企業の「売る」から生活者に「選ばれる」へ~体験ブランディングの背景にあるもの(前半)

【前回コラム】「マーケティングの歯車までを動かす体験ブランディング」はこちら

第4回と第5回は、ブランディングやマーケティングにおいて、「体験」が重要なファクターになってきた社会的な背景について、少し考えてみたいと思います。

「ゴハンがくさりません」  by 60年代の電子ジャー

「洗って しぼって サッと乾く」  by 日本初の脱水乾燥洗濯機

「おしりだって、洗ってほしい。」  by 80年代のシャーワートイレ

広告のアーカイブを見ていたら、こんな広告コピーが目に入ってきました。高度経済成長で急速に豊かになった日本。そこに現れた夢のような電化製品。製品の進化と広告が生活の進化をリードしていた時代だったんだなぁと、改めて思います。

冷蔵庫や洗濯機などの白物家電、ビデオレコーダーや音楽再生プレーヤーなどのAV機器—こうした、世の中に出るだけで生活スタイルを変える製品が続々登場したのは、90年代初めぐらいまででしょうか。この時代の広告は、商品のUSPを探して鮮やかに紹介することが、主な役割でした。極端に言えば、テレビCMを投下して良い商品をみんなに知ってもらえれば「これがいい!」と多くの支持を得て、瞬く間に売れた。そんな時代です。

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「これでいい」を「これがいい!」に格上げできるか

ところが、現在はどうでしょう。成熟社会と言われる今の日本では、生活に必要なモノやサービスに困ることはありません。本来、それは幸せなことだと思うのですが、当たり前になりすぎて実感することはなかなかありません(海外に行って不便な思いをしたときぐらいですよね)。

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藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)
藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを手掛け、その後グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。

“これでいい…”という消極的選択が溢れる成熟社会で、「ブランド」と「生活者」の関係性をアップデートする“至福”の体験価値をクリエイティブし、ブランデイングとマーケティングの両輪を動かしている。

藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを手掛け、その後グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。

“これでいい…”という消極的選択が溢れる成熟社会で、「ブランド」と「生活者」の関係性をアップデートする“至福”の体験価値をクリエイティブし、ブランデイングとマーケティングの両輪を動かしている。

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