【前回の記事】「全豪オープンから見えた東京五輪が本当にデザインしなければいけないモノ」はこちら
荒井信洋(COPYWRITER / TBWA\Melbourne)
博報堂入社後、TBWA\HAKUHODOを経て、2017年よりTBWA\Melbourneへ。TwitterやUstream などSNSのエンゲージメント企画からキャリアを開始したソーシャルネイティブなコピーライター。”体験をコピーライティングする” 企画力に武器に、国内外120以上の広告賞獲得(Cannes Lions Gold/London Gold/Clio Grand Prix/ACC グランプリ/文化庁メディア芸術祭グランプリ など他多数)。最近の企画に、オーストラリア政府観光局”GIGA SELFIE” / キングレコード縦型MV ”RUN and RUN” など。
メルボルンで働くようになって、5カ月が経とうとしています。最近、現地の人たちと触れ合うたび、よく聞かれる質問があります。
「Do you love Melbourne?」
この質問をニュアンス的に訳すと、「俺たちのこんな素敵な街、お前も好きに決まってるよな!そうだよな!」ぐらいのテンションです(笑)。そう、メルボルンの市民はメルボルンを誰よりも愛しています。「外国から来た人たちにも、同じようにメルボルンを好きになって欲しい」という強い思いが、この質問の節々から感じられるほどに自分たちの街に対する愛に溢れているのです。
では、そんなメルボルンが市外の人々をもっともっと惹きつけるために、どのような手段で街のブランディングをしているのでしょうか。今回はデザインの観点、中でもメルボルンシティのシンボルマークにフォーカスして紐解いてみたいと思います。
大きなアイデアを最も簡単に解決するロゴの持つ威力
みなさん、メルボルンのシティロゴをご覧になったことはあるでしょうか。日本ではあまり知られていないかもしれませんが、検索すると世界のベストシティロゴに必ず入っているほど愛されているロゴです。
「ロゴ」の一番の魅力は、企業や団体、自治体などのメッセージを伝えるにおいて最もシンプルな形の解決方法であることだと思います。ロゴは指針のようなもので、大きな理想や目標を人々に示すことができます。その指針を目安に、街や企業や団体はその方向へと向かうことができるのです。私はこれこそが、ロゴの一番の魅力であり、大きな力だと思っています。
その一例として、ニューヨークの「I♥NY」は皆さんもご存知かと思います。1970年代に治安も雰囲気もどん底のような状況だったニューヨークを変えたのはこの一つのロゴでした。「街を愛する」という大きくてシンプルな解決アイデアで、「I♥NY」というキャッチーなアイコンを作ったのです。人々がロゴを愛することで、巨大な街全体を愛することができるようになり、いずれ愛する街を大切にしようという気持ちを芽生えさせ、その気持ちが街を変えていきます。
ロゴというシンプルな形で明快に目標を示すことで、人々にアクションを促すことができる構造になっていたと言えます。今なお世界中の人々に愛され続けているこのロゴから、私はメルボルンのシティロゴにも共通した仕組みを見つけ出すことができました。
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