ブランド総合研究所による「地域ブランド調査2026」において「スポーツのまち」として思い浮かぶ市町村ランキングで2023年以来の1位となった静岡県磐田市。広報広聴・シティプロモーション課 シティプロモーション推進グループ長の伊藤貴規氏に、これまで実施してきた取り組みや、自治体における広報の役割について聞いた。
明治安田J2リーグ「ジュビロ磐田」のホームタウン・磐田市では、小学生による一斉観戦を実施。お揃いのキャップとタオルマフラーを身に着けた子どもたちが、スタジアムに応援の声を響かせた。選手の中には、小学生の頃、一斉観戦を経験したメンバーもいる。
━━「スポーツのまち」のイメージ向上に向け、注力されてきた取り組みを教えてください。
磐田市は、スポーツが暮らしや地域に深く根付いています。この強みをシビックプライドにつなげる代表的な取り組みが、小学5・6年生を対象とした「ジュビロ磐田ホームゲーム一斉観戦事業」です。2011年に始まり、15回目を迎えた2026年は、約2800人の小学生がスタジアムに集い、サッカーチーム「ジュビロ磐田」へ声援を送りました。試合前にチームのサポーター団体が応援指導をしたり、勝利への願いを込め給食でカツを食べたり、子どもたちが試合を楽しめる工夫をしています。
また中学2年生を対象に、ラグビーチーム「静岡ブルーレヴズ」の観戦事業も実施。子どもたちが地域のプロスポーツや地元の魅力を肌で感じる機会を創出しています。
さらに、本市出身の藤原健介選手(ジュビロ磐田)を「静岡いわたPR大使」に起用するなど、情報発信にも力を入れています。
観客席で応援していた子どもが、成長して選手となり、今度は「魅せる側」になる。あるいは教員や市職員として事業を「支える側」になる。「観る側」から「魅せる側」「支える側」への循環は、長年事業を継続してきた本市ならではの価値です。
ほかにも、卓球のオリンピックメダリストである水谷隼さん・伊藤美誠さん、ダンス世界大会で優勝した女子高生HIYOさんなど、磐田市にゆかりのある人たちがPR大使として活躍し、「誇れる人がいる」という地元への愛着と誇りを育んでいます。
こうした取り組みの積み重ねにより、「地域ブランド調査2026」の「スポーツのまち」として思い浮かぶ市町村ランキング(ブランド総合研究所)において、磐田市は2023年以来の全国1位に返り咲きました。
━━今後注力していきたい広報活動について教えてください。
今後は、スポーツを通じて育んできたシビックプライドを、まち全体の「挑戦する力」へとつなげていきたいと考えています。誰もが可能性を信じ、失敗を恐れずに一歩を踏み出せる「全国一チャレンジできるまち」を目指していきます。
挑戦しているのはアスリートだけではありません。新規事業に挑む企業、地域課題の解決に取り組む市民、未来を担う子どもたちなど、多様なフィールドで一歩を踏み出す人々がいます。こうした人の姿を発信することは、夢を与えるだけでなく、「自分も挑戦してみよう」という連鎖を生みます。SNSや動画など世代に応じた媒体を活用し、その人の思いや周囲の応援も含めて伝え、市民の共感と新たな行動を喚起したいと考えています。
━━自治体における広報・コミュニケーションの役割をどのように捉えていますか。
自治体広報は、行政情報を一方的に「伝える」のではなく、市民に「伝わり」、理解や共感、行動につながって初めて価値が生まれます。そのためには、市民が求める情報や地域の魅力を捉え、双方向の対話を重ねる必要があります。まずは市職員が現場に足を運び、地域の声に触れることが大切だと感じています。
磐田市には、誇るべき地域資源や挑戦を続ける魅力的な人がいます。広報の役割は、そうした価値を発掘して磨き、市内外に届け、「人と人」「人とまち」をつなぐこと。市民がまちの魅力を再発見し、誇りや愛着を深め、自ら地域の魅力を発信したくなる――。その積み重ねが、まちへの共感と新たな挑戦を生み出し、まちの未来をつくる力になると考えています。

