カンヌはジャパニーズツンデレ祭り−− ヤフー内田伸哉のカンヌレポート2 #canneslions

【執筆】
ヤフー株式会社ブランドマネジメント室室長内田伸哉

こんにちは。ヤフー内田です。1回目のレポートが掲載されていたので、読んだらなんだか偉そうだった上に「いいね」も少なかったので、2回目はちょっとゆるくいきます。

カンヌを語る日本人にはよくこんな人がいます。

「カンヌなんて獲っても意味はない。」と語る
でもなぜか毎年カンヌにいる
でもでもちゃっかり受賞している（すげえ！）

何かすごく懐かしい感覚です。「おれ全然勉強してないよ。勉強なんて意味ないじゃん」と言いながら中間テストで高得点をとっていく、あの学生時代の友に裏切られた感じ。一緒にゴールしようって言ったじゃん！っていうあの感じ。

こんな感じで広告業界周辺の人は「カンヌなんて意味がない」と否定をする人が結構います。でも、この否定にカンヌの意義があるのではないか、と思うのです。みんなが集まって、褒めたり、自己否定したりしながら次の時代を探していくことが良いのかな、と。

「まず否定」から生まれる新しいアイデア

そもそも、新しいビジネスは古いビジネスの否定からはじまります。今年の受賞作にもそういった作品が見受けられます。

L’Oreal Paris「Makeup Genius」

ARで自分の顔に「化粧」を上乗せするスマホアプリをコアとしたプロモーション。いままでにもあるアイデアだが完成度が非常に高く、普段使いに耐えるクオリティを誇る。「化粧品は試用しないとわからない」という概念を否定した作品。

http://www.canneslionsarchive.com/winners/entry/570290/makeup-genius

MAXIS BERHAD 「Smart Sentry」

使わなくなったり、ヒビが入って壊れたスマホを、簡易な段ボールキットで監視カメラにする仕組み。「監視カメラは高くて買わないけど、無料でつくれるなら使わなくはない」といった潜在ニーズを探り当てた。「古いスマホは寝かせている」という誰もが感じている現状を否定したアイデア。

http://www.canneslionsarchive.com/winners/entry/570137/smart-sentry

Base「Base Phoneaddress」

「住所」ではなく「いまスマホのあるGPS座標に届ける」サービス。日本でもデリバリー業者などが一部サービスをはじめている。配送業で必須となる住所という前提を否定し、自分のいる場所を配送先のスタンダートにしよう、という考え方。
http://www.canneslionsarchive.com/winners/entry/594087/base-phoneaddress

古い手法をネットにリプレイスする

インターネットやスマートフォンはコミュニケーションという広い視点から見ると全く新しいものを生み出しているわけではありません。過去にあった文化を否定して、新しい形で届けているだけです。通信の手段が電話からメールになりSNSになったように、人間の根本である「人と繋がりたい」といった感情が変わるような使い方は生み出していません。

今をときめくUBERやNetflixも、タクシーの「手を上げて止める」という常識や「レンタルビデオ屋にいく」という常識を否定することで新しいビジネスを切り開いています。

否定だけではいけませんが、「いまこれで満足してはいけない。その先をどう切り開いていくためにどうすればいいのか」という前向きな気持ちをカンヌは私たちに与えてくれるのです。