【前回の記事】「競合やユーザーばかりを見るのではなく、「人間」を見に行こう」はこちら
宣伝会議から『欲しいの本質』が2017年12月1日に発売。本書では、マーケティングにおいて重要な、人を動かす隠れた心理「インサイト」の条件とは?どうやって見つけるの?ビジネスに生かすには?といった点について解説します。本連載では、マーケターが洞察すべき、消費者自身すら気付いていない隠れたインサイトとは何か、著者の大松孝弘氏が紹介していきます。
「悪」が人を惹きつける力は強い
では、近視眼に陥らず「人間を見に行く」ことが大切であると述べました。その人間を見に行くという時に、誤りを犯しがちなポイントがあります。
「七つの大罪」というキリスト教の教えがあります。「暴食」「色欲」「強欲」「憤怒」「怠惰」「傲慢」「嫉妬」という7つの欲望を指し、人間を罪に導く可能性があるとして戒められているものです。
最近のさまざまな事件にも、このような欲望がその引き金になっているものが数多くあることに気づきます。そして、今これを読んでいるあなたの心の中にも、そのような悪しき欲望が存在している。それが現実です。
キリスト教だけではありません。仏教では「煩悩」という言葉で同じように人間を戒める教えがあります。煩悩は除夜の鐘を叩く回数である108あるというのが通説ですが、その根本は「三毒」と称される「貪」(とん=むさぼり求める心)、「瞋」(じん=怒り)、「癡」(ち=無知)という3つの煩悩です。この「三毒」が克服すべき人間の諸悪・苦しみの根源だというのです。
このように古今東西を問わず伝えられている通り、人間は「悪しき心」から逃れられません。「悪」が人を惹きつける力はそれほどに強い。「悪魔の囁き」という言葉がある通り、まさに魔力と言うべき強さがある。人間はその恐ろしさを知るが故に、善の心を強調し、道を外さないように守ろうという知恵を育んできました。人間はそれほど弱く、愚かな存在なのです。
