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コラム

国民総ダンサー時代前夜に考える、ダンスとクリエイティブの幸福な関係

「このダンス企画は、なぜあの人が振付なの?」はどう決まるのか

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【前回コラム】「「ダンサーのことが分からない!」と悩んでいる広告制作者の皆さんへ」はこちら

「表音的」か「表意的」か、ダンスには大きな2つの方向性がある

写真 飯野高拓(梅棒)

第二回目のテーマは、こちらもよく聞かれる話題です。
広告クリエイターの方からのご相談で、「この企画だと、ダンスは誰に頼めばいいの?」というお話です。
ダンサー側からすると「なぜあの企画で、あの人が振付なの?」「なぜこのダンス?」という疑問の裏側のお話ができれば。

広告クリエイターがダンスの企画を絵コンテ(四コマ漫画のようなものです)でプレゼンするときは、ダンスについては資料映像などをつけて「このようなダンスを踊ります」とするか、事前にビデオコンテなどでその踊りを撮影して添付する、もしくは、もはや字のみで「商品の形状を模したインパクトのあるポーズを中心にダンスを制作します」というような説明をするか、でしょう。

その時点で、クリエイターが起用したい振付師を提案する時もありますし、企画が決まってから監督と相談して振付師を選ぶこともあります。
そして、必ずクライアント側の確認・承認を経て決定します。

広告やPVにおけるダンスというのは課題解決としての機能を期待されているところがありますが、その「機能」は様々。
「覚えやすい動き」、ということもあるでしょうし、「踊りを流行らせたい(バズらせたい)」「商品の長所を感覚的に伝えたい」「画を華やかにしたい」「世界観を表現する助けにしたい(キレイ、かわいい、ダークなど)」など様々考えられます。

しかし、それぞれでどのようなダンスをチョイスすべきかというのは、実はなかなか難しい問題。
そもそも、どのようなジャンルのダンスが存在し、何を表現するのに適しているのかはあまり知られていないかと思いますので、その視点で、今回は大まかにダンスジャンルを紹介していきます。

これは個人的なジャンル分けですが、表音的ダンス(ストリートダンスなど)と表意的ダンス(コンテンポラリーダンスなど)の二つの方向性に分けると各ダンスについて理解しやすいかと思います。

表音文字、表意文字という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、表音文字は音を表す文字(カタカナ・ひらがな)、表意文字は意味を表す文字(漢字)ですが、ダンスにも当てはまる考え方です。

まず、表音的ダンスの代表例がストリートダンス全般。前回書いた通り、ストリートダンスは音を表現するためのダンスだからです。
例えば自らも踊るアーティストのBruno Marsが踊っているのがストリートダンスです。

 

 

そして、「音を表現する」という方向性の中に、音楽ジャンルに寄り添ってHip Hop、House、Break、POP、Lock、Soulなどの各ダンスジャンルが存在しています。
ここで重要なことは、ストリートダンスには「この曲調ならこのダンス」というのがある程度決まっていて、それが違っていると違和感がある、ということです。

その「違和感」を企画にしたいときは別ですが、そうでないときは選ぶ曲によって振付師・出演ダンサーの選択も注意したいところです。

余談ですが、私が舞台でご一緒した人間国宝の坂東玉三郎さんがストリートダンスを「自分語りのようなダンス」とおっしゃっていましたが、この指摘はとても鋭いものだと思いました。もともとストリートダンスは「自分が(周りの人と)音楽を楽しむため」に生まれたもので、ブレイキンなどからバトルに発展した時も相手に対する「自己主張」のダンスでした。つまり、劇場での上演を前提としたバレエなどのように、当初は観客に向けたものではなかったということです。

見るとしてもクラブなどで至近距離で見るダンスだったので、高度になるほど動きが速く、細かくなりがちなのですが、これがPV時代からのYouTube時代の到来によって、「カメラが近くに寄ってくれる」ことで、大きく花開いたのではないかと思われます。

アニメーションや指だけで表現するダンスが発展したのも、ディテールを伝えることができる映像時代だからこそだと思います。

アーティストからアイドルまで多くのPVで踊られているダンスは、基本的にはその音楽の楽しみ方を本人自らが提示しているという構造。
音楽がCMのトーンを規定するとよく言われますが、トーン・世界観を構築するにはストリートダンスは有用だと思います。

次ページ 「意味や感情を表現するのが「コンテンポラリーダンス」 」へ続く