世界の新しい常識「シンギュラリティー」とは?【電通デザイントーク・前編】

【前回】「濱口秀司が語る、イノベーションを生み出す「ビジネスデザイン」とは?【後編】」はこちら

シンギュラリティーとは「技術的特異点」のことを指します。人工知能が人間を超えることがセンセーショナルに注目されていますが、実はそれは一つの要素にすぎません。その本質は、世界を変える破壊的イノベーションを引き起こす「エクスポネンシャル・シンキング」(指数関数的な思考)です。この考え方がシリコンバレーを中心に支持を獲得することで、膨大な投資と優秀な頭脳が掛け合わされ、グローバルな規模で変革を起こす原動力になっています。早くから、この動向をキャッチしていた電通ライブの日塔史氏の呼び掛けで、日本中からトップクラスの「シンギュラリティー論者」が結集しました。日本企業がグローバルに羽ばたくための方策を徹底的に議論します。

無視できなくなってきた「シンギュラリティー」

日塔:

「シンギュラリティー」と言うと、多くの人がレイ・カーツワイル氏によって2005年に出版された『シンギュラリティは近い』(NHK出版)を思い浮かべるでしょう。この本は、「人間は死ななくなる」「宇宙が意思を持つようになる」など、衝撃的な内容で私自身は“ドン引き”してしまいました。

日塔 史
電通 ビジネスD&A局

現在、電通ライブでAIを中心とした「加速するテクノロジー」を活用したソリューション開発業務を担当。日本マーケティング協会客員研究員。2016年に論文「AI革命の『大分岐』で広告業界が動く~人を動かす次世代エージェント」がJAAA懸賞論文金賞を受賞(前年からの金賞連続受賞)したことをきっかけに、AIおよび先端テクノロジーに関する講演および寄稿多数。17年電通Watsonハッカソン「日本IBM賞」受賞。

ところが、NASAの敷地内にシンギュラリティー大学が開設され、TEDでシンギュラリティーをテーマにするプレゼンテーションが行われ、Xプライズ財団とシンギュラリティー大学が企業向けプログラムを提供するなど、一歩引いて眺めている場合ではない、という意識が芽生えてきました。

2016年には、全日本空輸がXプライズ財団とパートナー契約を締結し、国際賞金レースを開催するなど、日本企業も動き始めています。われわれもシンギュラリティーの指数関数的思考を学び、日本企業が世界に羽ばたくお手伝いをしたい。それが今回の趣旨です。

まずは、「シンギュラリティサロン」を主催する神戸大学 名誉教授 松田卓也先生からお話をいただきます。

優秀な頭脳の争奪戦がすでに始まっている

松田:

世界的ベストセラー『サピエンス全史』(河出書房新社)の著者で、イスラエルの歴史家であるユヴァル・ノア・ハラリ氏によれば、シンギュラリティー革命によって人は死ななくなり、超知能と融合した「神=ホモデウス」になるそうです。そして世界は「ヒューマニズム=人間中心主義」から「データイズム=アルゴリズム」へと移行します。

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