【前回の記事】「『広辞苑』改訂の「新語」から、言葉の時代性を考える」はこちら
@123RF
基本的に、私たちは「ことば」を使ってコミュニケーションをとります。この行為があたり前に成立している背景には、そもそも「ことばを共有できている」という大前提があります。ところで、私たちはことばを「本当に」共有できているのでしょうか?
前回のコラム
でご紹介したように、ことばというものは「時代」と密接な関係にあります。たとえば、[スマホ]や[マニフェスト]などのように、まったく「新しいモノ」が生まれたことで名付けられることばもあれば、[メタボ]や[セクハラ]、[フリーター]や[ニート]など、今までも存在していたけれど、その事象を「改めて名付けること」でこの世に存在させたというような新語もあります。
「近代言語学の父」と呼ばれたスイスの言語学者・ソシュールによれば、「言語こそが世界に切れ目を入れて、名前を名付けることで、初めてそのものを存在させる」と語っています。この「名付ける」という行為の威力は絶大で、一番身近なものは「自分の名前」であり、生まれた時に名付けられることによって、社会における存在を獲得しています。
先ほど取り上げたような新語の事例の場合も同様で、もはやそのことばで名付ける以前に、私たちが「そのこと」をどのように説明していたのかを思い出すことは難しいのではないでしょうか。逆に言えば、言いたくても言い表せなかったからこそ、必要に迫られてそれらが誕生し、私たちの「社会全体に共有されている」のだとも言えます。
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伊藤剛
1975年生まれ。明治大学法学部を卒業後、外資系広告代理店を経て、2001年にデザイン・コンサルティング会社「asobot(アソボット)」を設立。主な仕事として、2004年にジャーナル・タブロイド誌「GENERATION TIMES」を創刊。2006年にはNPO法人「シブヤ大学」を設立し、グッドデザイン賞2007(新領域デザイン部門)を受賞する。また、東京外国語大学・大学院総合国際学研究科の「平和構築・紛争予防専修コース」では講師を務め、広報・PR等のコミュニケーション戦略の視点から平和構築を考えるカリキュラム「ピース・コミュニケーション」を提唱している。主な著書に『なぜ戦争は伝わりやすく 平和は伝わりにくいのか』(光文社)、これまで企画、編集した書籍に『被災地デイズ』(弘文堂)、『earth code ー46億年のプロローグ』『survival ism ー70億人の生存意志』(いずれもダイヤモンド社)がある。
1975年生まれ。明治大学法学部を卒業後、外資系広告代理店を経て、2001年にデザイン・コンサルティング会社「asobot(アソボット)」を設立。主な仕事として、2004年にジャーナル・タブロイド誌「GENERATION TIMES」を創刊。2006年にはNPO法人「シブヤ大学」を設立し、グッドデザイン賞2007(新領域デザイン部門)を受賞する。また、東京外国語大学・大学院総合国際学研究科の「平和構築・紛争予防専修コース」では講師を務め、広報・PR等のコミュニケーション戦略の視点から平和構築を考えるカリキュラム「ピース・コミュニケーション」を提唱している。主な著書に『なぜ戦争は伝わりやすく 平和は伝わりにくいのか』(光文社)、これまで企画、編集した書籍に『被災地デイズ』(弘文堂)、『earth code ー46億年のプロローグ』『survival ism ー70億人の生存意志』(いずれもダイヤモンド社)がある。
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