ENGAGE」、共感し行動する「ACTIVATE」。AI時代の社内広報に求められるのは、発信者から設計者になること。データで検証を重ねながら、その役割へ移ってほしいと呼びかけた。
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