国際的ハッカー集団「アノニマス」のバックグラウンド
先週、このコラムでフェイスブックに対するアノニマスの宣戦布告についてコメントした。今回は当事者であるアノニマスについて簡単に触れておく。アノニマスは、当初、搾取的な大企業に対して「正義」の名のもとに、その後はウィキリークスの支援組織としてウィキリークスへの財政的支援を打ち切った企業に対して攻撃を加えてきた。神出鬼没であり、どの程度メンバーがいて、どのような組織となっているのかすら未だ解明が進んでいない。
今年の7月20日、欧米諸国のコンピュータ犯罪捜査当局は、アノニマス犯罪関連捜査において、これまでにない大規模な連携捜査を行い、各国での家宅捜査の結果、16歳から42歳までの21人以上の容疑者を逮捕したと発表した。さらに米国司法当局の当時のプレスリリースによれば、これに関連してFBIが35件の捜査令状を執行し、アラバマ州、アリゾナ州、カリフォルニア州、コロラド州、DC特別区、フロリダ州、マサチューセッツ州、ネバダ州、ニューメキシコ州、オハイオ州、ニュージャージー司法管轄区に捜査が及んで16人を逮捕したことが記載されている。
その容疑のほとんどは、PayPalがウィキリークスのアカウントを閉鎖したことに対する報復として行った攻撃の実行犯または幇助犯としての容疑である。本件に関する内容は「Naked Security」 に記載があるので確認頂きたい。
一方で、アノニマスは多くのプレスリリースをユーチューブを通じて発信しており、海外のメディアが一部それらをまじめに報道している事実がある。アノニマスが脅迫者やハッカーとしての顔だけではなく、「自由と人権」のために闘う集団である側面を持っているという事実である。アノニマスのオフィシャルサイトとして位置づけられている以下のサイト(http://anonnews.org/) にアクセスすると多くの情報を見ることができる。
一つの事例を言えば、チュニジア、エジプトなどの革命を成功させるために多くの支援を行ったとされ、その内容の一部はカタール・ドーハの衛星チャンネル「アルジャジーラ」で何度も報道された。
しかしながら、アノニマスは今や複雑となり肥大化するとともに、「正義、自由、人権」を掲げながら、NPO、ジャーナリズム、報道メディアなどのいずれの世界にも属さず、アムネスティやピースボートのような組織とも異なり、「悪行」をもってテロ化している。
世界の多くの司法当局が彼らの罪を単なるHoax(悪ふざけ)とは認識せず、国際的ハッカー集団と呼ぶ意図もそこにある。
フェイスブック攻撃への本気度
7月16日にユーチューブを通じて公開されたアノニマスのファイスブックに対する攻撃ミッションは、8月10日以降に報道された多くの米国メディアの記事やニュースで、さらに真実が分かり始めている。その一部の報道によれば、アノニマスメンバ−である「Speakeasy」と名乗る人物が、数カ月前にOperation Facebookを自ら指示したとされ、その目的はフェイスブックへの破壊ではなく平和的警告であったという事実である。
その警告とはフェイスブックのしくみでは仮に会員のプロフィールを本人が削除してもサーバー上からは削除されないことから、まずは会員が現在掲載しているプロフィールを削除し、フェイスブック側にはプライバシーに配慮したソーシャルネットワーキングシステムの代替手段を開発するよう求めるものだった。
しかし、その試みはうまくいかず、最初のOperation Facebookは失敗に終わった。その後、一部のメンバ−によるHoax(悪ふざけ)のつもりで掲載した7月16日のユーチューブの脅迫ビデオがシリア国防省サイトへのハッキングの関連でCNNに注目され、多くのマスメディアがフォローすることになり、不幸なことに一般人のみならず世界中のハッカー達にも認知させる結果となった。
そのマスメディア報道の悪影響が現在、新たなOperation Facebookを進行させつつある。彼らの存在意義を信じ、彼ら特有の理念に基づく正義を果たすため、現在アノニマスのチャットルームには溢れるばかりのハッカー達が世界中から参加し、11月5日の攻撃に準備を始めたという事実である。
最初は平和的な警告のつもりであり、その後は悪ふざけのつもりであったOperation Facebookは、現在、本当の脅威として認識されつつある。
白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
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